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かつて高性能車の証だった「ダブルウイッシュボーン」! スポーツカー小僧の心をときめかせたサスペンションの過去と未来

初代NSXのダブルウイッシュボーン

かつては上級車向けのイメージが強かったダブルウイッシュボーン

 クルマのサスペンション方式はいろいろと種類があって、性能やコスト、構造的なメリットやデメリットがある。それぞれを考慮して、採用されるというのが基本だ。「マクファーソンストラット」が一番お馴染みで、実用車からスポーツカーまで広く使用されている。ただ、高級というか上級という点でいうと、「ダブルウイッシュボーン」となるのは、クルマ好きなら皆さん持っている感覚だろう。

高剛性としなやかな動きが特徴のサスペンション形式

 そもそもダブルウイッシュボーンとはどういった特徴があるのかというと、アルファベットの「A」の形をしたアームが上下にふたつあるからダブルとなり、Aアームの形が鳥の叉骨(さこつ)=「ウイッシュボーン」に似ているからこの名称となっている。ちなみにシングルのウイッシュボーンサスというのもあるが、結局はアームがひとつのストラット式となる。

 いわゆる独立懸架式になって、特徴はまずボディ、ハブの上下で締結されているため、剛性が高いということがある。また性能的にはコーナーなど、ロールしたときの路面への追従性がよく、段差などの入力に対しても、しなやかにいなすことができる。ただ、これはダブルウイッシュボーンだから必ずそうなるというわけではなく、アッパーアームを短く、ロアアームを長くしない(不平行不等長)とダメ。同じ(平行等長)にするとキャンバー変化が大きくなって、追従性などは逆に悪くなってしまう。

 このようにコーナリング性能を高められるため、スポーツカーやレーシングカーによく採用されるサスペンション形式というイメージがあるわけだ。デメリットとしては、構造が複雑になって構成部品も増えるので、コストがかかることと、上下にAアームが付くので、スペースを取ること。また、重量がかさむというのもある。

「2000GT」や「NSX」といったスポーツカーを象徴する単語

 このように上級サスの代表格といったイメージのダブルウイッシュボーン。採用はけっこう古くて、戦後まもなくに登場したトヨペットSA型のフロントに採用されたのが日本車で最初とされている。ただ、その後はスポーツカー、スポーツモデルの代名詞として多くのクルマに採用されている。

 たとえば1960年代ではトヨタ20000GTが採用しているし、1980年代になると数え切れないほどだ。また、大きな上下アームを装備するという欠点を克服すべく、アームの数を増やしつつ、それぞれは小型化することでスペースの問題を克服した「マルチリンク」は、ダブルウイッシュボーンの進化型とも言えるだろう。ちなみにダブルウイッシュボーンはトヨタ、ホンダが好み、マルチリンクは日産が好むといったイメージがある。

 ホンダの場合、ダブルウイッシュボーンでもユニークなスタイルを実用化している。ダブルウイッシュボーンはスペースが必要ということは紹介したが、FFの前輪ではこの点で厳しい。1982年のプレリュードでは、アッパーアームの形状を工夫することで省スペース化に成功して、世界初で市販化している。さらに世界初でFFで前後ともダブルウイッシュボーン化したのが1985年に登場したアコードだ。またNSXではアルミ製のダブルウイッシュボーンを採用している。

いまも進化し最新ミニバンでも活かされている

 さらに最近のモデルで注目なのがアルファードだ。先代までは後席の乗り心地に難ありとされていたのを解消すべくダブルウイッシュボーンを採用しているのだが、スペースに余裕がない後輪に対応するため、異型の細長くて平らなアームとしている。一見すると、まったくダブルウイッシュボーンには思えないのだが、上下にA型に近いアームがあったり、キャンバーも含めた動きからすると、形式的にはダブルウイッシュボーンにほかならない。

 解析技術が進んだことも背景にあって、単純な形のダブルウイッシュボーン以外にもこのような異型がこれからも出てくる可能性はあるだろう。電気自動車の時代になってもサスペンションはなくならないだけに、なおさらだ。

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