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イタリア人のクルマバカっぷりが圧巻! 極寒のアルプスをクラシックカーで駆け抜ける衝撃ラリーがあった

凍てつくアルプス山系500kmを130台のクラシックカーが走る

 イタリア最北部のトレンティーノ州で真冬に行われるクラシックカー・ラリー「ウィンターマラソン(Winter Marathon)」。2022年で34回目を迎えた伝統あるイベントで、今年は1月20日(木)~22日(日)にかけて開催された。氷と雪に覆われた極寒のアルプス山系を旧車で走り抜けるという、イタリア人のクルマバカ(ほめ言葉)が極まったようなラリーの様子をお届けする。

標高1500m超の氷と雪のコース、しかもラリーの半分は夜間

 冬のクラシックカーの祭典「ウィンターマラソン」の拠点となるのは、アルプス山系に連なるスキーリゾート地「マドンナ・ディ・カンピーリオ」。イタリア最北部、トレンティーノ州の州都トレントから、さらに北西の山岳地帯へ分け入ったところにある街で、標高は1522mある。

 ウィンターマラソンの参加資格は、1976年までに製造されたクルマ。今年は賞典外として特別に参加を認められた1980年代ポルシェ4台を含む、合計130台がエントリーした。イタリアのイベントで参加者のほとんどもイタリア人、それゆえ「フィアット」や「ランチア」、「アルフロメオ」といったご当地のクルマも当然多いのだが、じつは最大勢力は「ポルシェ」の28台。「MG」や「トライアンフ」などイギリス勢やスウェーデン「ボルボ」などなど、国際色豊かな欧州旧車の博物館となる。

 アルプス山系のルートを500km以上、合計で16時間以上にわたり走行するラリーで、その間に65カ所のチェックポイントと、6回のアベレージトライアル(区間内を指定の平均速度で走る)が設定される。絶対的な速度ではなく、あらかじめ定められたルートを定められたペースにいかに忠実に走れるかを競う、クラシックカー・ラリーでは定番のスタイルだ。

 日程は、初日の昼間に本部に集合したら、夕方にスタートして雪の積もった山道を日が変わるころまでひたすら走る! 2日目は昼前にスタートし、いくつもの峠を深夜まで走り回ってマドンナ・ディ・カンピーリオに戻ってきて、ラリーの本編は終了となる。

 そして3日目、それまでのラリーの上位32台が凍った湖のステージに集合して、氷上タイムアタックを開催。その結果を加算して最終的な順位を決めるというわけだ。冬のリゾート地ゆえ、ここで一般のギャラリーも貴重なヒストリックカーたちの激戦を見ることができる。

一番古いクルマは1927年式のブガッティ!

 ウィンターマラソンではエントリー車の年式順にゼッケンナンバーが振り分けられる。今年ゼッケンナンバー「1」だったのは、今から95年前に誕生した、1927年式の「ブガッティ・タイプ37A」! 博物館もののコレクターカーながら、劣悪な路面状況のラリーをものとせず完走し、堂々の12位に。

 ブガッティのオーナーであるマッテオ・ベロッティ氏はこの大会の常連。2016年と2017年は1973年式「ポルシェ911 T2.4タルガ」で参加し、2018年は1937年式「ランチア・アプリリア」、2019年は1953年式「ポルシェ356クーペ」、2021年は1939年式「フィアット508C」と続いてきて、とうとう今年は1927年式ブガッティに……。クラシックカー沼の深みを突き進んでいる、クルマ趣味人の鑑である。

WRC王者ミキ・ビアシオンがストラトスを駆ってギャラリー大興奮!

 イタリアのギャラリーがもっとも注目したトピックは、なんといっても、1988年と1989年にランチア・デルタをドライブしてWRC(世界ラリー選手権)を2連覇した伝説のドライバー、ミキ・ビアシオンが1974年式ランチア・ストラトスでエントリーしたことだ。彼がストラトスを雪上・氷上で走らせる姿を見られるチャンスに、マドンナ・ディ・カンピーリオは興奮に包まれたそうだ。

 地元メディアのインタビューにミキ・ビアシオンはこう語っている。「ウィンターマラソンでは、モータースポーツの歴史に名を残す名車の数々を見て楽しめます。雄大な景観のなかで雪の白さと静けさに包まれてエンジンの唸り声だけが聞こえくる、ユニークな体験です。このランチア・ストラトスは、モンテカルロの王者サンドロ・ムナーリ(1975年~1977年にストラトスでラリー・モンテカルロ3連覇)が戦ったマシンで、彼の厳しい戦いに敬意を表します。雪道でのドライブは、アクセルを踏みこんだ瞬間にリヤタイヤが滑りはじめるので、気をつけて優しく操作する必要がありますね」

ラリーの1~4位は、まさかの戦前フィアット508Cが独占!

 ところで2022年のウィンターマラソンは、1927年から1976年までの100台以上のクルマが3日間にわたり競技を繰り広げた結果、1位から4位までを1937年式と1938年式の「フィアット508C」が独占! この4台は同じチームというわけでもないのだが、ここ数年、ウィンターマラソンの上位には必ず彼らフィアット508Cが入っているのだ。

 続く5位と6位は、これまたともに1937年式の「ランチア・アプリリア」2台。

 絶対的な速さではなく走行ペースの正確さを競うとはいえ、並みいる戦後のスポーツカーを押さえて戦前のフィアットとランチアが圧倒的な強さを見せることができるのは、地元イタリア製だからなのか、パワーがありすぎないから走りやすいということなのか……。

 日本でクラシックカー・ラリーを楽しむ人も、試しにこれらのクルマに乗ってみると意外な強さを見せるかも?

 過去には日本人が参加したこともあるウィンターマラソン。またイタリアに気軽に行ける世の中になったら、クルマ趣味人は参加を検討してみてはいかがだろう。その年のスケジュール次第では、同時期の「モンテカルロ・ヒストリーク」とハシゴも不可能ではないのだ。

 大会事務局にご提供いただいた大量の写真を、ギャラリーでじっくりご覧いただきたい。

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