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涙の生産終了! ピュアにも程があるほどピュアスポーツだったロータス・エリーゼの歴史

四半世紀も愛された真の「ライトウエイトスポーツカー」

 ひと口に「ロータス」といっても、人それぞれ、思い入れのあるモデルはさまざまだろう。筆者の場合は、市販車ならやはり「エラン」のシリーズ1だろうか。子ども心に興味を抱き、「FRPボディって軽いんだろうなぁ」などと実車に思いを馳せつつ、小遣いで買ったプラモデルを作った経験がある(モデルはドアガラスに窓枠のついたシリーズ2だったかもしれない)。自身で実車を手に入れるチャンスは訪れなかったものの、自分の生涯で好きだったクルマのトップ100を挙げるとすれば、かなり上位にランキングされると思う。

経営の不安定だったロータス社を救ったヒット作

 ところでここで取り上げるのは、1960年代のエランよりずっと近代のモデル「エリーゼ」である。エリート(Elite)、エラン(Elan)、ヨーロッパ(Europa)、エスプリ(Esprit)、エクラ(Eclat)、エクセル(Excel)、さらに最新のエミーラ(Emira)もそうだが、スポーツ系、GT系のいずれもともにロータスの車名は「E」で始まるのが流儀だったが、1995年に登場したエリーゼ(Elise)も、その慣わしに従っていた。

 この世に生を受けたこのエリーゼだが、その姿はミッドシップのライトウエイトスポーツカーというものだった。ライトウエイトスポーツといえば、「エラン」やひいては「スーパー7」などにも繋がる、ロータスの王道をいくカテゴリーとなるモデル。ただし「エスプリ」以来のミッドシップレイアウトをライトウエイトスポーツのカテゴリーでやってきたところにロータスの本気度が窺われ、「やるじゃないか!」と思わせてくれた。

軽量・高剛性なアルミ製バスタブシャシー

 このエリーゼでは、何としても軽量に仕上げるための方策として、バスタブ型のアルミスペースフレームを採用。当時の資料によればこのシャシー単体重量は68kgの軽さとなっており、しかもパーツの接合部分を溶接ではなく航空工学の技術を採り入れた接着としたり、均一な肉厚を可能にした、当時としては新開発の押し出し成形技術も採り入れるなどして、軽さと同時にシャシーのポテンシャルを高める設計でもあった。

 軽量化ではほかに、ブレーキローターにはアルミ複合素材を採用し、鋳鉄製に対し約半分の重さに抑えるなどといったトライも(手元の日本仕様のカタログでは「フロント・リヤ:スチールベンチレーテッド・ディスクブレーキ」となっている)。初期型の車両重量は699kgとなっている。

トヨタ製エンジンをブン回すのも快感だった

 他方でエンジンは、同じイギリスの「MG F」が搭載したローバー18K型、水冷直列4気筒ベルト駆動DOHC16バルブを搭載。このエンジンは1796ccの排気量で、120ps/16.8kg・mの性能を発揮。さらにこのVVT(可変バルブタイミング)機構付きのユニットも搭載されていた。

 少し飛ぶが、エリーゼのエンジンの話題で外せないのが、われらがトヨタ製のツインカムが搭載されていた点。年式、グレードごとに異なるが、搭載されたのは1.8LのVVTL-i付き2ZZ-GE型(192ps/18.5kg・m)、1.8LのVVT-i+スーパーチャージャーの2ZR-FE型(220ps/25.4kg・m)、そして1.6LのデュアルVVT-iの1ZR-FAE型(136ps/16.3kg・m)だ。いずれのスペックも日本仕様のカタログの諸元表に記載されたものだが、2ZR-FE型を搭載するシリーズ3に2012年にラインアップに加わった「ELISE S」(車両重量=950kg)の最高速度は234km/hとなっている。

ルックスは進化させても基本骨格はそのまま熟成

 いろいろな話が前後してしまうが、エリーゼとしては全体で大きくシリーズ(フェイズ)1~3へと進化を果たした。A型アッパー&ロアアームの前後ダブルウイッシュボーンサスペンションをはじめ、シャシーなどの基本メカニズムは当初のものをベースとし、グラスファイバー製のボディシェルのデザインは、シリーズ1、2、3と変遷があった。フロントのデザインで見ると、丸形ヘッドライトのシリーズ1、木の葉型ヘッドライトのシリーズ2と、ライト類の機能をひとまとめのハウジング内に収めたシリーズ3といったところが外観上の識別点だ。

重さを感じさせない俊敏な身のこなしは唯一無二の世界

 さて、外観上の識別点などと怪しげな(?)表現をしているところがいぶかしげに思われた方もおられると思うが、じつは筆者はエリーゼには一度だけ試乗した経験がある(一度しか乗ったことがない、ともいう)。某自動車雑誌の取材でスポット的に取材の機会ができ、日帰りで東京と箱根を往復したことは覚えているので試乗したことは確かだ。だが、コアなエリーゼ・マニアの方からお叱りを受けるのを覚悟で書かせていただくと、あろうことか、そのときの試乗車がどのエンジンのどのシリーズだったかを正しくお伝えする自信がないのである。

 アルミ剥き出しの幅広いサイドシル(フレーム)を蹴飛ばさないよう足運びに注意しながら乗り降りしたこと、スーパー7を思い出させる路面の近さ、ETC未装着だったか、まだ実用前のことで「小田厚」の料金所で低いドライバーズシートから手を伸ばすのに苦労したことなど。ノンパワーだが入力を与えればピクリと反応するステアリング、踏めば躊躇なく加速体勢に移るパワー感、それとまるでボディが架装されていないのではないか? と思わせる、羽のようなフワッとした身のこなし……。

 ひとえに軽量コンパクトなエリーゼならではの走りの世界観に、頭の中が真っ白になっていたのだと思うが(それでいったい当時、どんなレポートが書けたのだろう?)、周囲でエリーゼのオーナーはすでにいて「ああ、彼らはこの走りにハマっているのだなぁ」と思った次第。どうだろう、このぐらいの賛辞で、マニアの方にはお許しをいただければ幸いだ。

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