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ホンダとローバーの短い蜜月時代! わずか5年で生み出されたコラボモデルたち

共同開発された印象深いローバー車を振り返る

 ホンダとイギリスのローバーは資本提携していた時期があったが、それは1990年から1994年にかけてのごく短いものだった。ただしローバーの本国イギリスでは、トライアンフ部門のセダンとして初代ホンダ・バラードがベースの「アクレイム」を1979年から生産していたり、2代目インテグラにローバーのバッジがついたモデルの設定があったりと、日本では直接お目にかかる機会はなかったものの、知られざる(?)ホンダとローバーのコラボモデルも存在していた。

 その一方で、ローバージャパン(発足は1989年、1999年にはBMWに統合)が日本市場で順調な展開を見せていた時期には、セダンを中心にさまざまなホンダ車がベース、あるいは共同開発された印象深いローバー車があった。

オーソドックスな佇まいが特徴的なローバー800シリーズ

 ローバー800シリーズはそのなかの1台だ。1987年に登場した当初のカタログは単に“スターリング”の車名で、それは最上級グレードの呼称でもあった。このモデルはホンダのフラッグシップモデルのレジェンドとの共同開発により誕生。実際の市販化はレジェンドがひと足早く(1985年)、800はそれを追って1987年に日本市場にお目見えした。

 両車のサイドビューのカタログ写真で見較べてもわかるように、2760mmのホイールベースは共通。だがスタイリングはまったく異なっており、ホンダ車初の3ナンバー車だったレジェンドはブリスターフェンダー付き(全幅は1735mm、2Lモデルは1695mmだった)の、強いて言えばドイツ車風味だった。それに対し800は、6ライトキャビンのオーソドックスな佇まいを特徴とした。

 インテリアもレジェンドは当時のホンダ車流のクールな仕上がりを見せていたのと好対照に、800ではウォールナットと本革を用い、さらに後席のパワーリクライニングや、専用設計の電動8ウェイシート(ランバーサポート、前後上下調節式ヘッドレスト付き)などが奢られていた。800のエンジンは当初はレジェンドと共通のホンダ製のV6・2.5Lだったが、のちに同じ2.5LのV6ながら自社製に置き換えられた。

ホンダ・アコード系ベースの600シリーズ

 モデル名をローバーの数字の順で追うと、1994年登場のアッパーミドルクラスの600シリーズも忘れられないモデルだ。このモデルはホンダのアコード系(アスコット・イノーバ)をベースとしたモデルだったが、当時のニュースリリースには“ローバー自身によるデザインは、ボンネット、フロントバンパー、ライト(ローバーグリルとマッチ)、4ライトデザインのリアドア、リアスクリーン、トランクリッド、テールエンドなど”と記されている。

 全体に丸みを帯びた上品なデザインは、控えめながらrightness(正統性)を伝えるものとなっていた。一方でインテリアは、インパネの基本デザインなどから600とアスコット・イノーバが共通とわかったものの、コンソールやドアトリムにウォールナットを用い、本革シートが奢られた600はローバー車のトーンでまとめられていた。

 搭載エンジンは800もホンダ製の2Lと2.3Lが搭載されたが、600ではいずれもハイオク仕様(アスコット・イノーバは2.3Lのみハイオク仕様)としていた。

小さな高級車だった400シリーズ

 ほかに、ローバーには400、200の各シリーズがラインアップされていた。いずれもホンダ車で言えばシビック相当のコンパクトなクラスのモデルだったが、そこはローバー車らしく仕上げられていたのが特徴だった。

 とくに400シリーズは、これはもう“小さな高級車”といえるクルマだった。この場合、ホンダ車ではコンチェルトがいわば兄弟車の関係といってよく、数あるローバーとのコラボレーションのなかでは、もっともローバー車に寄せた内・外観を持っていた。4ドアセダン同士では6ライトのキャビンが共通だったため、コンチェルトはもっとも“ローバー車っぽい”クルマでもあったのだ。

 だが、インテリアは例によってインパネの基本デザインなどは両車共通ながら、400がリアルウォールナットだったのに対しコンチェルトの木目はフェイクだったり、シートも400は本革で骨格も専用設計だったりと差異が見られた(ドアトリムも専用デザインが与えられていた)。

 とはいえ、ルックスどおりのおっとりと穏やかな乗り味ではホンダ・コンチェルトもローバーに迫るセッティングだったのが印象的でもあった。400にはほかにツアラーと呼ぶワゴンの用意もあったほか、2世代目(1995年)もあった。こちらはホンダ・ドマーニ相当のクルマだった。

 また初代の400シリーズと同世代の200シリーズもあった。このシリーズはセダンの400に対し、より個性を楽しむための派生モデル的な位置づけであり、クーペ、3ドアハッチバック、そしてカブリオレの3タイプのボディバリエーションが用意された。

 搭載エンジンは220には新開発のローバー製2Lターボを搭載(ほかに1.6Lも設定)。クーペには珍しい左右分割チルト&デタッチャブル大型スモークガラスルーフを標準装備(Tバー部分は取り外し可能だった)。カブリオレは当時としては贅沢な電動開閉式のトップが与えられていた。

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