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いまなお生き残るにはワケがある! 初代からして偉大だったカローラとシビック

今も現役で販売し続ける2台

 1960〜1970年代にかけて登場した日本車のなかで、エポックメイキングだったクルマというと、カローラとシビックが挙がる。どちらもアプローチは異なるものの、ともに日本の乗用車に新風を吹き込むコンセプトが注目されたクルマだった。

カローラの「80点+α」は今でも開発テーマのひとつ

 まずカローラだが、初代モデルの登場は1966年のこと。国民車構想のもとで市場投入されたパブリカよりも少し贅沢なファミリーカーを……の声に応えるクルマとして開発された。のちにトヨタ車を表わすときに“80点主義”と言われるようになったのをご存知の方も多いと思うが、このフレーズはそもそも初代カローラの開発テーマであったもの。ただし正確には“80点+α”といい、ユーザーに+αの何かも提供すること、それを使命に初代カローラは生み出された。

 では初代カローラの+αとは何だったのか? というと“スポーティ性”だった。具体的には4速MTとATのフロアシフト、丸型メーター、大衆車クラスでのディスクブレーキの採用をはじめ、縦線基調のフロントグリル、サッシュレスクオーターウインドウやマクファーソン式サスペンション(少量生産ではホンダに前例があった)、垂直型リヤショックアブソーバーなどがそう。これらはいずれも日本車、トヨタ車としても初採用だ。

 ほかにトヨタ車初としてはファストバックスタイル、曲面ガラスなども。いずれも、もっとあとの時代の日本車では当たり前になったので、かえって新鮮だが、じつは初代カローラは、かような新機軸が意欲的に採用されたクルマだった。ちなみに2021年に最新カローラのチーフエンジニアにインタビューする機会があったが「カローラの80点+αは今でも開発テーマのひとつ」だそう。

 また5ベアリングを使った小型エンジンの例もそれまではなかったが、これによりカローラでは5000rpmまで回るOHVエンジンを搭載。1000+100ccの余裕をもたせた排気量で市場、対米のニーズにも応えた。

 カタログにも謳われているが前席はセパレートとし、フルリクライニングさせると後席と繋がる設計になっていた。計器盤(ダッシュパネル)や前席背面のパッド、突起のないドアハンドルなど安全面での配慮も盛り込まれている。

 その一方で9色が設定されたボディ色のひとつひとつが、“アフロディティ・ホワイト”“ゼウス・ブルー”といった風にギリシャ神話をテーマにした色の名とするなど、ロマンティックなセンスも。そういえばカローラの車名自体「花の冠」の意味だが、初代カローラは、より多くのユーザーの夢を叶えるための偉大なる大衆車だったのである。

通好みのクルマに仕上がっていたシビック

 もう1台、初代カローラに遅れること6年、1972年にホンダから登場した初代シビックも忘れられない存在だ。カローラと同様に、この初代シビックが登場した瞬間も筆者は(物心ついてだいぶ経ったころだったから)覚えているが、第一印象は「ミニ、それとも軽のNIIIやライフを大きくしたクルマ?」だと思った。何より特徴的だったのがトランクをストンと落とした2ボックススタイルで(当初はミニとは逆の上部にヒンジのあるトランクリッド式で、すぐにハッチバックが登場した)、さらにFFも採用し、先見の明があったというか、先進的なクルマだった。

 カタログを見ると「フロントドライブ(前輪駆動)は引っ張りながら方向を変えるやりかた。リアドライブ(後輪駆動)は直進しようとする力をハンドルで方向修正するやり方。F・Fのほうがハンドルを切った方向に駆動力が働くので、それだけハンドリングに優れ、走破性が高い」などと説明がある。ストラット式4輪独立懸架、ラック&ピニオン式ステアリングについてもカタログで謳われており、大衆車ではあるが、クルマがわかる通好みのクルマに仕上がっている……そんなアピールもされている。

 カタログはほぼ最終型の1978年のものなので、搭載エンジンは登場時の1200から代わり、1335ccが設定されている(ほかに1500を設定)。昭和53年排出ガス規制をクリアしたCVCCで、無段変速の☆(スターレンジ)付きのATも用意されていた。

 またこの年式では1500(75ps/11.1kg−m)の3ドアに設定された1200RSの後継車RSLがスポーティグレードとなっていて、純木製シフトノブ付きの5速MTを組み合わせ、155SR13サイズのラジアルタイヤを装着している。

 日本車のなかでかつてのビッグネームが次々と消えていく一方で、カローラとシビックは、今も現役で続いている心強い存在だ。もちろん初代と現行型とではボディサイズも立ち位置もずいぶん変わった。けれど長年親しんだブランドが今も残ることを、嬉しく思うクルマ好きは少なくないのではないだろうか。折りしも電動化時代に突入、いろいろなことの変革期を迎えていることも確か。だが、ブランドとしてのヘリテージは大事にしてほしいという思いはある。

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