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優雅だがシビアという謎の競技! 若手編集部員が旧車のアルファロメオで「クラシックカーラリー」に参加してみた

クラシックカーラリーは頭を使うモータースポーツだった!

「クラシックジャパンラリー2022 横浜 Y163」が去る5月20日(金)~22日(日)に開催された。ブガッティをはじめとする戦前車が7台も参加し、ギャラリーや沿道で応援してくれた人々の目を愉しませた。

 今回は、筆者の愛機である1974年式アルファロメオ GT1600ジュニア(以下:水色号)のコ・ドライバーとして、Auto Messe Web編集部の若手である米澤(ラリー経歴:3回)を抜擢し参戦してきた。その取材レポートをお届けする。

いかに決められた時間通り正確にクルマを走らせられるかを競う

 クラシックカーラリーと聞いても「ピン」と来る人は少なく、一見するとパレードランのように見えてしまうが、じつはそうではない。競技ルールは至ってシンプルだ。コ・ドライバーに託したルートマップ(コマ図)をたよりに指定された道を走り、スタンプポイントとPC競技会場を巡る、というもの。詳しく説明すると、こういうことだ。

 ルート上には、決められた区間を設定された時間でいかに正確に走行することができるかを競う、PC(Prove Cronometrate:イタリア語でタイムトライアルの意)競技が用意されている。計測は路面に設置されたスタートラインを前輪が通過した瞬間に行われ、コ・ドライバーは秒数をカウントしながらゴールラインを目指すというもの。

 この説明だけだと、簡単そう! と思うかもしれないが、もう少し細かく説明をすると、その難しさが分かる。例えば30mを7秒で通過するという指示が出た場合、コ・ドライバーはフロントタイヤが線を踏んだ瞬間からカウントを始める。あらかじめタイヤの先端の位置を「見通し」と呼ばれる突起物でマーキング(ドアの外側に目印を付ける)し、助手席の窓からコ・ドライバーが顔を出して目視で確認するアナログなやり方で進められる。

 少しでも頭が動くだけで、マーキングの位置が変わるため、ブレないようにする工夫も必要だ。また、ドライバーは残りの秒数と距離を意識しながら、アクセルとブレーキでスピードをコントロールしながらゴール線を踏まないといけない

 つまり、早くゴールした人が勝ちというわけではなく、あくまでも指定された時間通りに、いかに正確にクルマを操れるか、ということを競っている。つねに冷静さが求められる頭脳戦である点が魅力だ。ちなみに、PC競技では、誤差0秒で1000点、誤差0.01秒で980点が与えられ、誤差1.01秒以上だと0点となる。

競技を楽しみながら冒険旅行の要素も含まれるイベント

 今回のラリーでは神奈川県と静岡県が走行コースとして設定されたが、昨年の秋に実施された同主催者による「クラシックジャパンラリー2021 門司-神戸」では、門司~別府~大分~愛媛~道後~瀬戸内しまなみ海道~高知~桂浜~徳島~神戸という壮大なルートを全43台が走破。

 水色号は東京から大阪まで自走し、南港発のフェリーで九州に入り、ゴール後に神戸からふたたび自走で戻ってきた。ラリー中に1200kmほど走り、関西までの往復で1000kmほど走行。総走行距離が長いクラシックカーラリーは、冒険旅行の要素も強いといえる。

 今年の「クラシックジャパンラリー2022 横浜 Y163」は、水色号を含む全59台が出走した。総走行距離こそ短かったが、ルートマップ上のコマ図を見つつ、ドライバーとコ・ドライバーが協力しながらPC競技の会場とスタンプポイントを巡っていく。やはり、頭を使うモータースポーツであり、冒険旅行の要素も愉しめるイベントであった。

 初日は、まず山下ふ頭で受付を済ませ、同地にて練習会を実施。ここでドライバーズミーティングが行われ、ゼッケン順に横浜元町ショッピングストリートに移動した。元町にて車両展示イベントとスタートセレモニーがあり、1号車から20秒ごとに出発。PC1~3/PC4~10の会場として設定された大磯プリンスホテルの大駐車場を目指す。この日はPC後に向かった箱根のホテルがゴール地点となった。

 2日目はホテルを出発し、彫刻の森美術館の駐車スペースにゼッケン順に整列。1号車から20秒ごとにスタートし、スタンプポイントとして設定された道の駅 天城越え(静岡県伊豆市)、重要文化財 岩科学校(静岡県松崎町)、ランチ会場の内浦漁港(静岡県沼津市)を目指す。

