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「とりあえず規定圧」はサーキットじゃ通用しない! タイヤの空気圧調整の効果が想像以上に絶大だった

タイヤ空気圧のイメージ

手軽にできるとはいえ侮れないのが空気圧

 セッティングの初歩であり、最後の仕上げも大事なのはやはり空気圧調整だ。簡単に誰でもイジれる上に費用は不要であり、それでいて最大限の効果がある。サーキットでは1.0kg/cm2から4.0kg/cm2まで幅広いセットがあるのだ。

基本的にはサーキットでも冷えた状態で規定値に

 空気圧の基本は車両ごとの指定値。ドア付近に記された自動車メーカーによる指定値に、タイヤが冷えているとき合わせるのが基本。サーキットでもまずはこれでOKだ。

 ちょっと慣れたら、次にやってみたいのはサーキットでタイヤが温まったときに指定値にすること。指定値が2.2kg/cm2だったとして、サーキットをブンブン走ったら2.7〜2.8kg/cm2になってしまう。空気圧が上がりすぎるとタイヤの潰れが足りず、接地面積が減ってしまう。そこで、あらかじめ空気圧を下げてサーキットにコースインして数周してタイヤが温まってきたときに指定値になるようにする。

プロドライバーはさらに異なる調整方法を実践する

 ところがプロドライバーやプロショップなどのサーキット慣れした人たちは、また異なる調整をする。さきほど説明した接地面積を広げたい関係から、できれば空気圧は下げたい。しかし、下げすぎるとハンドリングがダルくなったり、タイヤが潰れすぎてグリップを失ってしまうことがあるので、そのバランスを考えて調整するのだ。

 具体的にはラジアルタイヤでサーキットを走る場合、タイヤが温まった温間状態での空気圧で1.8~2.2kg/cm2くらいのことが多い。基本的にクルマの指定値よりは低めだ。

 ラジアルタイヤのなかでもとくにハイグリップなものになると、さらに下がり1.6~1.7kg/cm2くらいにすることが多い。Sタイヤと呼ばれるセミレーシングタイヤも同等だ。

ドリフトでは冷間時1.0kg/cm2にセットすることも

 さらに低いのがドリフト競技車両。タイヤが冷えた状態からいきなりドリフトするため、走行直後から少しでも接地面積でグリップを稼ぎたいという狙いから空気圧が極端に低い。最近ではタイヤが冷えている冷間状態で、1.0kg/cm2を下まわるほどの状態でスタート。しかし、あまりの空気圧の低さにタイヤがリムから外れてしまう「リム落ち」が頻発。それがクラッシュに繋がり、空気圧を下げすぎないように指導されるほどなのだ。

 ちなみに10年以上前のドリフト競技では少しでもドリフトしやすく、浅い角度でもグリップして姿勢が「戻って」しまわないよう、10kg/cm2も空気圧を高めていたこともあった。ところが急速にエンジンのハイパワー化が進み、姿勢が「戻り」そうになってもパワーで強引にドリフトを維持できるようになった。

 ならば、少しでもグリップが高いほうが速いドリフトが可能ということで、近年は空気圧が危険なほど下げられているのだ。

初心者はこまめにチェックして最適を探ろう

 サーキットを走る一般ユーザーの場合、ある程度走行に慣れてきたら、少し低めの空気圧からコースインするのが理想的。1.8kg/cm2くらいでコースインして、数周タイヤを温めて、2.0kg/cm2くらいでベストタイムを狙うのが王道。

 空気圧が上がり過ぎたら一旦ピットインして抜くのが基本だ。だが、タイヤが温まりすぎて熱ダレしていては、いくら調整しても多少マシになるだけでベストなグリップは得られない。走行枠ごとに数周タイヤを温めたあと、ベストタイムを狙えるよう空気圧をセットしたい。

雨の日はドライよりもやや低めに

 ウエット路面となると空気圧はまったく異なる。空気圧を上げる場合と下げる場合があるのだ。その判断は雨量による。雨量が少なめならタイヤをより潰してグリップを稼ぐ狙いで、ドライよりもやや空気圧を落として走る。

 しっかりと雨が降っているなら空気圧を高める。接地面積を減らすことでタイヤ表面の面圧(路面に接する圧力)を高め、ハイドロプレーニング現象を防ぐ。タイヤ自体も空気で内側から大きく張ることで、膨張し溝が開いて排水性が良くなる。

 ズバリ、現代のラジアルタイヤで雨量の多いウエット路面のサーキットでのベストは4.0kg/cm2付近であることが多い。ビックリするほど高い数値だが、走ってみるとグリップ力の高さと安定感を感じられるだろう。

 それほどまでに奥深き空気圧の世界。タイヤサイズ、ホイールサイズとの引っ張り具合、車両の前後重量バランス、ホイールアライメントの設定でも最適な空気圧は大きく変わる。空気圧調整は、自分だけの最適値を見つけ出す楽しみに満ちているのだ。

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