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水上も雪上も走れる「スーパーカー」!? 前代未聞の高級スポーツ「ホバークラフト」がこの夏アメリカで発売

立てば自動車、座ればボート、走る姿はホバークラフト

左右の輪っかはタイヤじゃなくて推進プロペラ!

 幼いころ、水陸両用のスーパーカーという夢想を抱いたことがある人は多いだろう。1950年代に実用化された「ホバークラフト」は潜水することこそできないものの、空気を下面に噴出して「浮揚」することで水上でも地上でも進むことができる乗り物。それをアメリカのベンチャー企業がスーパーカーのようなデザインに換骨奪胎し、EV技術と組み合わせて「世界初の高級スポーツ・ホバークラフト」として発売した。

「クールなホバークラフト」への情熱から生まれた

 アメリカ・メリーランド州のベンチャー企業「ヴォン・メルシエ(Von Mercier)」社が開発・販売し、今年の夏から納車予定のホバークラフト「アローサ(Arosa)」。価格は10万ドル(約1300万円)~と高級スポーツカー並みの価格ながら、すでに180人ほどの見込み客を確保していて、年内に50台のアローサを製造する予定とのことだ。

 同社を創立した機械工学エンジニア、マイケル・メルシエ氏は、幼少のころからホバークラフトに惚れこんで自作していたものの、スポーツカーのようなカッコよさとは似ても似つかないことがずっと不満だった。そこで2012年にアローサのコンセプトデザインを作り上げ、翌年からプロトタイプを制作。ようやく2021年に生産モデルの目途が立ち、今年2月に正式発売となった。

最新のEV技術とベクタリング技術

 一般的なホバークラフトはリヤに大きな推進用プロペラが付いているものだが、このアローサでは「フロントタイヤ」のように配置された左右のふたつのファンから取り込んだ空気を後方に噴射する、「サイドスラスト技術」(特許取得)によってスマートでスポーティな姿を手に入れている。さらに左右の推力を制御するベクタリング・コントロール技術によって、スムースで直感的な操縦性を実現しているとのことだ。

 開発途中では、発電用ガソリンエンジン1基と3つの電動モーターで駆動するシリーズハイブリッドだったが、最終的に完全バッテリー駆動のEVとなり、最高出力は118ps。カーボンファイバーのボディで軽量化を徹底し、サイズは全長4.8m×全幅2.4m、車両重量は408kgに抑えられた。

 地面/水面から15cmのエアクッションの上を走行し、巡航速度は50km/h程度ながらトップスピードは80km/h強まで出る。バッテリーの持続時間はフル充電で90分、航続距離は72km程度だという。地上のスーパーカーに比べると遅く思えるかもしれないが、パーソナル・ホバークラフトとしては速度も俊敏性も歴史上トップクラスだとヴォン・メルシエ社は主張している。ちなみにブレーキは付いていないが、フロントの開口部からエアーを逆噴射して減速できるそうだ。

ホバークラフトが走れる場所は?

 コックピットには前後ふたり乗りのタンデムシートとデジタルダッシュボード、クルマと同様のステアリングホイールと2ペダルが配置される。その両脇にはボートのようなサイドデッキがあり、水上の乗り物でもあることをアピールするという趣向だ。

 ただし、アメリカではホバークラフトは船舶扱いとなるため、このアローサも公道を走ることはできない。あくまでも水上と、私有地内で楽しんでくださいということになる。ヴォン・メルシエ社としても、販売ターゲットは大型ヨットのオーナーなど、富裕層を想定している。

 日本でもホバークラフトの公道走行は不可だが、地上の私有地内ならOK、水上は船舶扱いなので該当の免許が必要となる。広大な土地を個人で持っている人はそれほどいないだろうが、リゾート施設のアクティビティとして、このアローサを導入してみたら面白いのではないだろうか。

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