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ヨーロッパもアメリカも唖然! 世界に名を轟かせた「ニッポンのスゴ車」たち

高性能国産車

90年代を境に劇的に進化した日本が誇る国産名車たち

 ’80〜’90年代のバブル期というと、いまでは狂乱の時代や郷愁の時代など、良い意味でも悪い意味でも特別な時代だった。それを国産車に当てはめてみるとその時代に誕生したクルマは多く、その特殊性がわかる。「ジャパン・アズ・ナンバー1」と言われた時代。それまで安くて壊れないが代名詞だった日本車が、欧州や北米の一流ブランドを慌てさせた。そんなモデルを振り返ってみたい。

2ドアオープンカーを世界中に
波及させたマツダ・ロードスター

 まず挙げられるのは現在のマツダ/アンフィニ・ロードスター(1989年9月発売)。当時はマツダを一切イメージさせない新ブランド「ユーノス」の立ち上げから登場したモデルで、日本国内ではユーノスとはどこのメーカーなのかを知らずに購入する人が続出。そして一番のポイントが、世界中のメーカーが「もはや2ドア・オープンの時代は終わった……」と思っていたなかで登場し、大ヒット。日本国内はもちろん世界中に多くのファンを作り出した。

 ほかのメーカーは、マーケット上の理由や衝突安全性など法規の面からオープンカーの開発を諦めていたのだが、マツダは社内の反対を押し切って開発・販売。そして4代目のND型ロードスターの人気はご存じの通りだ。

 ロードスターとは本来車名ではなくクルマの形状を表すものだが、少なくとも日本国内でロードスターと言えばマツダ・ロードスターを指すことが多い。これはトヨタ・レビン&トレノ(AE86型)が「ハチロク」という呼び名で定着し、現在は車名として復活したのと似た現象と言えるだろう。

 そしてその衝撃を鮮やかなものにさせるのが、マツダ・ロードスターを追い越せと発売されたモデルたちだ。その一部を紹介するとBMW Z3やメルセデス・ベンツSLK、アウディTTロードスター、ポルシェ・ボクスターやフィアット・バルケッタなどなど。日本車でもトヨタMR-SやホンダCR-Xデルソルなどがこれに当たるだろう。多くのメーカーが自社に2ドアオープンを欲しがった。ロードスターが与えた影響は計り知れない。

レクサスとともに北米市場へ打って出た
日本が誇る高級車トヨタ・セルシオ

 トヨタ・セルシオ(1989年10月発売)は高級車の概念を覆した一台だ。それまで海外では丈夫で便利な日用品扱いであった日本車だが、セルシオは(北米ではレクサスLS)日本のメーカーでも高級車を作れるのだと証明して見せた。

 充実した装備と快適な乗り心地、そして圧倒的な静粛性を持ちながらも、同クラスのモデルと比較すればバーゲンプライス。便利で丈夫な高品質に加えてラグジュアリーさも追加している。これによって海外のプレミアムメーカーを大慌てさせた。こうしたラグジュアリーサルーンの主戦場は北米であり、レクサスLSは若者を中心に人気を集めたのだからたまらない。静寂と呼ばれるほどの静粛性は、プレミアムブランドよりも上のハイエンドと呼ばれる超一流ブランドが持つ世界のはずだったのだが、レクサスLSはそれらを身にまとっていた。

 デザインは日本車らしいプレーンなスタイリングで、老舗一流ブランドならではの「個性は必須」という概念を覆したことも大きかった。当時のレクサスに引っ張られたのかどうかはわからないが、デザインで迷走するプレミアム・ブランドもあったし、静粛性や価格を対等にするため走行性能を犠牲にするメーカーも現れるなど、プレミアムカーの確固たる信念や主義主張は迷走状態に入ってしまう。20世紀末ごろの欧州&北米のプレミアムブランドの商品開発担当者は、さまざまな要因が絡み合って袋小路で右往左往したに違いない。

 そんなレクサスだが、現在はスピンドルグリル=レクサスを象徴するフロントマスクを確立しようとしているのはブランド築構の難しさ、ライバルたちが築き上げた歴史という強さと戦う難しさを感じさせたが、高級車のインフレを起こしたモデルがレクサスLS=日本名セルシオなのは間違いない。

レースシーンやグランツーリスモで
人気を博したスカイラインGT-R

 高級さのインフレ=価値がレクサスならば、高性能さのインフレ=価値はR32型日産スカイラインGT-R(1989年8月発売)だろう。市販車のレースといえばツーリングカーレースとそこから派生したグループCカーだったが、そこは欧米車の独壇場であった。

 メルセデス・ベンツやBMW、ポルシェやボルボ、オペルにフォードなどが活躍しており、世界的な耐久レースであるル・マン24やニュルブルクリンク、北米のIMSA&デイトナなどの耐久レースで、日本車の存在感は高くはなかった。

 ところがスカイラインGT-RやフェアレディZ、R92CP(グループCカー)は、数多くのレースで勝利を挙げてタイトルを獲得。トヨタが勝利を挙げるまではル・マンでは唯一マツダが総合優勝を果たしたが、欧州や北米のメジャーなイベントでは日産車が活躍し、存在感を強いものとした。

