サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

V12にあらずんばフェラーリにあらず! 日陰者の308はフェラーリのいまを作った重要なモデルだった

V8エンジンの原点となったヒストリーを振り返る

 エンツォ・フェラーリが「(市販車においては)V12でなければフェラーリとは呼ばない」と発言したとのことから、V12エンジンを搭載していないフェラーリは、ある意味“日陰者”の扱いを受けていた感もありました。しかし、今やフェラーリの屋台骨を支えるようになったV8フェラーリ。その原点となるのはV6エンジンを搭載したディーノでしたが、今回はスモールフェラーリ中興の祖となった308を振り返ります。

ディーノからフェラーリに“格上げ”された308

 フェラーリのロードカーに、V6エンジンを搭載したディーノ206が登場したのは1967年のことでした。「将来的には、V12だけでなく(より廉価になる)V6エンジンを搭載したモデルも必要になる」という、エンツォの息子、アルフレード・フェラーリ、愛称“ディーノ”の提案によりプロジェクトがスタート。

 エンジンをF2で使用するにあたりホモロゲーションを受ける必要があり、生産台数を稼ぐためフィアットでエンジンを生産し、フィアットにもエンジンを供給することになりました。ちなみに、フィアットで生産したクルマはフィアット・ディーノ(クーペとスパイダーがありました)と、アルフレードの愛称が車名に使われていました。

 一方エンツォは、あくまでも(ロードゴーイングの)フェラーリはV12だ、という姿勢を崩しませんでしたから、こちらは新たディーノ・ブランドを立ち上げてディーノ206GTを発売しています。206GTそのものは2年間で150台余りが生産されたに過ぎませんでしたが、フィアット・ディーノが生産台数を稼いでF2用エンジンとしてのホモロゲーションを得ると、2Lという排気量やエンジンの徹底的な軽量化にこだわる必要もなくなりました。アルミブロックから鋳鉄ブロックに換え、ボディパネルもアルミの叩き出しからプレス成形のスチール製へと変更。排気量を2.4Lにまで引き上げた246GTが登場したのです。スパイダーのGTSも加えて約4900台が生産されています。

 そんなディーノ206/246の後継モデルとして、1973年にデビューしたのが308GT4でした。12気筒シリーズは、例えば365GTのように1気筒当たりの大体の排気量の数字に、グランツーリスモだったらGTを繋げて車名にするケースが多かったのですが、一連のディーノは排気量を示す2桁の数字、例えば2Lだったら20、2.4Lだったら24に気筒数を表す数字、例えば6気筒だったら6、8気筒だったら8を繋げ、それにGTなどを続けて車名にしていました。

 206GTは2.0Lの6気筒エンジンを搭載したグランツーリスモ(Gran TurismoのGT)、246GTSは2.4Lの6気筒エンジンを搭載したグランツーリスモのスパイダー(SpiderのS)、というわけです。新たに登場した308GT4は、3.0Lの8気筒エンジンを搭載したグランツーリスモの4シーターを表していました。

 もっとも308GT4が4シーターというのは“盛り過ぎ”で、正直なところ2+2に過ぎませんでしたが、緊急避難用の+2シートは、手まわり品を納めるためのラゲッジスペースとして使用できることから有用性が高く、人気を呼ぶことになりました。

 また車名に関して言うなら、それまで206GTや246GTのころからディーノ(あるいはフェラーリ・ディーノ)と呼ばれ、サブブランド的な扱いを受けてきていましたが、308GT4のデビューから3年がたった1976年にはディーノの名が外れ、シンプルにフェラーリ308GT4と呼ばれるようになりました。

308GTBから288GTO! そしてF40などのスペチアーレにも発展

 308GT4が搭載していたエンジンは新開発、というかロードゴーイングのフェラーリとしては初となるV型8気筒で、バンク角はV8として一般的な90度です。カムドライブには静粛性の面で有利になるコッグドベルトを採用。

 ウェットサンプながら2927cc(81.0mmφ×71.0mm)の排気量から255psを絞り出していました。ロードゴーイング・フェラーリの多くはピニンファリナがボディを手掛けていましたが、308GT4はベルトーネに依頼され、当時チーフデザイナーを務めていたマルチェロ・ガンディーニがデザインを手掛けています。

 そのために曲面を多用するピニンファリーナで手掛けられた206GTや246GT、あるいは308GTB/GTSなどとは一線を画した仕上がりとなっていました。

 ただしボディの製作は他のモデルと同様にスカリエッティで行われていました。直接的な先代モデルとなる246GTとはエンジンをミッドシップに横置き搭載するパッケージングは共通していましたが、ボディサイズ(4200mm×1700mm×1115mmから4320mm×1800mm×1210mm)やホイールベース(2340mmから2550mm)、車両重量(1080kgから1300kg)など大きく変わっていました。2シーターから2+2にコンバートしたことを考えれば、それも致し方ないといったところでしょうか

 実際、308GT4に2年遅れてデビューした正統な後継モデル、308GTBでは3サイズが4230mm×1720mm×1120mmでホイールベースは2340mm、車両重量も1090kgに収まっているので、今更308GT4の文句を言うこともないでしょう。

 ディーノあらためフェラーリ308GT4や308GTB/GTSは、V8エンジンをミッドシップに搭載したスモールフェラーリ・シリーズの祖となりました。そしてスモールフェラーリの流れからは、さまざまなモデルが登場しています。なかでも見逃せないのは308GTBをベースにして288GTOが登場し、その288GTOのエボリューションモデルでテストを進めて誕生したのがフェラーリ創立40周記念モデルのF40でした。

 つまりエンツォが「(V12を載せていないから)フェラーリとは呼ばない」としていたスモールフェラーリが、スペチアーレと呼ばれる限定生産モデルへと発展。フェラーリの創立40周年、50周年を記念するモデルとなり、さらにはエンツォの名を冠したフェラーリ・エンツォフェラーリをも生み出すことになりました。草葉の陰でエンツォがどんな顔をしているか、ちょっと意地悪なことを考えてみましたが、意外にも満足気な表情をしているような気がします。

モバイルバージョンを終了