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あまり語られない装備の歴史もスゴイ! 旧車時代から振り返る「ドライバーのお助け」機能

E36型BMW3シリーズのインパネ

心遣いが優しいドライバーズファーストなクルマの機能とは

 近年はデジタル時代がクルマにも訪れて、運転席からの操作性が激変している。すべてスマホやタブレットのようにタッチパネルとなるのが未来的と人気を集めているが、じつはこれ、すべてがコストダウンのため。エアコンの温度調整やオーディオ操作などは、物理的なスイッチが付いていたほうが使いやすいと思うのだがコストには抗えないらしい。そのうちに「運転席の窓を10cm開けて!」と言えば叶う時代が来るのだろう。

 でもボルト&ナットの時代からクルマを運転する筆者からすれば、なんとも扱いにくいことこの上ない。何もチョークやグローが装備された時代まで戻ってほしいとは思わないが、物理的なスイッチがある方が便利な部分もまだまだ多い。何も先進的な機能ではなくても、しっかり運転者に寄り添ってくれるドライバーズファーストなクルマを紹介しながら、クルマの進化とともにドライバーを手助けしてくれる便利な機能を振り返りたい。

BMWでは古くからドライバー側に傾いたインパネを採用

 ドライバーズファーストと聞いてまず思い出すのがBMWだ。過去のBMWはセンターコンソールが若干ながら運転席側を向いており、オートではないエアコンとカーナビどころかCDすら珍しかった時代でも非常に使いやすかった。それこそカセットテープの入れ替えやエアコンの温度調整は頻繁ではないものの、運転中に必要な操作であり、手が届きやすいとか目線を動かさずに使えることで便利だった。もちろんテープ交換は信号待ちでやる作業だが、それだって優れた操作性であることに越したことはない。

 現在ではメルセデス・ベンツのMBUXなど、最新の音声認識も慣れれば便利な機能であるが、まだまだ万能ではない。市販化されて使われていくなかで進化するのは理解できるのだが、過渡期である現在は物理スイッチとの併用が必要だと思う。とはいえ、スマホ世代の若者にはMBUXのような音声認識操作をすぐに使いこなしてしまうのだろうが……。

 ちなみにBMW傘下になったMINIがヒットしたのは、往年のセンターメーターとトグルスイッチが備わる点が魅力だったはずだ。こちらは決して使いやすかったわけではないが、MINIの世界観を表現するには必要であった。オールデジタルではなく一部にアナログ的な機能や仕立ては、クルマの個性を引き立てる意味でも今後も残してほしいものだ。

ワイパーとウインカー操作を1本のレバーで担うメルセデス・ベンツ

 続いても輸入車になってしまうが、メルセデス・ベンツのワイパーレバーもそうだ。信じられないかもしれないが、現在のCクラスのご先祖モデルであるW201の190Eや名車として語り継がれているW124などのEクラスのご先祖モデルには、ステアリングコラムから生えているレバーが1本だけでウインカーとワイパーの操作ができた。

 またトランスミッションのゲート式のシフトレバーもありがたい機能。レバーに手を置けば今どこのポジションにシフトが入っているのかがわかるため、視線を移動しなくても使いやすく、操作ミスを防止してくれるものであった。他メーカーではジャガーも「Jゲート」を伝統的に採用し、2000年代以降の国産車の多くも軒並みゲート式が採用されるようになった。近年はシフトレバーからボタンやダイヤル式へと移り変わる時代だが、運転中に視線を動かさずとも操作できるゲート式シフトレバーはドライバーに優しい装備だったと言える。

’90年代にすでに採用されていたヘッドアップディスプレイ

 続いてヘッドアップディスプレイも重要な装備と言える。日産のS13型シルビアに設定されたことで知名度を上げたこの装備だが、とにかく視線移動が少ない点がありがたい。高速道路を走っているときなど、道路の勾配によって速度は意外と変化しやすく、上り坂で速度が落ちることが原因となり、渋滞の発生につながってしまう。

 最新のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使っていればそんなことは起こらないが、視線移動が少なく状況を視認できるヘッドアップディスプレイは十分にドライバーズファーストな機能と言える。

