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「クルマ談義」に花が咲けばいい! 実体験から語る至極簡単な名車の条件とは

初代ピアッツァとR32スカイライン

語り継がれる名車にはメーカーが異なっても共通項がある

 これまでに所有した愛車を振り返ると、メーカーはまったく違っても共通する名車と呼べる所以があることふと思い出した。個人的な体験談で考えると、初代「いすゞピアッツァ」と日産「R32スカイライン」は自分のなかでは重なるものがあるような気がする。そこで思いついたのがスタイリングとファンの熱量。デザインの専門家ではないが、元オーナー目線で考えてみたい。

初めての愛車はスタイリングに惚れて購入した初代ピアッツァ

 まず初代ピアッツァだが、元になった有名なコンセプトカーやデザイナーについては有名すぎるので割愛させていただくが、とにもかくにもそのスタイリングが美しい。後輪駆動で5速MTのクルマが欲しくて、学生時代に必死でアルバイトして、1983年以降のドアミラー仕様を中古車雑誌で見つけて購入した。

 2オーナーで走行距離も進んでいた個体だったため、当時の自動車雑誌で評価されていたようなボディ剛性などなど、走りの面ではベストな個体ではなかった。だが、その美しいスタイリングは多くの人が賛同してくれるだろう。別に荷物がたくさん積めるワケではないし、グレードは「XE」であったので、走りの面もピアッツァで話題となった「ハンドリングバイ・ロータス」でもない、経年した中古車だ。

 だがそのスタイリングは素晴らしく、初めての愛車ということで「マイカーのある生活」を実現できた喜びもあって、とても充実した日々を送ることができた。

クルマ談義に花を咲かせることができるのも名車たる所以か!?

 いまと比べると、昔は近所にコイン洗車場がたくさんあり、洗車しているとたまに話しかけられることもままあった。内容は「昔、欲しかったんだよね」とか「以前、乗ってたんだ」、「キレイにしているねぇ〜」といった言葉であり、クルマ談義といったら友人との井戸端会議がほとんどだったから、『クルマ好き同士ならこうして話しかけてもいいんだ』なんて覚えたものだ。

 現在でもまれに、サービスエリアなどで過去に乗っていたクルマに遭遇すると、「昔、僕も乗っていました」とか「〇〇年代のクルマなのにすごくキレイですね」などと、同じクルマ好きとして素敵な時間を共有できることがある。お互いに名前も年齢もクルマ遍歴も知らない者同士だが、このちょっとしたコミュニケーションが嬉しかったりする。

 昨今でも自分が乗るクルマの車体色が珍しかったりすると「その色は純正ですか?」と聞かれることもあるし、逆に自分がレアな車種を見つけたときに、例えば「オッ! ピアッツァじゃん!!」と声に出してしまってオーナーの方に聞こえてしまい、数分程度言葉を交わすことがある。

 これはピアッツァによる原体験がそうさせるのだろうし、美しいクルマが繋いだ縁が話しかける敷居を下げさせてくれたと言える。つまりピアッツァはそういうクルマであった。

その昔欲しかった4ドアのR32スカイラインを購入

 そして捉え方は人それぞれだが、R32スカイラインもそれに近い。当時、自損事故で泣く泣く愛車とお別れすることに。感傷に浸る時間がないほどすぐにクルマが必要であったことから、足になるクルマとして使える後輪駆動のMT車を探していた。幸い自動車ディーラーに勤める友人のツテで下取り車として入庫したR32スカイラインGTEタイプXVが見つかった。R32と言えば、GT-Rを筆頭にGTS-tタイプMを思い浮かべるかと思うが、このクルマには2L直6 SOHCのRB20E型エンジンが搭載され、上級グレード同等の装備を持った珍しいモデルであった。

写真はGTS-t Type M

 このR32スカラインGTEタイプXVはまさに新車時に欲しかったモデルで、結果的に購入に至らなかった理由は乗り降りの大変さや荷物が積めないから。R32スカイラインは、当時ではすでに当たり前になっていたバンパーレベルから開くトランクよりもボディ剛性を重視していたため、トランクの開口部が狭く控えめとなり、荷物の載せ下ろしなどの利便性はあまり良くなかった。理由は、居住性やユーティリティ性よりも走行性能を重視した結果で、それ故に祖父母を後席に乗せることの大変さからR32スカラインは選べなかったと言うわけだ。そのときとは状況が変わり、幸か不幸かその昔欲しかったクルマを手に入れることができた。

ピアッツァとR32に共通する美点は犠牲以上の美点があること

 R32スカイラインとピアッツァの共通項に話しを戻すと、なんでもてんこ盛りのオールダウンダーではなく、犠牲を強いるもそれ以上の美点があること。ピアッツァの場合はスタイリングであり、R32スカイラインは走行性能となる。極端に言えば、ミニバンにスポーツカーと評価できる運動性能を備えることは不可能なワケで、当たり前だがスポーツカーに他人数乗車と豊富な積載性を求めることまた無理筋ということ。

 また洗車場のエピソードに戻すと、ミレニアムを迎えた2000年代前半にスカイラインはR33を経てR34へとモデルチェンジしていた。そんなこともあり、二世代前のR32でガソリンスタンドの洗車スペースでクルマを拭き上げていると「前に乗っていました」や「大事にしているのですね」などなど、声をかけられることが多くあった。

 私の場合、たまたま中古で購入したR32が同じ地域のナンバーであったため、昔のナンバーをそのまま使っていただけなのだが、もちろん「中古で買ったんです」などとバカ正直に告白することはなかった。だが、こちらはこちらで「最近MT車が少なくなりましたね〜」なんて、会話を弾ませるスキルはこの当時磨かれたものだ。

メーカーも違う2台の共通項はドライバーファーストであること

 また、初代ピアッツァとR32スカイラインの共通項と言えば、サテライトスイッチと呼ばれるステアリングから手を放す頻度が抑えられる操作スイッチ機能があることだ。ピアッツァもスカイラインも操作性に非常にこだわって作られたモデルで、運転に集中しやすい装備が突き詰められていた。いまあらためて思うのは、ドライバーファーストな操作系が他モデルでももっと多用されても良かったのではと感じている。当然コストが嵩むわけだからそう易々と採用できなかった事情も理解できる。ただ、逆に言えばピアッツァもR32もしっかりコストをかけて作られていたということだ。

 個人的な意見になってしまうが、初代ピアッツァとR32スカイラインは前述した「美しいスタイリングを最小限の犠牲で実現したこと」に加えて、「ステアリングから手を放さずに操作ができる」ところが最大の美点であり、1980年代と90年代の国産名車の共通項だと言える。さらに付け加えるなら、一般的な日本車のように余計な装飾が少なく、欧州車のような美しくも無駄のないスタイリングも魅力であった。その後も国産、輸入車問わずさまざまなクルマを所有してきたが、明確に「コレ」とは言い切れないものの、それぞれに共通の特徴があったことに気が付く。

 みなさんも自身の愛車遍歴を振り返ってみると、いまの愛車に通じる愛車選びの譲れないこだわりや共通する装備、美点を発見してみてはいかがだろうか。

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