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いまだ世界中にファンだらけのワーゲンバスがEVでついに復活! 「ID. BUZZ」は世界に旋風を巻き起こすこと確実

「はたらくEV」としても世界的に大ヒットの予感

 フォルクスワーゲンがEV戦略の肝としてかねてより予告していた「ID. BUZZ」が3月9日、ついに発表された。かつて商用車として生み出されピープルズ・カーとしても世界的に親しまれた「タイプ2」、通称「ワーゲンバス」のリバイバルであり、グローバル戦略車としてVWが大きな期待を寄せるEVモデルである。明らかにされた情報を整理してお伝えしよう。

かつて世界中の仕事と暮らしを支えた「ワーゲンバス」

 始祖にあたるVWタイプ2は、リヤエンジン・リヤドライブのVWタイプ1「ビートル」の構造をベースとして、それにハコをかぶせる形で1950年に商用車として誕生。それゆえ運転席はフロントアクスルの上にあるようなキャブオーバーのレイアウトで、フロントオーバーハングがほとんどなく、また前後をつなぐドライブシャフトも不要ゆえに広い室内空間を誇っていた。

EVならではのレイアウトでご先祖さまの姿を再現

 ID. BUZZはVWグループのEV用プラットフォーム「MEB」をベースにしていて、バッテリーをフロア下に搭載することで前後の重量配分を最適化するとともに低重心化を実現。後輪駆動でハンドリングが軽快なのも元祖ワーゲンバスとの共通項といえる。

 フロントオーバーハングを最小にして、ホイールベースは現行の商用モデル「T6.1」と同等の2988mmと長く、室内空間を大きく確保している。フロントフェイスは「丸目」ではなくモダンなLEDヘッドライトを与えられているが、旧型を彷彿させるV字型のパネルが特徴で、オプションのツートーンカラーを選べば雰囲気はかなり近くなる。

 ボディサイズは全長4712mm、全幅1985mm、全高は仕様によって1937mmまたは1938mm。幅の大きさが気になるところではあるが、回転直径は11.1m、つまり日本式で最小回転半径を表記すると5.55mなので、取りまわしは上々だ。また燃費性能が重要な意味をもつEVゆえにエアロダイナミクスも徹底し、Cd値は乗用モデルで0.285、商用モデルで0.29となっている。

MPVの「ID. BUZZ」と商用車「ID. BUZZ Cargo」が展開

 ID. BUZZの乗用車バージョンは2列シート5人乗り、後席はスライドドアで、日本の感覚では「ミニバン」だが、VWは「MPV(マルチ・パーパス・ビークル)」と定義している。ラゲッジ容量は1121Lで、2列目シートを倒せば最大で2205Lまで拡大可能。さらに要望に応じて、カーゴスペースを固定式パーティションで区切ることもできるという。

 同時に商用車バージョンの「ID. BUZZ Cargo」も登場し、こちらは荷室に「ユーロパレット」(1200mm×800mm)を横積みで2枚積めると称しているので、少なくとも奥行き1600mm×幅1200mmの室内空間が確保されている模様だ。

 なおMPVも商用車も、1950年以来、元祖のタイプ2をはじめVWの商用車部門の生産を担ってきた伝統あるハノーファー工場にて生産される。

大出力の急速充電なら30分で75%給電できる

 さて、気になるのはEVとしての性能だ。バッテリー容量は77kWh(総エネルギー量82kWh)とのことなので、すでに日本でも販売されている「メルセデス・ベンツEQC」の80kWhと同等の数値である。このバッテリー電力で150kWの電気モーターがリヤアクスルを駆動。航続距離や最高速度、車両重量などの具体的なスペックはまだ明らかにされていない。

 リチウムイオンバッテリーは、11kWの交流(AC)電源を使用して公共の充電ステーションから充電することが可能だ。急速充電(DC)を使えば充電出力は最大170kWまでアップし、約30分でバッテリーの充電レベルが5%から80%まで上昇するという。

 双方向充電にも対応しているため、将来的にはID. BUZZのバッテリーから住宅などに不要な電力を供給することも可能となるそうだ。

 くわえて最新の運転アシスト機能を標準装備し、全車速域で部分的な自動運転が可能となっており、遠からぬ未来の自律移動コンセプトにも対応することが視野に入っている。

ヨーロッパで5月から先行受注スタート

 欧州での本格発売は秋を予定していて、いくつかの国では5月から先行受注を開始するとのこと。すでに欧州では登場しているID.シリーズも上陸待ち状態である日本市場には、ID. BUZZがいつどのような仕様で導入されるのまだわからないが、乗って楽しいEVが増えてくれることに大いに期待したい。

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