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サイバー感全開でぶっちぎりのカッコ良さ! D-WEBERが手がけたドライビングシミュレーター用コックピットが圧巻の姿だった

新しいドライビングシミュレーター用コックピット「GT EXPERIENCE CONCEPT」

これまでに数々の個性的な作品を手掛けてきた

 さまざまなプロダクトデザインを手掛けるD-WEBER(所在地:愛知県安城市、代表取締役:水野健一)は、ホイールデザインを得意とするクリエイティブ集団である。どちらかというと裏方仕事が多いなかで、これまでにも独自のアイディアでデザイン性の高い商品を自社プロジェクトブランド「4DESIGN by D-W」として創出してきている。

これまで見たことないような斬新なデザインを採用

 美しい宅配ボックス「TOUROU(灯籠・とうろう)」は、DW社の拠点である、愛知県安城市のスチール板加工メーカー(有)シンケンとの提携で発表。

 灯籠が火をともし、迷いし人を優しく導いてくれるように、安心感を与えるシンボルとして制作された。

 また、富山県高岡市の金型製造会社である(株)フジタとのコラボレーション作品「HANAGATA(はながた)」は、チョコレートを流し入れて美しいチョコ菓子を製造するもの。

 自身の得意分野であるホイール鍛造メーカーBBSに製造を依頼し、美しい金型が美しいスイーツを生むという、ジャンルを飛び越えた製品を手掛けた。

 スチールパイプ椅子「Re:birth」は、愛知県安城市で70年続くパイプ加工メーカーのキムラ工業(有)と手を組み制作されたもの。これは、一般的なパイプ椅子のイメージを払拭するということをコンセプトにしており、便利さを追求しない、汎用性を追求しない、万人受けである必要性がないという、斬新なパイプ椅子になっている。

世界的な自動車フォトグラファーからの依頼で製作開始

 そして、今回発表されたのがeスポーツ専用インテリア「GT EXPERIENCE CONCEPT」である。あまり聞き馴染みがないeスポーツ専用インテリアという名称だが、これは近年盛り上がりを見せているeスポーツをより楽しむために作られた、ドライブシミュレータ用コクピットのことである。

 じつは、この製品は世界的な自動車フォトグラファーである、北畠主税氏(下段写真右)からの相談を受けて開発されたものだという。「僕は、プレイステーションでグランツーリスモをやるのが大好きで、これまでも自分なりに専用のシミュレータコクピットを作って楽しんでいました。でも、だいぶ年季が入ったこともあって新しくしたいと思ったときに、水野氏がデザインしたパイプ椅子を見たんです。彼なら独創的なものを作ってくれるんじゃないかと思って、相談したわけです」と北畠さん。

 D-WEBERの水野さんと、北畠カメラマンは、もともとホイール撮影を通じて親交があり、これまでも水野さんの作品を北畠さんに撮影依頼していた間柄であった。北畠さんがこれまで使用していたのは、剛性のあるパイプフレームのコクピットであったため、水野氏がデザインしたパイプ椅子にインスピレーションを受けて依頼することにしたという。直感的に面白そうと感じた水野さんは「ぜひやらせてください!」と即答したという。

SF映画に登場しそうなスタイリッシュなコックピット

 ただ、製品についての打ち合わせを繰り返し行っていくなかで、コストをかければ北畠さんが求める剛性が高くてスタイリッシュなコクピットはできるが非現実的であるということがわかってきた。それならば剛性については後から考えることにして、まずは商品化するということを優先した。「北畠さんが望んでいるのは、彼の持つ世界観を僕のアイデアで解決してほしいということでした。やるからには、誰もが驚くオモシロイものを生み出したい」と思っていろいろと考えた結果、3Dプリンタを使って製造するということに行き着いたのだ。

 純国産の大型3Dプリンタについて書かれた記事を偶然に目にした水野さんは「これだ!」と思い、3Dプリンタの開発元の(株)ExtraBoldを訪ねて制作の交渉を行い、今回のプロジェクトに賛同してもらえることになった。

「3Dプリンタで製品を制作するうえで、いかにも3Dプリンタで作りました、という風にはしたくなかった」という水野さん。積層痕があっても美しく、積層痕があるから価値のあるデザインにしたかったのだという。製法がなにであれ、誰もが驚くブッチギリにカッコいいものということを念頭に置きイメージを膨らませていった。

 ある日、水野さん自身が過去に体験したサーキット走行のスリリングな緊張感と高揚感、神経がクルマと対話するような不思議な体験が頭をよぎり、唐突にアイディアが浮かんだのだ。それが没入できる「空間そのもの」を作ってしまうということだったのだ。

 こうして生まれたアイディアが、心の高ぶりをイコライザーやタコメーター(回転計)を連想させるグラフィックであり、神経伝達と緊張感を立体化した脊髄のような独創的なデザインなのである。

 完成したGT EXPERIENCE CONCEPTを見て、北畠さんは「これはすごい! 僕のイメージどおりのものを具現化してくれた」と感激していた。本来求めていたパイプフレームのものとは違った形になったが、シミュレーターに没入できる空間を生み出してくれたということに大満足といった様子であった。

 なお、GT EXPERIENCE CONCEPTは、自動車関係、レース関係、eスポーツ会場、カーディーラーなどを視野に2022年秋ごろの発売を目指しているという。大型3Dプリンタと原材料、デザインデータがあれば商品を発送することなく、どこでも形にすることができる。プロダクトデザインの未来を垣間見たような気にさせられた。

【問い合わせ】
D-WEBER http://www.d-weber-inc.jp/

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