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スロコン(スロットルコントローラー)って何?付けてみた感想をご紹介

スロットルコントローラーの本体イメージ

最近の電子制御スロットル採用車に対応するアイテム

 チューニングパーツの定番としてはマフラーやエアクリーナーが有名だが、最近は『スロットルコントローラー』なる言葉も耳にする。いったい何を目的としたパーツなのか、装着によるメリットやメカニズムを解説していこう。

そもそもスロットルコントーラーとは?

 以前は物理的なケーブルで制御していたスロットルを、電線(ワイヤー)を介した電気信号で制御するシステムで、スロットル・バイ・ワイヤーと呼ばれることもある。スロットルコントローラーは通称『スロコン』と略され、この電子スロットルの開度をコントロールして特性を変えるパーツだ。

 まずは双方のシステムについて手短に解説したい。従来の機械式はアクセルを踏むとケーブルが引っ張られ、その分だけスロットルバルブが開きエンジンに空気を送り込む。対して電子式はセンサーがアクセルを踏み込んだ量を感知し、それに応じてスロットルバルブを開くようコンピュータが命令、ワイヤーを通してモーターに伝えられスロットルバルブが開く。

 燃費の向上や部品点数の削減といったメリットは数多くあるものの、ドライバーの操作がコンピュータにより制限されてしまい、レスポンスが低下したりスムースな加速が妨げられるなど、乗り手がストレスを感じるシーンも少なくないのが実情だ。現在の新車はほとんどが電子スロットルを採用しているが、スポーツ走行を楽しむユーザーにとっては不満も多く、彼らの声を受けてチューニングパーツとしてのスロットルコントローラーが誕生したのだ。

スロットルコントローラーの仕組み

スロットルを制御する仕組み

 電子スロットルの弱点を解消するスロットルコントローラー、果たしてどんなメカニズムで制御しているのだろうか。パーツはアクセルとコンピュータの間に割り込ませる本体、室内に装着して操作するためのコントローラーとハーネスで構成される。

 通常は、アクセルを踏んだ量に対するスロットル開度はコンピュータが決めており、純正でエコやスポーツといった切り替え機能を持つ車種も存在するが、それ以上に細かくドライバーの好みで味付けすることは不可能。しかし、スロットルコントローラーを使えば電気信号に割り込み、開度を自由に制御することでフィーリングを大きく変化させられるのだ。

 余談だがすべての電子スロットルが上で書いたように、レスポンスが悪く加速が鈍いというワケではない。あくまでも自動車メーカーの味付けであり、市販車は省燃費や安全走行を優先しているだけ。制御の繊細さでいえば従来のワイヤーを使った機械式を大きく凌駕しており、実際にレーシングカーや一部のスポーツカーは速さを求めて電子スロットルを使っている。

 アフターパーツとしてのスロットルコントローラーは、2000年代の前半から市場に出まわり始め、電子スロットルを採用するクルマが増えるに従い一大マーケットへと成長した。ではスロットルコントローラーの主な機能と取り付け方法を、ブリッツの『スロコン』を例にチェックしてみよう。

一般的な構造とは

 メインとなるのは当然ながらスロットル開度の制御で、エコ/スポーツ/オートといった特性が異なるモードを合計で20も設定。コントローラーは小型ながら視認性と操作性に優れた設計で、使う頻度の高い5つのモードだけを表示する機能も搭載する。

 電源や配線にトラブルが発生するとノーマルの回路に戻るセーフティ機能や、オプションとして開度を最大限に引き上げるスクランブルモード、ハイブリッド車には専用セッティングのモデルを用意するなど、基本性能の高さに加えて拡張性も人気の秘訣といえるだろう。

 取り付けも車種ごとの専用ハーネスをアクセルポジションセンサーと車両側のハーネスに、そしてコントローラーを接続し電源を確保するだけと非常に手軽だ。なおブリッツでは、機能を絞ってよりリーズナブルな価格を実現した『スマスロ』や、ブーストやエアフロセンサーの電圧をコントロールすることで、パワー向上という付加価値を得られる『パワスロ』もラインアップ。いずれにせよコンピュータを書き換えるよりリーズナブルに、愛車の不満やドライブ時のストレスを解消できるのはありがたい。

 またシエクルの『オーバーテイクブースター』は、アクセルの踏み方で制御が切り替わる『フルオートモード』を搭載し、ステアリングから手を離さないままの操作を可能とした。以上のように現在はシンプルなスロットル制御にとどまらず、付加機能や拡張性を持つアイテムが主流となっており、選ぶ立場のユーザーとしては嬉しい限りといえる。

スロットルコントローラーで何が変わる?