 沼津市南部浄化センターでPC11~17、仙石原浄水センターでPC18~24/PC25~27をこなした各車は、スタンプポイントで2日目のゴール地点でもあった彫刻の森美術館に向かった。施設の見学後、ゼッケン順に箱根のホテルに移動し、参加者もクルマもPC競技および冒険旅行の疲れを癒した。

 3日目はホテルを出発し、関東学院大学 国際研究研修センター(神奈川県小田原市)に集合。同施設内の上り坂がPC競技の会場として設定されたので、非常に難しいPC28~34にチャレンジした。次のスタンプポイント/PC競技会場である江の島でPC35~40を実施しつつ、最後のスタンプをもらい、ゴール地点である横浜元町ショッピングストリートを目指していく。

 横浜元町ショッピングストリートでは、ふたたび車両展示イベントがあり、ゴールセレモニー後にヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルで表彰式があった。

 水色号チームは計測機器のトラブルが発生し、好成績を遺せなかったが、最終日はドライバーとコ・ドライバーの息がぴったりだったので、PC28~34とPC35~40は誤差0.2以内でこなすことができた。

 参考までに記しておくと、1926年式のブガッティ T35Aを駆り、見事優勝した竹元京人さん/竹元淳子さんペアが獲得した点数は43443.75で、水色号チームは25985.00であった。総合成績には、1945年までの車両:1.25、1946年~1957年までの車両:1.15、1958年以降の車両:1.0という年式係数が反映されることもお伝えしておく。

 クラシックジャパンラリーの次戦は2022年11月24日(木)~27日(日)までの4日間にわたって九州で開催される「クラシックジャパンラリー2022 門司」なので、そこでリベンジできればと思っている。

コ・ドライバー米澤の参戦記

 3回目の参加となるクラシックカーラリー。最後に参加したのが2021年11月に参加した「COPPA DI TOKYO」以来となるので、半年ぶりとなる。不安要素満載のなか参加車両を見て歩くと、ブガッティT35(第1回と第2回のモナコGPで連続優勝)や大好きなチシタリア コロンボ バルケッタ、マツダ・コスモスポーツにナローポルシェ……と、憧れのクルマが勢揃い。ニヤニヤがとまらない。

 興奮が冷めきらないまま水色号に乗り込み、沿道の声援に手を振りながらスタート。いよいよ、3日間という冒険の始まり! さぁ、とコマ図を手に取り……早速読み間違える。

 20mは0.02kmとされ、200mは0.20km、2kmは、2.00kmと書かれている。少しややこしい。無事に大磯まではたどり着いたものの不安でしかなかった。

 初日のPC競技は10本! 慌てて秒数を入れたため、10本入れたはずが9本しか登録されていなく、しばし車内が凍りつく。それでも高桑さんが「これも競技だから、これから挽回すればだいじょうぶだいじょうぶ」と、一生懸命フォローをしてくれたが、クルマ好き同士でさえ重い空気になってしまうのだから、もしも夫婦で参加していたら、次の日は無口だったかもしれない。

 もうこんなことは懲り懲り! と思い、2日目に挑む……が、ふたたびトラブル。PC競技中に今度は液晶が壊れてしまい、「ハチ、ナナ、ロク(カウントダウン中)…おぉ〜読めない!!」と言っている間にPC18~24の競技が終わってしまった。

 液晶が仕事を放棄し、途中で文字が読めなくなってしまった。下記写真は7秒からスタートするように設定したが、どうみても11秒から始まるように見える……。

 そこで、財布に入っていたレシートを取り出し、PC25~27タイムを記入。機械から流れてくるメトロノームを頼りにカウントし、感覚を取り戻してきた。

 3日目も同様の方法で誤差0.2秒以内まで縮めることができ、楽しくなってきたところで、ラリーが終わってしまった。これまでは、見る側にいた私がコ・ドライバーとして参加する側となり、なるべく多くの声援に応えたいと思い、見かけたギャラリーには手を振るように心がけた。ギャラリーとの距離が近い、温かみのあるイベントと、あらためて感じた。

 競技中はなんともいえない緊張感が味わえる。もしも、線を踏むタイミングがズレたら……という不安を抱えながら、ラリーコンピューター(タイム計)に表示された、おおまかな誤差が小さければ、思わずドライバーとハイタッチをしたくなるほど嬉しくなる。この一体感こそ、クラシックカーラリーのおもしろさだと感じた。次戦は九州で開催が予定されている。今回の失敗をリベンジするために、参加したいのですが、編集長いいですか?

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