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ホントは300馬力も余裕だった! 自主規制でムリヤリ280馬力に押さえ込んだ国産ハイパワー車5台

280馬力自主規制の餌食となった世界に誇るべきハイパワー国産車

 今となっては本当にくだらない話だが、1989年から2004年にかけて日本自動車工業会に加盟しているメーカーが作る国内向けの国産車には、「280馬力自主規制」というのが存在した。きっかけは、1989年に日産がフェアレディZ(Z32型)、スカイラインGT-R(R32型)、インフィニティQ45(G50型)の3台を300馬力カーとして発売しようとしたところ、これに当時の運輸省が「300馬力の大台に乗せるのは……」と物言いをつけたのが始まりであった。

 結果としてこの時代の国産ハイパフォーマンスカーは、カタログ上どれも280馬力が上限だったわけだが、中身とポテンシャルには違いがあった。そこでこの時代を代表する車種について振り返ってみることにしよう。

国交省からの圧力で300馬力が叶わず
「4代目フェアレディZ(Z32型)」

 Z32型フェアレディZ(以下、Z)は280馬力規制のきっかけを作ったクルマだ。デビューは1989年7月で、同年8月に発売されたR32型スカイラインGT-R(以下、GT-R)、同11月に国内販売が開始されたインフィニティQ45(以下、Q45)に先駆け、最初に280馬力で型式認定されたモデルだ。

 この日産300馬力トリオで特筆できるのは、3台ともエンジンがまったく異なっていたところにある。Zに搭載されたのは3L V6ツインターボのVG30DETT、GT-Rには2.6L直6ツインターボのRB26DETT、Q45には4.5L V8自然吸気のVH45DEだった。

 大型高級セダンのQ45は別として、Zと比較されたのはやはり280馬力ターボのGT-R。テストコースでリミッターだけを解除したノーマル同士で比較すると、GT-Rの最高速は250km/h、それに対してZ32は270km/h近くまで伸び、速さ=最高速ならZに軍配が上がった。ちなみに最高速の違いはZのボディが空力的に有利だったことが大きい。

レースで勝ちまくった平成の最高傑作!
「スカイラインGT-R(R32型)」

 平成初期の国産スポーツの頂点に立っていたのは、16年ぶりに復活したGT-R(R32型)だ。その心臓部は日産伝統の直列6気筒エンジン、RB26DETTを搭載。グループAレースで勝つことを目標に開発されたこのエンジンは、レース仕様で600馬力を想定。丈夫な鋳鉄ブロックが与えられ、チューニング次第で1000馬力以上に達することも可能だった。ノーマルが280馬力だったとすると、その伸び代の大きさは古今東西比類ないエンジンといえる。

 ちなみに開発当初、6連スロットルを採用しようとしたら、スロットルバルブの精度の問題でアイドリングが3000回転になると言われたというエピソードもあった!(※量産時には950回転まで落とすことができた)

NAで280ps達成の国産初の量産スーパーカー
「ホンダNSX(NA1型)」

 平成初期の280馬力軍団のなかで、異彩を放っているのはNSXのC30Aエンジン。このエンジンは、ほかの280馬力エンジンと違い、3L自然吸気で280馬力を達成したところが大きく異なる。ホンダの場合、1989年デビューのインテグラで初搭載されたB16Aが、すでにNAで1リッターあたり100馬力を実現していたので、3リッターのC30Aで280馬力というのは難しい課題ではなかったのかもしれない。

 しかし、パワーは回転数で稼げてもトルクは排気量に比例する。C30Aのトルクは30kg-f・mなので、3L自然吸気としては十分優秀だが、実質的な排気量を増大させるターボ軍団のトルクには及ばなかった。ちなみに前述のZに搭載されたVG30DETTのトルクは自然吸気エンジンなら、4L級の39.6kg-f・mを誇った。

アイドリングで5速発進できた極太トルクの猛者
「三菱GTO(Z15A・Z16A型)」

 そしてトルクといえば三菱GTO。1990年に登場したGTOには3L V6ツインターボの6G72が搭載された。このエンジンのトルクは43.5kg-f・mと圧倒的で、GT-RのRB26DETTの36.0 kg-f・mと比べてもかなりのアドバンテージだった。

 なんとアイドリングのまま5速でスルスルと発進することもできたぐらいで、トルク感ではナンバーワン。エンジン単体としては優秀だったはず。新車試乗時(広報車)に「間違いなく280馬力以上でている」と実感した一台だ。

チューニングエンジンとしても大活躍
「トヨタ・スープラ(JZA80型)」

 1993年の登場で280馬力軍団のなかでは後発モデルだったJZA80スープラに搭載されたのは、3L直6ツインターボの2JZ-GTEエンジン。特徴はシーケンシャルツインターボ(トヨタ流にいえば2ウェイツインターボ)を採用したこと。トヨタらしくボア×ストロークが86.0×86.0mmのスクエアタイプで、トルクは前期で44.0kg-f・m、VVT-i化されたものは46.0kg-f・mを発生させた。

 GT-RのRB26DETTほど高回転まで回らなかったが、鋳鉄ブロックでタフネスさはRB以上とも言われ、最高速仕様やゼロヨン仕様のチューニングで高く評価された。

V12に匹敵する滑らかさが官能的だった
「ユーノス・コスモ(JC型)」

 最後は1990年誕生のユーノスコスモ。コスモのエンジンは、量産車初の3ローターのロータリーエンジンである20B-REWを採用する。「V型12気筒エンジン並の滑らかさを持つ」というのが、この3ローターの20Bのセールスポイントだったが、燃費の悪さも天下一品。リッター2~3kmしか走らないたい大食漢だった!

 その代わりパワー&トルクも飛び抜けていて、280馬力&41kg-f・mというカタログ値を上まわるダッシュ力をみせた。ターボはシーケンシャルツインターボで、当時のMT用クラッチではパワーに負けてしまうとして、全グレード4速ATになったという逸話があるであった。

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