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カタログの中で物語を展開! ダイハツ・コペンが欲しくなる企画力に敬礼

ダイハツ初の本格オープン・スポーツカーだった

 わりと最近になって、筆者のご近所サンで初代コペンに乗り始めた人がいる。オーナーはもうベテランの域に達した世代、犬の散歩でご自宅の前を通りがかると、洗車をしていたり、リヤスポイラーの塗装をし直してご自分で取り付けていたりと、いずれにしろ楽しげにコペンに接しておられ、ときどきご夫婦で、オープンにして出かけられたりしている。

 駐車スペースにはもう1台、ファーストカーのミニバンがあり、ずっと乗ってこられて、こちらも最近新しいクルマに入れ替えたようだが、姿を見かけて洗車の邪魔にならないように伺うと「走らせて楽しいクルマに乗りたくなりまして」と、コペンを選んだ理由を話してくださった。

カタログはストーリー仕立てになっていた

 ダイハツから初代コペンが登場したのは2002年のことだった。個性派軽自動車というと、オートザムAZ-1(1989年)、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ(どちらも1991年)があったが、初代コペンはそれらよりもずっとあとに登場。またダイハツの軽のオープンというとリーザ・スパイダー(1993年に生産終了)や、もっと遡ればコンパーノ・スパイダー(1965年)があったが、ダイハツ自身が“軽オープン・スポーツカー”と名乗る2シーター、本格オープン・スポーツカーとしては初。

 とはいえ当時“We do Compact.”をスローガンに掲げて軽自動車を中心にコンパクトカーへこだわるダイハツだけに、誰もが愉しめることを念頭に、登場時のカタログにも“技術・品質・創意で、小さなカラダにあふれるほどのワンダーを。「ワンダフルスモール」、それは私たちの改めての決意をしめす言葉の旗。そしていま、その旗をなびかせる風となり、一台のクルマが颯爽と駆けだします。”と、さらりとコミットメントが記されていた。

 写真のカタログは2003年7月のもので、表紙にはグッドデザイン金賞受賞、日本カー・オブ・ザ・イヤー10ベストカー選定などと印刷されている。ページを開くと空をバックにコペンのサイド、前後の姿があり、さらに続くページではカップルが登場。

 まず彼女がステアリングを握っての走行シーンがあり、次に彼へドライバー交代し、海辺の目的地へ。さらにページが変わると、今度は“日常と非日常が、スイッチひとつで切り替わる。軽自動車初の電動開閉式ハードトップ。”のコピーがありシーンは街中へ。さらに次のページでは、自宅のガレージの扉が開こうとしている手前で、コペンのトランクから買い物袋を降ろしている彼女の姿。そこにあるコピーは、“いつもあなたのそばにあるスポーツカーをカタチに”。……という風にカタログの前半はストーリー仕立てのシーンが続き、コペンがある生活スタイルの楽しさ、ステキさを伝えているというわけだ。

約20秒で開閉が可能だったアクティブトップ

 ところで実車で何といっても最大の特徴は“アクティブトップ”だ。NAロードスターと同じルーフロック2箇所を手で外し、(イグニッションオン・駐車ブレーキを引いた状態、トランク内のパーティションが使用状態であれば)スイッチをオンにすると、約20秒で油圧ポンプにより開閉作業が完了。ルーフはアルミ製で、同時に駆動する4つのモーターでサイド&クォーターウインドウガラスも作動し、さらに12個のセンサーが各部の作動状況を検知する機構も備えるという、凝った作りでもあった。

 サンバイザーは風除けの役割も果たす、ともある。またルーフクローズ時であれば、リヤのトランクルームはゴルフバッグ1個が収納可能という、にわかには信じがたい実力も秘めていて、トランクリッドを閉める際には、軽く押せばロックされるイージークローザー機能も備わっていた。内外の上級車ならともかく、軽自動車のコペンでこれだけの機能が標準で与えられた、まさしく驚くべきクルマなのだった。

 なお、あまり知られていないというか、ほとんど話題に上らなかった気もするが、コペンにはアクティブトップのほかに、ディタッチャブルトップ仕様の用意もあった。こちらはその名のとおり、人の手でトップを脱着する仕組みで、電動ルーフの作動メカとの差分で、車重は30kg軽い仕上がりとなっていた。

 エンジンは、ツインカム16バルブEFIターボ(64ps/110N・m)を搭載。これに専用クロスレシオ、ショートシフトストロークの5速MTと、4→3→2速の連続変速にも応答するというスーパーアクティブシフト付き電子制御式4速ATを設定。両車は共通の価格設定で用意された。サスペンションではメーカーオプション(ディタッチャブルトップには標準)のスポーツパックが用意され、このリヤには別体タンク付き分離加圧ダンパーが装着されていた。

 カタログのページを捲っていくと、“エキスパートセンター”の紹介も出てくる。これはコペンのために新造されたという専用ファクトリーで、コペンは、通常の量産ラインでは不可能な工程について、ここで高技能者の手作業により実施され生み出されているという内容だ。量産車とはひと味もふた味も違う、造りも製造工程も凝っていたクルマがコペンだったのだ。

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