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空気圧ひとつでクルマの特性もタイムも変わる! お手軽だが超奥深い「タイヤの空気」の話

タイヤメーカーは公言できないが美味しい空気圧のゾーンがある

 空気圧調整はセッティングの始まりであり、最後のセッティングでもある。クルマにとって一番簡単だが、一番大事な項目なのである。しかし、サーキットでタイムを出すための適切な空気圧は、メーカーとしては公言しにくいもの。そこでその方法を伝授しよう。

指定空気圧は「冷間時」の数値となっている

 タイヤの空気圧はハンドリングを激変させるセッティングであり、ミスすればタイヤのバーストからのスピンなど、大事故にも繋がりかねない重要な部分である。まずは、クルマのドアなどに書かれている自動車メーカーによる空気圧の指定値に合わせるところから始めたい。

 メーカー指定値は「冷間時」の数値となっている。つまり、走行前のタイヤが冷えたときに指定値にしておきましょう、ということだ。これが走るとタイヤと内部の空気が温まり、空気圧は高くなる。高速道路を30分ほど走れば、トレッド面はほんのり温かくなり、空気圧は10~15%ほど上がっているだろう。こちらは「温間時」の空気圧だ。

基本編:メーカー指定空気圧を小まめにキープ

 サーキットでも同様に、まずタイヤが冷えている状態で自動車メーカーの指定値に合わせてコースインする。数周走ってタイヤが温まってくるとグリップ力が高まり、ステアリングは重くなり、よく曲がるようになってくる。

 そうしたら一旦ピットインして、また空気圧を測る。例えば指定値が2.2kg/cm2で、コースイン時にこの空気圧からスタートしたら、2.5や2.6kg/cm2どころか、3.0kg/cm2を超えてしまうこともある。上がっていた分をまた2.2kg/cm2まで下げる。またしばらく走ってピットに入ったらまた指定値まで下げる。これを繰り返して、純正指定値に近い空気圧で走る。これが基本だ。

 ちなみにサーキットから帰るときには、空気圧は1.5kg/cm2くらいまで下がっていても不思議ではない。必ず冷間時に自動車メーカー指定値に戻してからサーキットを出るようにしてもらいたい。

応用編:低めでグリップ力を最大限に

 では応用編。基本的に今どきのハイグリップラジアルタイヤは美味しいところが2カ所ある。

 王道は低めの空気圧。ある程度つぶれることで接地面積を広げ、グリップ力を最大に得ようという狙いだ。タイヤにもよるが、基本的にはグリップの高いものほど低めの傾向にある。温間時に1.8~1.9kg/cm2くらいが一番グリップすることが多い。グリップは高めでもアジアンタイヤ系は剛性がやや低めのものが多く、2.0~2.2kg/cm2くらいで落ち着くことが多い。

 まずは、冷間1.8kg/cm2でコースイン。温間2.0kg/cm2くらいを狙って、ピットインするたびに2.0kg/cm2以上になっていたらまた2.0kg/cm2に下げる作業を繰り返す。これを基本ルーチンとしつつ、そこから0.2kg/cm2単位で上げたり下げたりしてみて、グリップ力とステアリングレスポンスを確認し、もっともフィーリングのよいところを探してみるといいだろう。

変化球:高めにも一発の速さが出るゾーンが

 王道に対して、変化球とも言える美味しい空気圧は、高めに良いところがある。グリップ力は落ちるが、空気圧が高いことでレスポンスが良くなり、高速コーナーの多いコースとか回り込むようなコーナーの少ないコースで、フロントタイヤの空気圧を高めにすることで一発タイムを狙えることがある。これはズバリ2.8~2.9kg/cm2くらい。これ以上の高い空気圧では美味しいポイントがあることはまずない。

 またFF車でイマイチ曲がりにくいときも、リヤをこの変化球的空気圧にするのがオススメ。リヤタイヤの剛性が高まり、加速時にリヤが沈み込みにくくなることで、アクセルを踏んでからもフロントタイヤの荷重が抜けにくく、アクセルONでよく曲がるようにできる。決してリヤタイヤの限界を落として、リヤを滑らせて曲げようという意図ではない。フロントタイヤのグリップを高めるためのリヤ張りなのだ。

 なお、某タイヤメーカーの担当者に聞いてみたところ、「もちろん美味しい空気圧や使い方は把握しているが、多種多様なクルマがいる。タイヤサイズもチューニングによってみんな変えてしまっているので、それに対して空気圧はいくつくらいが最適というコメントは出せない。それによって何かあっても責任が取れない」とのことである。

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