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これでクルマのリヤシートってウソだろ? 内装にこだわりすぎた「マツダ・ペルソナ」という衝撃作

冒頭から12ページも続く内装の写真にこだわりを感じる

 インテリアイズム。トップページにそうあるマツダ・ペルソナのカタログは、驚くべきことに最初から12ページ(ちなみに全32ページだ)まで、クルマの外観全体が分かる写真が1点も出てこない。では何が載っているのか? といえば、ひたすら室内の写真だ。

 室内全体、前席、後席、インパネの部分カット、ドアトリムの部分カット、メーターパネル、運転席まわり、そして表皮と色違いの前席、後席……といった順。そして13ページ目でやっとペルソナ全体の外観が登場するが、まだ、クルマの上半分に照明を当て、ピラーレスハードトップの窓まわりを強調したようなカット。

 その次の見開きで、ようやく、やや俯瞰のいわゆる7:3の外観写真が登場する。さらにページを捲ると今度はフロントノーズまわりのアップ、別のボディ色のペルソナの今度はリヤ7:3、ふたたびリヤまわりのアップ、ピラーまわりのアップと続く。

 それからもう1ページ捲ると、ようやく文字が載っていると思いきや、ペルソナの開発でイメージ共有のためにイングリッド・バーグマンの写真が用意されたという話が始まる。勿体ぶってなかなか本論に入らない原稿なら筆者も得意だが(!)、ペルソナのこの最初のカタログの、これほどクルマの写真のなかなか登場しないページ構成は、後にも先にもほかにないのではないか? と思う。

初代カリーナEDを追いかけたペルソナ

 ペルソナ(兄弟車にユーノス300があった)は、1988年11月にマツダから登場したミドルクラスの4ドアハードトップだった。もちろん1985年にトヨタから登場し、一世を風靡した初代カリーナEDを追いかけたモデルのなかの1台だった。

マツダから出た、あのカリーナEDみたいなクルマ」と表現する人がいたのは事実だが、そういうことを想定のうえで、おそらくマツダはこのペルソナの訴求方法にそういう作戦を立てたのだろう。つまり、外観は確かにカリーナED風の4ドアピラードハードトップだったが(全高は1335mmとEDよりも25mm高い)、外観よりも内装にこだわったクルマである、としたのだった。そのことを表現したのが“インテリアイズム”であり、冒頭から12ページも続く内装の写真だったのである。

 今あらためて見ても、相当にこだわりを見せるインテリアだった。とくに後席は“ラウンジ型リヤソファシート”と名付けられ、まさにホテルのロビーか社交場のソファさながら、サイド部分をラウンドさせていかにも身体を斜めにもたせかけられるようなデザイン。

 ヘッドレストは座る場所を特定しないような左右に繋がったデザインだし、アームレストクッションは、確か固定されていない、まさにラウンジのソファに置かれたクッションのような扱い。なかなかのこだわりぶりだった。

助手席に乗る女性への思いやりも込められていた

 もちろんデザインのみならず、クオリティも気を配っていた。カタログの文面から拾うと“ファブリックに対する素材感やカラーリングにおいても、微妙なニュアンスを大切にして、質の高いしっとりとした手触りの本革と繊細なタッチの高級カットニットを選択しました”とある。

 また縫い目のテイストを強調するために手縫い作業の工程を採用し、この方法はシートだけでなくインパネ、ドアトリムにも多用。さらにユニークなのはBピラーをドアトリムで隠し、フロントドアとリヤドアの繋ぎ目のみで連続感を持たせていたり、リヤピラーも天井と同一の布地で包み込むなどし、心地よさへの配慮も行き届く。視界の妨げにならないようリヤドアに前席用シートベルトを内蔵させる方式も開発し、採用していた。

 それと助手席に座った女性がゆったりと足を組めるように(!)グローブボックスが廃止されていたり、マニュキュアを塗った細く長い爪を傷付けないようにスイッチが設計されていたりと、クルマながらそのフェミニストぶりは敬服させられるほど。さらにもうひとつ、灰皿をなくし小物入れとしたのも、確かこのペルソナが最初だったと記憶している。

 最初のカタログではタイプAとタイプBの2グレードで、本革内装が標準だったのがタイプBのほうだった。またタイプA、タイプBともに内装色はグレーかベーシュで、いずれも落ち着きのある色調が選ばれている。本革シートのタイプBのリヤシート背もたれにだけ若干ギャザーをつけてアクセントにしていたが、無粋な柄などを使わない、しっとりとした雰囲気に仕上げられていた。

 一方で外観では、イメージカラーのアコースティックゴールドMCを中心に全5色の設定(ユーノス300はペルソナにはないダークブルーがイメージ色だった)。このゴールドともう1色、シルエットシルバーMCにはメーカーオプションでルーフサイド(ピラー部分)が微妙な同系色で切り返す2トーンも用意されていた。現代風にいうなら何から何までハンパないこだわりようのクルマだった。

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