 これらは市販車とは少し遠いかもしれないが、R32型スカイラインGT-Rはレギュレーションをうまくついた市販車の開発で国内のグループAレースを席巻。スカイラインGT-Rの復活を強く印象付けたうえ、現在へと続くGT-Rブランドの確立につながっている。

 さらに世界中にファンがいるゲームソフト「グランツーリスモ」ではR33型スカイラインGT-Rが大活躍。海外のスカイラインGT-Rを知らないゲームファン(※スカイラインGT-Rは日本国内専用モデル)に、その存在を知らしめた。グランツーリスモはゲームだがリアルドライビング・シミュレーターであり、ゲームにのめりこんだファンはこのソフトがどれほど忠実に作られたのかを知っている。

 そんなファンがスカイラインGT-Rの性能に触れれば興味が湧くのは自然なこと。現在、多くのスカイラインGT-Rが海外で高額で販売されているのはご存じの通り。それはグランツーリスモのおかげでもあるのだが、やはりスカイラインGT-Rの性能の高さがあればこそ。かつてスポーツカーのインフレを起こしたフェアレディZともども、スカイラインGT-Rは世界に誇れるマシンなのだ。

WRCではトヨタ/三菱/スバルが
輝かしい戦績を残す

 そしてツーリングカーのもうひとつの形であるラリー界では、トヨタ・セリカGT-FOURや三菱ランサーエボリューション、スバル・インプレッサWRXも忘れてはいけない。ラリーの世界は規則変更が度々行われ、速すぎるマシンの登場や大きな事故が起こるたびにレギュレーションが変わり、コンストラクター泣かせの印象が強い。

 そんななか、トヨタ・セリカや三菱ランサーエボリューション、スバル・インプレッサWRXはしっかりとタイトルを獲得する。もちろん、この時代にも日本車いじめのような規則変更が行われているのだが、セリカやラランエボ、インプレッサは素晴らしい成績を残しており、好成績を残すために改良される市販車の人気も絶大。日本でも人気が高く、WRC(ラリージャパン)が開催されるほど。

 もちろん欧州には日本以上に根強いファンがいて、WRCに参戦していないモデルのランサーエボリューションXは英国などで高い評価を受け、最終仕様は瞬く間に完売。欧州でのラリー人気の高さと、そこで活躍したクルマの評価の高さを感じさせた。

欧州車をも凌駕する自慢のハンドリングと
パッケージングを両立した初代プリメーラ

 いまでは影が薄くなってしまったスポーティな4ドアセダンの代表格は、P10型日産プリメーラ(1990年2月発売)だろう。この初代プリーラは、欧州車に負けないパッケージングとサスペンションを備えたモデルで、エンジンルームと室内、トランクルームのスペースを高いバランスで実現。しっかりした操縦安定性と操作性に優れたスイッチ類、引っ越しに使えそうなほどの使いやすいトランクと、どこかひとつが優れていたのではなくて、すべてが高いバランスを誇っていた。

 例えばセンターコンソールはオートエアコンの普及によって操作頻度が減ったため低い位置に、逆にオーディオ類の位置を高くし使いやすさを向上。トランクも室内への張り出しがないダンパー式としたことで、トランクルームの上部目いっぱいまで荷物が詰めるようになっており、デッドスペースが非常に少ない。当時は少なかったパワーウインドウスイッチにも照明を付けるなど、走りも操作系も欧州車に引けを取らなかった。

 また、初代プリメーラには5ドアで英国製輸入車の「eGT」もラインアップされ、英国工場で製造されたモデルを日本に輸入したわけだが、その走りは国産プリメーラとは趣が異なっていた。遠い記憶で恐縮だが、国産よりもしっかりかつ、しっとりとしていた印象。

 もしかしたらボディ形状、セッティングやタイヤ銘柄が異なるだけなのかもしれないが、モデル途中に追加されたeGTがプリメーラのベストな選択だと思った記憶は鮮明だ。いずれにせよ、プリメーラは実用的なセダンでも欧州車と対等に戦えるモデルが作れることを証明していた。

欧州Bセグモデルにも匹敵する高性能ぶりで
低価格を実現したスズキ・スイフトスポーツ

 また今後の注目株では現行型のスイフトスポーツ(2017年9月)ではないだろうか? スイフトはかつてWRCの弟分のカテゴリー(JWRC※ジュニア世界ラリー選手権)でタイトルを獲得するなどの好成績を残したが、現在は参戦していないことから世界的な知名度はまだまだ低いと言わざるを得ないと思う。

 しかし販売地域は広くなっており、今後電動に注目が集まるなかで貴重なホットハッチとして存在感が増していくだろう。むしろ低価格でこれほど楽しめるモデルは希少であり、数年後に注目を集めるモデルとなるに違いない。車両価格とパフォーマンスを考えたら、これこそ日本のお家芸と言える一台であり、マイルド・ハイブリッドとの噂も囁かれる次期型も低価格な高性能モデルになることを期待したい。スズキでいえば世界的に納期が長いことで知られるジムニーがあるが、同じスズキのスイフトスポーツの魅力に世界が気が付くのも時間の問題だろう。

 1980年代に自動車先進国に追いついた部分がある日本車。かつてほどの勢いはないのかもしれないが、日本の自動車はまだまだ負けてはいない。底力や伸びしろを、今後も力強く見せつけてほしいと願っている。

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