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新品にしたらぶっ壊れることもある気難しい油! オートマオイル交換は高難易度だった

ATFの交換作業

推奨サイクルが異なるから難しい
ATF交換の正しいタイミングとは

 トヨタ・スープラや日産フェアレディZにマニュアル・トランスミッション(以下、MT)が登場したことで、MT好きは大盛り上がりの昨今だが、現状は日本の道路を走っているクルマのほとんどがオートマチック・トランスミッション(以下、AT)である。MT車乗りであれば、エンジンオイルはもちろんのこと、MTオイルやデフオイルは定期交換していると思うが、ATの場合はどうしたらよいのか? という問題がある。そこでトルクコンバーター式AT(以下:トルコンAT)のATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)交換は何が正解なのかを考えたい。

ATFは基本的に減らないので交換時期がイマイチ分かりにくい

 ATFはMTオイルと同様に、エンジンオイルのように燃焼してしまい量が減るようなことは基本的にはない。それゆえに無交換が推奨されていた時期もあるほどで、劣化の有無を確認することが難しい。というのもATはMTに比べて構造が複雑で、不慣れな交換作業によってトラブルを招く可能性があると言われている。また、ATFはオイル劣化の判断が難しい。ATFに限った話ではないが、油脂類の劣化は毎日少しずつ進行するため、ドライバーが運転中に劣化を感じとることが非常に難しい。

「エンジンオイルも同じでしょ!」と思われるかもしれないが、大前提としてエンジンオイルは定期的なメンテナンスを考慮して、エンジンルームの分かりやすい場所にレベルゲージが備わり、規定量を満たしているかやオイルの汚れ(劣化)を、DIYで誰でもすぐに確認することができる。加えてカー用品店やガソリンスタンドでオイル交換を勧められることが多いため、エンジンオイル=交換するものという認識は浸透している。

メンテナンスサイクルの長さがATF交換を難しくさせている

 対してATFはどうなのかと言うとこれが非常に判断が難しい。厳密にはATFも劣化によって変速時のシフトショックが大きくなったり、燃費が悪化することもあるので劣化の進行をドライブフィールで判断することは可能だ。とは言えエンジンオイルのように3000〜5000キロ、または3〜5カ月などというわかりやすい目安はなく、さらに自動車メーカーによって推奨する交換時期の目安がマチマチ。それがさらに判断を難しくさせている。とはいえエンジンオイルのように頻繁に交換するものではなくても、10万キロを目安にしている自動車メーカーもあり、頻繁に交換するものではないことを知っておきたい。

メーカー推奨の交換時期が基本的な目安と考える

 また昔は、ATFのレベルゲージを備えるクルマも多く、ATFの残量を確認することができた。ただし、最近のクルマのなかにはレベルゲージを持たないクルマや、ATの複雑な機構によってDIY交換するのが難しいことからエンジンルームの下側などの見えない場所にレベルゲージが備わることもあり、素人がATF残量を確認することは非常に難しい。そのため交換の判断基準はATの変速ショックの変化や、ギクシャクし始めたなどの不調を確信した場合や自動車メーカーの推奨時期に従うのが基本となる。

ショップによってマチマチな対応がATF交換の難しさを物語る

 MTとは異なり、ATFの流れるオイル経路は非常に複雑であり、人体の毛細血管のようなところを流れているため、ATFを新品に交換することで金属粉や塵などの汚れがオイル流路を詰まらせてしまい、AT本体を壊してしまうリクスもある。ちなみに昨今の日本車ではトヨタが10万キロ、日産は4万キロで、ホンダが8万キロを目安に交換することを推奨しており、ディーラーで交換を勧められない限りはまだ交換しなくても良いと判断することができる。

 筆者の経験(輸入車)では、8万キロを超えたところで馴染みのショップから『うちは循環でできますから、やりましょう』と言われて交換したことがある。費用はATF代と工賃を合わせて4万円程度だったが、別の輸入車のメーカーの専門店では『やれと言われればやりますけれど、効果は感じられないと思いますよ』と無交換を推奨された経験もある。この2店舗は異なるメーカーの異なる専門店であったが対応は違った。

 ちなみにそれぞれショップの言う通りにして、その後数万キロ以上無交換で乗り続けてきたが、いずれもまったく問題はなかった。このように輸入車専門店でもショップによって対応が異なったのは、技術力(交換機材を含めた)の差やクルマの性能に見合ったATFの在庫がなかったのかもしれないが、ATFの交換は費用対効果はもちろん交換後のリスクも考えて行いたい。

10万キロを超えるような過走行車はあえて交換しないのも手だ

 とくに注意したいのが10万キロを超えた過走行車の場合は、しっかりとした技術力と設備が整ったショップにお願いすることがマストと言える。先に述べたように過走行車のATF交換はリスクをともなうため、作業を断るディーラーやショップもあるほど。よほど大きなシフトショックが出ていたり、燃費が極端に悪化しているような状況でなければ、あえて交換しないという選択肢も間違いじゃない。

 また、交換方法には大量のATFを圧力をかけながら循環させて内部を洗浄しながら交換する場合と、数回に分けて交換する方法があり、いずれも安くない費用がかかるものなので、愛車をあと何年何万キロ乗り続けるのかも考慮したうえで判断したい。

 ATF交換の結論は、ディーラーで交換すべきと言われたら交換。なんとなく交換した方が良いのではないかと思ったら熟考して検討する。そして各メーカーが使うATに合わせて使用するATFが異なるため、メーカー純正品、または指定品を入れることがベストと言えるだろう。これはATが多くの仕事を担っているからで、動力の伝達/シフトの制御/部品の潤滑/冷却/洗浄とその仕事は多岐に渡る。そのためメーカー指定品に交換して初めて意味があると言えるだろう。

 これはCVTも同様で車種によって機構が異なることから、こちらもディーラーの判断に従うべきだ。環境面を考えて交換部品を減らそうと各メーカーがしのぎを削る昨今。交換部品も進化している訳だから、メーカーの指示に従うのが基本的には正解だ。そしてATFの交換はプロの判断を仰いだ上での交換が望ましいと言える。

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