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マシマシの全部乗せではダメ! クルマのドレスアップ上級者は「引き算」上手だった

30アルファードのドレスアップスタイル

評価基準がないからこそ難しいクルマのドレスアップカスタム

 クルマのカスタムでもっとも定番のメニューはドレスアップだ。ドレスアップの概念は何だと言われたら難しいのだが、つまりはエアロパーツを付けて車高を落とし、インチアップしたホイールを履けばドレスアップカーは基本的に完成する。また、サーキットを走るようなチューニングのカスタムは、基本的にベース車両から運動性能の高さが求められるので、おのずと車種はスポーティなモデルとなる。対して、ドレスアップはジャンルレスで人気車種のラグジュアリーミニバンから軽自動車まで車種を問わない。

 そのためモデリスタをはじめとした自動車メーカー直系ブランドのエアロの装着から、他車のバンパーを流用するなどワンオフ加工によって個性を際立たせるなど、ドレスアップの手法はさまざまである。

ひとつ言えるとすれば装着パーツの数とカッコ良さは比例しない

 ちなみにクルマのチューニングで優劣を競うのであれば、サーキットならラップタイムがすべて。だが、ドレスアップの優劣を決める場合は、手数の多さやコーディネートのセンスといった審査員による客観的な評価によって決定されることになる。そのため審査する人の好き嫌いもあれば、イベント参加者の人気投票によって決まることもあり、鼻息荒く意気込んだ自分のクルマが一番だと思っていても、アワード受賞が叶わなかったという人も多いはずだ。

 そしてここからが本題。筆者は長らくドレスアップ系のカスタマイズを取り扱う雑誌に携わっていたが、数百〜数千台以上のドレスアップカーを取材してきた経験を元に言えるのは、手数(=装着パーツの数)も必要だが、それがすべてではないということ。

愛車の特徴をプレゼンできるコーディネート術を見つけることが大切

 取材のためにイベント会場を歩いていると、アワードを受賞するようなクルマは極端な言い方をすればオーラを放っていることが多い。そうしたクルマの多くは、イベントで表彰されるためにエントリーしており、お金のかけ方も尋常じゃない。例えば、エアサスやハイドロサスで着地したような車高であったり、ボディもラッピングやオールペンで異彩を放ち、とにかく遠くからひと目で目を惹くクルマである。

 ただし、オーナーさんに話を聞いてみると、意外にも装着パーツの数だけならそれほど多くなかったりする。反対に見るからにパーツがたくさん付いてるものの、失礼な話、見た瞬間に「うわっ……」と思わず声を漏らしてしまうようなクルマも見かける。そうしたドレスアップカーの特徴は、全身ダクトだらけだったり、塗り分け塗装の色の数が多かったり、そこへLEDカスタムまで取り入れてしまい、すべてにおいて全力投球し過ぎているのだ。

『このクルマで一番魅せたいところはどこですか?』と聞けば、「う〜ん……全部です」との返答。もちろん、ドレスアップは自己満足なので他人にとやかく言われるものではない。だが、それでもアワード目指して参加したのであれば、やっぱりコーディネート術を身に付けてほしいというのが正直なところだ。

魅せたいポイントが明確で引き算ができるドレスアップこそカッコいい

 翌年に行われた同じイベントで再会したそのクルマは見事なまでに路線変更していて、ゴテゴテだった内外装はすっきりとシンプルなものになっていた。それでもイベントへ遊びに来た多くの来場者に愛車を囲まれていたほどで、エアロもシンプルでダクトもワンポイントで投入する程度。さらにボディカラーを引き立てるホイールの色味や、攻めに攻めたツライチ具合が感動もので、1年ぶりに話を聞いてみると自信たっぷりに「仲間たちからいろんなアドバイスをもらいながら、エアサスと20インチの深リムホイールにこだわりました」と嬉しそうに語ってくれた。

※写真はイメージです

 つまり1年前の彼の愛車は、手数を稼ぐべくパーツを足し算し続けた結果、後戻りの仕方も分からなくなるほど欲しいパーツをそのまま装着したことが失敗であった。しかし、仲間のアドバイスで引き算することを覚えたおかげで、1年後のそのイベントでは見事に優秀賞をゲットしていた。

 また、これまでのイベントをはじめとした数々のユーザーカーを取材したなかで個人的に格好いいと思ったクルマの1台が、スバルのVAB型WRX STIをベースに究極のシンプルさを追求したクルマだった。人によっては「えっ、これが!?」と思う人もいるかもしれないが、基本的に装着しているパーツはフロントアンダースポイラー/サイドアンダースポイラー/リヤアンダースポイラーの3点に、サーキットアタック用としてハイマウントしたGTウイングとクーリングを考慮したダクト付きボンネットがレーシーさを演出。

 もちろん車高調によって乗り味をスポイルしないギリギリを攻めたローダウンフォルムは、シンプルながらもまさに機能美という褒め言葉が似合うものであった。

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