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クルマ好きがいう「ショックが抜けた」って壊れてるってこと? 意外としらない「ダンパー」の役目

ショックアブソーバ

クルマの乗り味に影響するショックアブソーバって何?

「このクルマ、ショック抜けてない?」。愛車に友人を乗せたときにこんな会話をしたことはないだろうか。毎日、同じクルマに乗り続けていると、ちょっとしたクルマの動きの変化に対して意外と鈍感になりがち。なので普段乗らない知人や友人を愛車に乗せると「こんなもんだろ……」と自分のなかで誤魔化してきた乗り味の悪化を、自分以外に指摘されたことで認めざるを得なくなるというワケだ。

 ちなみにショックとはショックアブソーバのことで、クルマの乗り心地やハンドリングに影響を及ぼす重要な部品で、人によってはダンパーと呼ぶこともある。

スプリングだけでは抑えきれない入力を収束させるショックアブソーバ

 クルマは走行中に絶えず振動している。普通に市街地を走っているだけでも加減速やカーブ、路面の細かな凹凸によって細かな衝撃を受けている。こうした振動を最初にタイヤが受け止めて、サスペンションのスプリングやサブフレーム、サスペンションアームなどに取り付けられたゴムブッシュやボディへと伝わる過程で減衰されて、快適な走行性能と乗り心地が確保されるのである。

 走行中のクルマへの路面からの入力、大げさに言えば衝撃力が加えられたスプリングは特性上なかなか動きが収まらないので、ショックアブソーバが減衰してスプリングの動きを抑えてくれる。モータースポーツやスポーツ走行が好きな人なら「ビルシュタイン」や「オーリンズ」「ショーワ」「ザックス」などの名前を聞いたことがあるだろう。さまざまなメーカーが多種多様な用途に合わせて販売するパーツなのだ。

スプリングの伸縮運動に抵抗するショックアブソーバの働き

 ショックアブソーバの構造は、簡単に言えば筒の中に入ったロッド(棒)がオイルの中で伸び縮みすることが抵抗となって、スプリングの動きを安定させるもの。電子制御やさまざまな技術の進化で機能や形状は複雑になっているが、簡単にいえばオイルの抵抗力を摩擦力などを熱などに変換して動きを抑えてくれる。

 このオイルの抵抗を生み出す構造は色々とあり、スポーツ走行に特化したものや市街地走行向け、純正同等ながらも純正品を上まわる快適性をもたらすものなどの製品が販売されている。なかには走りと乗り心地を両立させる減衰力調整機構を持つタイプもあり、市街地の日常向けのセッティングやスポーツ走行用に切り替えできる高機能品もあるから、奥の深い、非常に難しい部品ともいえる。

 一見、目立たない存在だがクルマを走らせる上で非常に重要なパーツなので、「自分はスピードを出さないから何でもいいや」と考えがちだが、タイヤと同様に走行性能に関わる大事な部品なのである。

街乗り重視からサーキット向けまでさまざまなタイプがある

 そんなショックアブソーバだが、交換する理由はさまざまだ。市販されているクルマには自動車メーカーがコストを抑えながら、幅広い走らせ方ににマッチするように仕上げられている。そのため、スポーツカーといっても、スポーツ走行では不満が出る場合もある。また、特定のサーキットをホームコースにしているような人は、そのコースに見合ったサスペンションセッティングしている人もいるだろう。

 サーキットまでは走らないけれど、たまの休日にワインディングを気持ちよく流すために、ハンドリングをキビキビとシャープにさせたいとか、スプリングとセットの交換で車高を下げたいなど、数多くの社外品が発売されている理由は多岐に渡る。ちなみにスポーツ走行が好きな人がショックアブソーバやスプリングをセットで交換するのは、より効果が高いからだ。

 スポーツ走行では車高調整も重要なポイントなので、スプリングの硬さとショックアブソーバの減衰力、さらに車高調整までできる車高調整機能付きのサスペンションキットを選ぶ方が手っ取り早いと言える。

減衰力を少し引き締めるだけでクルマ酔い対策になることも!

 もちろん、スポーツ走行なんてしたことがないという場合でも、ショックアブソーバを交換する場合もある。例えばミニバンの後席の乗員が乗り物酔いしやすいといった場合、ショックアブソーバを交換することで乗り物酔いをしなくなることもあるほど。

 とくにミニバンは大きな箱型ボディなので、ボディ剛性面で不利なことから、路面からのサスペンションの入力がキレイに収まらず、微細な振動の収まり性に欠けるため、走らせるシーンによっては快適性を損なう場合もある。もちろん着座位置や視界、運転者の操作による面も大きいが、ショックアブソーバの減衰力を少しだけ引き締めてあげるだけでも快適性を向上させることができる。

 そこで最初の「ショックが抜けてない?」だが、簡単に言うとスプリングの動きが収まりにくく、いつまでも揺れが続く状態を指す場合が多い。クルマ本来のセッティングもあるのだが、人間の感覚はなかなか繊細で、違いが感じられる場合もある。

 ショックアブソーバーは普通に走っているだけでは10万kmぐらいは問題なく使えてしまう。だが、難しいのは少しずつ性能が低下してしまっていても、その変化に気が付きにくいこと。車検で「漏れが見られます」と言ってもらえれば寿命にも気が付くのだが、普段なに気なく乗っているだけだとわかりにくい。人間の感覚は繊細だと述べたが、走行中に「アレッ? このカーブでの車体の収まりがいつもと違う……」などと気付く人は、よほど優れたセンサーを持った人と言えるだろう。

 だからショックアブソーバの交換を考えるには、例えば中古車を購入したけれどなんとも納得できない走りのとき。後席の乗員がとにかく乗り物酔いで困っている場合、そしてまだまだ愛車に乗り続けようと思っているときだ。

走行性能や乗り心地に大きく影響するので吟味して選びたい!!

 もちろんショックアブソーバは長く使えば劣化する。そしてユーザーニーズに合わせた特徴を持つ製品が発売されている。スポーツ志向の人は目的があっての交換だから用途に合う選び方がベスト。そこまで望んでいない人は純正品をそのまま新品に交換という手もあるが、社外品でもメーカー同等かそれ以上の性能を持つ製品も多くある。交換のために吟味するなら乗り味や乗り心地に大きく影響するパーツなので「これでいいや」と妥協するよりも、運転する本人や家族のことも考えてショックアブソーバ選びをしてほしい。

 もちろん価格はピンキリで、メーカー純正品で高性能かつ高額なものもあれば、社外品でも純正品より安いものある。純正の走りで良いと思っている人でも、社外品を選んでみると価格が安いうえに純正品同等もしくは、逆に乗り心地が良くなる場合もある。数多くのメーカーがいろいろな仕様のショックアブソーバを発売しているから探してみると、かなり長時間悩むことになると思う。交換には工賃がかかることからも、失敗しないショックアブソーバ選びが重要だ。

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