 ではスロットルコントローラーを使うと具体的に何がどう変わるのか。上でも触れたとおりイチバンの違いはレスポンス。ノーマルではアクセルを開けてからワンテンポ遅れて回転数が上がっていたのが、右足の動きに連動するようにレスポンスよく吹き上がるようになる。

 またノーマルは燃費を重視しスロットルがじわっと開き、立ち上がりの加速はどうしても鈍くならざるを得ない。それがスロットルコントローラーでスポーティに味付けすれば、実際のパワーに変化はなくとも体感する加速はまるで別モノだ。アクセルを踏んでも思うように進んでくれないのは、スポーツ走行に限らず街乗りでも大きなストレスだろう。

 もうひとつスロットルコントローラーの利点を挙げるなら、状況に応じていくつものモードに切り替えられる点。いくらスポーツカーとはいえ、つねに全開で走行しているワケじゃなく、レスポンスよりも経済性を優先させたいケースがあるに違いない。そんな場合はボタンひとつで燃費のいいモードに変更できるし、ノーマルより低燃費なモードを搭載している商品も珍しくない。

 なおスロットルの開度を変更するには、コンピュータ書き換えという手段も。コチラは燃調や点火時期なども変更できるので単純に比較することは難しいが、コストパフォーマンスと切り替えできる利便性なら、スロットルコントローラーに軍配が上がる。最後は装着されたクルマを試乗し、いくつかのモードを試してみた感想を。

スロットルコントローラーを使った感想

 試乗は上でも紹介しているシエクルの『オーバーテイクブースター』を装着した、アルトワークス(HA36S)だ。まずスイッチをオフにした状態で走ってみる。聞いたところHA36Sは電子スロットルのセッティングが悪くなく、ノーマルでもほかのクルマほどレスポンスの悪さを感じないらしい。確かに停止した状態からの加速もアクセルを踏み直した際のレスポンスも、とくに不満はなく「どこまで差が出るだろう?」と思ったほど。

 ところがイチバン強烈な加速の『パワープラスモード』に切り替わると、出足のよさは違うクルマに乗り換えたかと錯覚するほど鋭い。シートの背もたれが押し付けられるようなフィーリングで、知らずに乗ったらブーストアップやタービン交換と勘違いしても不思議じゃない。タコメーターの針もアクセルのオン/オフに合わせ、明らかにレスポンスよく上下するのに驚かされた。追い越しや合流も今まで以上にスムースだし、何よりも運転していて楽しいのが印象に残っている。

 なお、ふたたびノーマルに戻すと最初は何の不満もなかったのに、やたらと鈍くかったるい加速に感じてしまった。ちなみに『オーバーテイクブースター』ならではのフルオートモードは、手でスイッチを操作せずともアクセルの踏み方でモードが切り替わるので、手や視線を移動させる必要がなくドライビングに集中できるのも嬉しい。付属のスイッチを押して切り替えるマニュアル操作モードもあるが、正直フルオートモードだけで何の問題もないはずだ。

 メーカーやモデルによって多少なりとも味付けが違うとはいえ、ノーマルよりスポーツに振ったモードがあるのはどれも一緒。購入を考えている人は、予算だけじゃなく燃費を重視したモードがあるか、そして拡張性の高さや付加機能の多さを検討したうえで、自分のカーライフに合う製品を選んでほしい。スロットルコントローラーを使っている人から、よく「もうノーマルには戻れない」と聞いていたが、自分で試乗したらまるで同じ感想を抱いてしまった。

 なお、上でも述べたとおりスロットルコントローラーは、絶対的なパワーを上げるためのアイテムではない。ただしエンジンの回転数が同じであれば、アクセル開度の高い方がトルクは出る。スポーツに振ったモードで出だしが力強く感じるのは、アクセル開度の違いによるトルクの差というワケだ。

まとめ

 スロットルコントローラーで乗りやすさと楽しさは向上するし、サーキット走行のタイムにも影響すること確実だろう。電子スロットルの乗り味に不満を感じているオーナーであれば、一度は試してみてほしいアイテムだ。

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