サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

納得いかない! 旧車の純正部品が高い、復刻したらもっと高い! メーカー側の「どうしようもない事情」とは

復刻パーツがブームだけど……

 軽々しい言い方かもしれないが、最近は各メーカーによる旧車の復刻パーツがブームだ。海外では戦後車は最近のクルマというほどで、部品供給を始めとした維持する環境が整っている(最近はそうでもなくなっているが)のに対して、日本車は10年ぐらい経つと続々と製造廃止になるというお寒い状況だった。

 旧車は自動車文化のひとつだ! という声がよく聞かれるものの、自動車メーカーとしても企業として利益が出ないものはなかなかやれないし、慈善事業でもない。日本車の場合、従来は国内専用モデルや仕様も多くて、現存車数が少ないのもハンディだ。

 海外メーカーは世界中いたるところで大量に売れている例もあって、そうなれば古いクルマのパーツを作って売っても十分商売になるだろう。

なぜ純正部品の値段は高いのか

 必要なものが全部復刻されていないという声も聞かれるが、基本的には復刻してくれるのは喜ばしいことだ。そんなありがたい状況を踏まえつつ感じるのが「価格が高い」ということ。新車のころの2倍から場合によっては3倍といったところか。如実に高く、純正部品なのに、というイメージが拍車をかけるからか躊躇することもある。

 なぜ高いのか? そもそも今新車で売られているクルマの補修用やメンテ用のパーツは高い。これは大前提だ。最近の材料不足などによる高騰は別として、「純正だとこのパーツは数百円だよ」と思うかもしれない。それでも高いのだ。

 めちゃくちゃ雑な計算だが、ひとつ100円で3万点使われているとして、300万円だ。ネジ類のように小さな部品は数銭レベルである一方、タイヤやホイール、ガラス、ボディパネルの大物はいくらなのか? 具体的にはわからなくても、なんとなくイメージできるだろう。

 別途買うと数千円、数万円するものでも100円単位だったりする。以前、部品調達の担当者にバッテリーの新車ライン向け価格を聞いたところ、なんとなくは教えてくれたが「実際の価格を聞くとショックだから聞かない方がいいですよ」と言われたことがある。

大量生産を前提として作られている自動車

 クルマそのもの、そしてそれを構成するパーツがなぜ安く抑えられるかという、大量生産を前提としているからで、新車生産が終わったあとに細々と供給していると高くなってしまうのは当然だろう。また、車両価格の部品コストは究極まで削るので、その分の利益を部品で取り戻すというのもある。もちろん最近の材料不足、輸送コストの高騰、円安によって価格は上昇傾向にあって、現行車の部品でもどんどんと高くなっている。

 ちなみに部品価格の改訂はメーカーにもよるが1年に3回から4回ぐらい行われていて、最近ではその都度、如実に上がっていくという。

純正部品の復刻パーツの値段が高くなる事情

 そこで旧車向けの復刻パーツだ。これらはどう生産されているかというと、再生産が簡単にできるものが優先されている。日産はワンオフでR32などのボディパネルを作ってヘリテージパーツとして供給しているが、これは例外で、基本的には型が残っているものが多い。部品生産のなかで金型は莫大な費用がかかるため、少量のために金型を起こすと超大量に生産しないと目玉が飛び出る価格になってしまう。

 そもそも補修部品のなかには新車時にたくさん作っておいてストックし、大きくて重たく機密も含まれている金型は、生産終了後に破棄していることもあったりする。また、金型を必要としないで既成素材を加工して作れるものでも、100から1000のロットでまとまらないと生産してくれないし、それでも価格は高くなってしまう。あらゆる部分が大量生産を前提としているので、少量という小まわりは不得意かつ高コストなのだ。

 また、多くのメーカーでは自動車メーカーと部品メーカーの間には部品台帳みたいなものがあって、そこに載っていればオーダーすれば部品メーカーは少数でも作ってくれることになっているので、これに基づいて復刻している例もある。この場合、型があるなしに関係なく、発注があれば作らないといけない。

 実際にリストを見たことがある開発者に聞いたところによると、「意外に古い、こんなものまで載っているんだ」という感じらしい。このパターンでも作ってくれるとはいえ、困っている人が一定数いるとはいえ、手間はかかるため、高くなるのは仕方がない。

 そのほかの出どころとして、長期在庫を引っ張り出してきて売っているのではないかという人もいるが、それは基本的にはない。在庫は資産として税金がかかるし、利益に直結するだけにメーカーの在庫管理は厳密。日本のメーカーは必要な分だけ納品するかんばん方式が基本だ。ただ、某メーカーの新しいブランドの部品番号のシールを剥がしたら、純正部品のシールが出てきたというのも事実なので、実際は流用的なことはあるかもしれない。

まとめ:長く乗りたいなら買うしかない

 生産自体はオーダーがあれば簡単にできたとしても、大量に作って大量に売れるわけではないので高いのは仕方がない。転売ヤーまで出現している絶版パーツの世界を考えれば、ホントにあるだけありがたいし、今や旧車はお金のかかる趣味だ。手に入らなくなってから騒ぐのはどこも同じで、最近一部の復刻パーツがまた生産中止になっている例も出てきているので、「いつまでもあると思うな親と部品」と心得て、オーナーはストックするなどの対策を取ったほうがいい。

 高いのに驚くのはわからないでもないが、今より安くなることはないし、いつまでも供給されるわけでもない。形が当時物と違うとか、素材がオリジナルじゃないなどと言わずに、長く乗りたいならありがたく購入したい。

モバイルバージョンを終了