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ツインカムとDOHCって何が違う? なぜ高性能エンジンにはカムシャフトが2本あるのか

2代目インテグラに搭載のB16A型エンジン

メーカーによって呼び方が異なるDOHCとツインカムとは

 ツインカムとDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)は、メーカーによって呼び方こそ異なるが、これはほぼ同義である。ちなみにどちらもエンジンの構造を表し、ひとつのエンジンのシリンダー(燃焼室)上に何本のカムシャフトがあるのかを示す用語である。

 かつては高性能エンジンの証として、エンブレムの横やボディサイドにステッカーが貼られていたことを覚えている方も多いだろう。それこそ自動車雑誌では「ターボとDOHCのどちらがチューニングに向いているか」や「どちらが高性能なのか」といった記事が人気を集めていた。しかし、現在では高性能なDOHCエンジン+ターボが当たり前の時代となり、話題終了となるのである。

 昔は同じような機構でもメーカーによって呼び方が異なる場合が多く、ツインカムとDOHCに限らず、例えば4WD(FOUR WHEEL DRIVE)をAWD(ALL WHEEL DRIVE)と称するぐらいの違いと考えてもらえばいいだろう。

エンジンの進化過程でSV→OHV→OHCへと発展

 ここで10秒でわかるカムシャフトやバルブの歴史について少し解説してみよう。昔はエンジンの横や下にあったSV(サイドバルブ)という方式がエンジンの主流だったが、その後、現在でもシボレー・コルベットが搭載するカムシャフトがエンジンブロック側で、バルブが頭の上にあるOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)が誕生する。

 そしてカムシャフトが一番上にあるOHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)、もしくはSOHC(シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)が生まれ、さらに発展型のツインカムやDOHCへとつながるワケだ。

DOHCが高性能エンジンとされるのはより高効率を実現するため

 そこで現在主流のDOHCエンジンは「何がすごいのか?」であるが、吸気・排気バルブのそれぞれの面積を広げることで、シリンダー内に沢山の空気を取り入れることが可能になり、出力(パワー)を高められるようになるのが大きな特徴だ。いまいちピンときていないようであれば、ひとつのシリンダーにインテーク(吸気)バルブがひとつ、エキゾースト(排気バルブ)がひとつのSOHCと、それがそれぞれふたつのDOHCとでは、どちらがより多くの空気が取り込めて効率がいいかという話になる。もちろんDOHCの方が高効率のためパワーを引き上げることができるようになる。

 そのため1気筒(シリンダ−)あたりにバルブを4つ設けたとしたら、吸気に2バルブ、排気に2バルブあった方が当然効率が高く、吸気用と排気用にそれぞれ2本のカムシャフトを備えることで、より緻密な制御ができるようになり高性能化できるワケだ。もちろん吸入空気量を増やす機構としては、効果の違いこそあれターボチャージャーやスーパーチャージャーも同じ効果を狙ったものになる。

V型や水平対向エンジンのDOHCはツインカムとはイコールにならない

 ここでツインカムとDOHCの重箱の隅をつついたような違いに触れると、ツインカムはエンジンに何本のカムシャフトがあるかを示している用語なので、直列エンジンであれば8気筒でも12気筒でも2本だからツインカム(以下、DOHCに統一)。

 対してV8エンジンであれば片側(片バンク)2本ずつだから、4本必要でフォーカムとなる。かつてはカタログに4カムと表記したV6エンジン搭載車もあったが、実際には1気筒あたりのカムシャフトは2本なので間違いではないのだが、現在は誤解を招くことがないようにDOHCという表記が一般的となっている。

1気筒5バルブのエンジンもあったが現在は1気筒4バルブが主流

 かつては直4エンジンのDOHC8バルブやSOHC8バルブ、1気筒あたり5バルブのDOHC20バルブといったエンジンもあった。これらはコストと性能のバランスの追及や差別化が重要視されていたワケだが、現在はほとんど見かけることはなく、1気筒あたり4バルブのDOHCが基本となっている。

 これはバルブの開閉面積だけではなくて、開閉タイミングも綿密に制御しないと緻密な燃焼ができず、出力はもちろん排ガス浄化性能や燃費に関わることから、現在は2本のカムシャフトのDOHCが主流となっているのだろう。もちろん量産効果でコストも下がったに違いない。

日本車初のDOHCエンジンはホンダT360に搭載の「AK250E型」

 少々昔の変わり種を紹介すると、例えばトヨタのハイメカツインカムは、1本のカムシャフトを従来どおりタイミングベルトで駆動して、もう1本のカムシャフトをカムシャフト間にシザーズギヤ駆動機構を設けることで実現したもの。その結果、最適燃焼室形状、高圧縮比、4バルブ化と開閉タイミングの効率化を図ることができ、低コストかつ高性能を両立。このバランスのいいエンジンは、高性能ではない乗用車のエンジンにもDOHCを採用させることになるなど、DOHCの民主化(?)を果たしたエンジンであった。

 ちなみに日本車初のDOHCエンジンはどのモデルに搭載されたのかわかるだろうか? 1967年にデビューしたトヨタの歴史的スーパーカーである2000GTも早々に高性能エンジン(3M型・2L直6DOHC)としてDOHCを採用したが、じつは意外なことに1963年8月発売のホンダ初のトラックであるT360に搭載されたAK250E型・354cc直4DOHCが日本車初のDOHCエンジンとなる。

ホンダ自慢のDOHC VTECは2代目インテグラXSiで初採用

 そのホンダと言えば、高性能DOHCのイメージリーダーといっても過言ではないVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system/バリアブルバルブ・タイミングアンドリフト・エレクトロニック・コントロールシステム)がある。可変バルブタイミング機構を備えたVTECは、低回転と高回転でバルブ開閉のタイミング(リフト量)を変更。エンジン回転数に応じて適切なバルブ開閉ができることから、エンジンの特性を可変させることで、高性能かつ実用的なエンジンの両立と低燃費化を実現した。2代目インテグラのXSiグレードに搭載のB16A型から始まり、VTECは一世を風靡。その後、三菱のMIVECなど、ライバルたちも負けずと開発競争を繰り広げいち時代を築くこととなる。

 これは余談だが、コルベットがいまだOHVを使っているのは、ひとえにエンジンの重心を低くできるからだ。ドライサンプ式にするなどの改良が加えられ、ミッドシップとなった現行型もアメリカを代表するリアルスポーツカーとして人気であることはご存じの通り。かつて北米に存在した「OHV only」というOHVエンジンしか整備できないという整備工場が現在どれだけ残っているのかは不明だが、「OHVこそアメリカのエンジンだ!」という気風もあっていまだOHV一択なのだろう。

 いずれにせよ必要な性能が出れば形は何でもよく、現在の1気筒あたり4バルブのDOHCというのは、需要と供給の結果というワケだ。

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