夜間のドライブを赤外線カメラ映像でサポートしてくれるナイトビジョン

 また、高級車に備わる装備として注目されたナイトビジョン(メーカーにより名称は異なる)も便利だ。これは夜間、暗い場所を走行するときに重宝する機能で、赤外線カメラ映像のサポートで視認しにくい視界が確認できる機能だ。北米では早くから装備されており街灯が少ない道路でも非常に便利。

 日本でも土地勘のない地域を走るときには役立ったし、明かりが少ない高速道路では安心感が高まる。これが備われば明るすぎると感じるLEDのハイビームの使用頻度も減らせるため、メーターパネルの液晶化が進む昨今は、多くのクルマに備わればと思ってしまう。

ステアリングから手を放さずに操作できるサテライトスイッチ

 また、日産のR32型スカイラインで知名度を上げた、サテライトスイッチも重宝する機能と言える。これは欧州車をはじめとして、いすゞピアッツァなども採用していたが、いかにステアリングから手を離さないで各操作ができるのかが重要で、目視しなくても操作できることで安全性を高めてくれた。クルマを運転しているときはクルマの性能が優れていても、前後左右をつねに確認するのが運転者の務め。何かしらの操作のためにスイッチの位置を確認する時間はできるだけ省きたい。その意味でもサテライトスイッチは、慣れの問題こそあるものの、ボタンやスイッチの位置を確認する時間を減らせる重要な装備。

 細かい話をすれば、オートエアコンが装備されているのにエアコンの操作部分が色々と使いやすいセンターコンソールの上部にあることはよろしくないと言える。理由はエアコンを入れたら、その後は操作の必要がないオートの利点を生かせば、ある程度使いにくい位置にあっても弊害がないからだ。それよりも使う頻度が高い、当時のオーディオなどの操作系が使いやすい場所にあることの方が重要で、日産のP10型プリメーラはこのような面でも欧州車的でありヒットしたのも納得だ。

スマートキーやプッシュスターターで操作性は格段に向上

 こちらは近年の装備ですっかりお馴染みのキーレスエントリーやスマートキー。これはクルマから少し離れた場所からでもドアの開閉ができるのはもちろん、鍵を手にしていたり、身に付けていればロックの解除ができる便利な装備だ。近年はもっと便利になって近づくだけでロックが解除されるなどの進化を果たしているが、洗車をしているときにドアロックの解除と施錠が頻繁に行われてしまうなど、まだまだ過渡期の機能だと思われる人も多いに違いない。

 ただし、機能はそれだけに止まらず、エンジンの「ちょんがけ」防止に有効な機能としても役立つ。かつてのように鍵をキーシリンダーに差し込んでからイグニッションを回し、鍵でエンジンを始動させるクルマの場合、V8などのマルチシリンダー車では8気筒分すべてのシリンダーが始動するまでイグニッションを回さないと、ばらついた状態でエンジンに火が入ることになり好ましくなかった。

 スターターモータ―で全気筒分にしっかり火が入るまで回すことが大事なので、キーレスエントリーやスマートキー車であれば、イグニッションがプッシュ式となるため、「ちょんがけ」を防ぐ機能があらかじめ備わる。つまり、ボタンを押せば正しくエンジン始動してくれるため、愛車のエンジンを労る機能としてもじつは有効なのだ。

【まとめ】快適性や安全のために必要な機能はしっかり理解して活用したい

 ほかにもなぜか日本車では採用車が少ないテレスコピック式ステアリングや、シートの高さ調整、幅広い方に適応する微調整可能な電動式シート、調整できる座面長やランバーサポート(腰部)、サイサポート(太腿)など、運転者にありがたい装備はまだまだある。

 そしてこれらが備わっているのにも関わらず、使っていないユーザーは一度は説明書を読んでほしい。とくにシートの高さ調整機能やステアリングにチルト機能があるクルマにも関わらず、無理な姿勢で運転しているドライバーを見かけることは少なくない。クルマの持つ機能を活かして正しく運転すれば、クルマの運転はより楽しく安全にドライブできるようになるはずだ。

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