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超極悪燃費のリッター750mってマジか! ランボルギーニの元祖市販SUV「LM002」

カウンタックのエンジンを搭載したSUV

 ハイパフォーマンスSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)のランボルギーニ ウルスが登場したことにより、ここ最近、ふたたび注目されているのが「ランボルギーニ LM002」だ。LM002が走っていたり、駐車しているのを見て、あっ、チータだ! と呼ぶ人も多いので、あらためてランボルギーニ製オフロードモデルのヒストリーを紹介することにしよう。

 スーパーカーブーム全盛時に少年だったオジサンたちにとって、ランボルギーニ チータといえばタミヤのラジコンだ。タミヤ初のサスペンション付き電動RCオフロードカーとして1977年に発売されたのはXR311 コンバットバギーだったが、同じタイミングに併売されていたのが、電動RCオフロードカーのランボルギーニ チータだった。どちらを買おうか迷ったという方も多いと思うが、筆者は結局、電動RCバギーのバギーチャンプを買ってしまったことを告白しておく(ランボルギーニ・ファンの皆さま、ごめんなさい)。

 ランボルギーニ チータは、カリフォルニアのMTI(モビリティ・テクノロジー・インターナショナル)社からの依頼によってランボルギーニが製作した、アメリカ陸軍向け高機動車のプロトタイプ。クライスラー製のV型8気筒エンジンを積んだミッドシップ・オフローダーだ。

 アメリカ軍向けにAMゼネラル社が製造し、1985年から量産が開始されたHMMWV(ハンヴィー)にプロポーションが似ているが、結局、他社との競合で負けてしまい、チータが正式採用されることはなかった。チータは1台のみが製作され、陸軍納入プロジェクトはここで終わってしまったのである。

チータをベースに民間用オフローダーを生産しようとしたが……

 極めて大きなビジネスチャンスだったといえる陸軍納入プロジェクトをゲットできず、当時の経営陣が相当ガッカリしたであろうことは想像に難くないが、ウレシイことにランボルギーニがあきらめることはなかった。なんとチータをベースとし、民間用のオフローダーを生産しようと計画したのだ。

 まず、1981年にAMC(アメリカン・モーターズ)製の排気量5.9リッター/V型8気筒エンジンをミッドシップの位置に搭載したLM001を製作。1982年にはランボルギーニ製の排気量4リッター/V型12気筒エンジンを、やはりミッドシップの位置に搭載したLMAを発表した。しかし、この2台が市販されることはなかった。

206km/hというトップスピードをマークしたモンスターSUV

 ランボルギーニが最終的に量産することに成功したオフローダーは、1981年に発表されたLM001をベースとした「LM002」だった。

 1986年に市販されたこのクルマに搭載されていたのは、カウンタックQV用の排気量5167cc/V型12気筒エンジンであった。

 LM002の車体は鋼管スペースフレームを基本構造体とし、そこにFRP製ボディパネルやアルミニウム製ドアを組み合わせたもので、車両重量は2.7トンに達していた。スゴイ重さだが、カウンタックQV用エンジンの最高出力が450psもあったので、リッター750m程度という劣悪な燃費を気にすることなくアクセルを踏み続ければ、206km/hというトップスピードをマークできたといわれている。

 SUV界のスーパーカーとしてリリースされたLM002には、パリ・ダカール・ラリーへの参戦を目指して製作されたラリー専用マシンも存在しており、そのモデルを題材としたチョロQもラインアップされている。

発進すら難しかったLM002

 ウルフ・カウンタックことランボルギーニ カウンタック LP500S ウルフ・スペシャル ♯1と、1988年式の5000QVをベースとし、細部に至るまで徹底チューニングした『イオタ』と呼んでいいスペックの白いカウンタックを愛用しているスペシャルショップ「アウトモビーリ ヴェローチェ」の岡戸栄一代表は、以前、LM002も所有していた。

「自分が所有していたのは最終型で、最高出力492psを誇るディアブロ・エンジン仕様のLM002 アメリカーナだったのですが、クラッチペダルを踏み込むとシートの上でお尻が後ろへズルっと動いてしまうほど重たかったですね。カウンタックもそれなりにクラッチが重いのですが、それとは比較にならないほどの重さでしたよ」とは、岡戸さんのコメント。とにかくクラッチペダルが重いので、平地ですら発進をするのが大変だったそうだ。

 筆者もランボルギーニ LM002のクラッチペダルを踏んだことがあるが、蹴り倒すぐらいの勢いで踏んで7mmぐらいしか動かすことができなかった……。

 ちなみに、LM(ランボルギーニ・ミリタリアの意)シリーズにはLM002の後継プロトタイプとして、フォルクスワーゲン製の排気量3590cc/ターボチャージド・ディーゼル・エンジンを搭載するLM003と、マリーニ・ランボルギーニ製パワーボート・オフショアクラス用のL804型V型12気筒エンジンを搭載したLM004が存在している。しかし、それらが製品化されることはなかった。

 ランボルギーニ製ハイパフォーマンスSUVのDNAはLM002からウルスへと受け継がれたといえるので、いろいろ説明してしまったが、友人にウンチクを傾ける際は、チータ、LM002、ウルスのスペックを語れば十分であろう。

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