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便乗値上げで高騰する前に買うのが吉! 一度は味わっておきたい輸入旧車4選

比較的狙いやすいイタフラをピックアップ!

 空前の旧車ブームもピークを越えたような気がするが、相変わらずクラシックカーの流通価格が総じて高値で推移している。

 しかし、なかには便乗値上げ的なもので価格が少し高くなったものの、驚くほど高騰せず、比較的買いやすいプライスを掲げたままのクルマも存在している。今後それらが再注目されて値上がりしてしまう可能性があるといっていい。もしかしたら、いまが底値かもしれないので、もっと安くなるのを待つことなく買っておいたほうがいいクルマたちのヒストリーと一例を紹介しておこう。

ルノー4

 まず紹介するのは、ルノー 4だ。ルノー初のフロントエンジン/フロントドライブ車である「4」は、ルノーの戦後復興の礎となった4CVの市場を受け継いだ貨客兼用大衆車である。1961年に開催されたフランクフルト・モーターショーとパリ・オートショーにおいて、3(R3/トロア)、4(R4/カトル/キャトル)、4L(R4L/カトレール/キャトレール)の3タイプが同時に発表され、同年10月にフルゴネット版(F4)が追加設定された。フランスでは「4L」がもっとも一般的な仕様だったこともあり、“カトレール/キャトレール”という呼び名がその後のルノー 4を表すメジャーな通称となっている。

 多大なる影響を受けたシトロエン2CVよりも少し安価で、エンジンの排気量が603cc(4/4Lは747cc)だった廉価版のトロアは1963年に生産終了となった。1961年にデビューした新型の貨客兼用大衆車は、その姿を変えることなく1992年まで生産され続け、813万5424台もデリバリーされた。これは累計生産台数世界第3位という大記録である。

 生産数が多いこともあってか、まだまだたくさんの台数が流通しており、ユーズドカーは軍資金が100万円ほどあればゲットすることができる。とはいえ、需要量よりも供給量が少ないとクルマが足りなくなって市場価格が上がるので、そうなる前に購入しておくべきだ。

アウトビアンキA112アバルト

 続いて紹介するのはアウトビアンキ A112 アバルトだ。最初期モデルが1969年にデビューしたアウトビアンキ A112は、プリムラに続く前輪駆動車で、フロントに横置きで搭載された水冷直列4気筒OHVエンジンの排気量は903ccだった。

 高性能バージョンのA112 アバルトが登場したのは1971年のことで、エンジンの排気量が982ccまでアップされ、最高出力58psを発生。トランスミッションは4速MTで、足まわりなどが強化されている。また、A112 アバルトは、ボディ側面下側やボンネットをブラックとしたツートーン塗装や、専用シートなどを装備した内装などが標準仕様(ベース車)とは異なっていた。

 1973年には、標準仕様のA112に装備が豪華なE(エレガント)が追加設定され、A112 アバルトはマイナーチェンジを実施。シリーズ2へと進化し、モノトーン塗装となって、バンパーやライトリムが黒い樹脂製となった。内装も変更された点がポイントだ。1975年には、シリーズ全体がマイナーチェンジの対象となり、メーターをはじめとする内装の意匠を変更。A112 アバルトもマイナーチェンジによってシリーズ3となり、排気量1050cc/最高出力70psエンジンを搭載するクルマがラインアップされた。

 1977年にシリーズ全体がビッグマイナーチェンジされ、ルーフが20mmほど高められて、グリルはヘッドライトリムと一体型となった。また、テールランプは横長タイプに変更されている。A112 Eはエンジンの排気量を965ccまで拡大。A112 アバルトはシリーズ4に進化し、エンジンの排気量は1050ccのみとなり、ボンネットにエアインテークを装備。インパネやシートの形状も変更された。

 1979年にふたたびシリーズ全体がマイナーチェンジされ、標準仕様には、エリート、ジュニアの新グレードが設けられた。A112 アバルトはシリーズ5となり、グリルとテールライトの意匠を再度変更しつつ、樹脂製ホイールアーチ、サイドプロテクター、リヤガーニッシュなどを新採用している。トランスミッションは、新たに5速MTを搭載。シートや内装の意匠も変更された。

 1981年(1982年と考える場合もあり)から日本市場で初めてA112 アバルトの正規輸入車が販売され、このときのスペックは、1050cc、70ps、5速MT、左ハンドルのA112 アバルト(シリーズ5)であった。1983年にA112 アバルトのシリーズ6が日本でも発売され、この仕様は、前後バンパー(大型化)、Cピラーのディフレクター、テールランプ、ホイール、シートなどが変更されていた。パワーウインドウがオプションで用意された点もトピックだ。

 1984年には、A112 アバルトのシリーズ7を発売。フロントバンパーにロードランプを内蔵し、ABARTHのロゴ入りとなるリヤガーニッシュやリヤリフレクターパネルを追加。シートがブラックとグレーストライプ(赤系ボディ)またはレッドとグレーストライプとなり、シートベルトをレッドに変更。ブロンズガラス、サイドストライプ&アバルトステッカー、アバルトホイールカバー、センタールーフアンテナなどが新たに採用された。また3連メーターがセンターダッシュの下に移動している。

 1986年に日本でA112 アバルトの最終モデルを発売。売り切れと共に販売終了となった。同年10月にはイタリア本国でジュニアの生産も終了し、後継モデルとなるアウトビアンキ Y10が送り出された。

 A112 アバルトも、販売終了から35年近くが経過しているため、ほかのクラシックカーと同じように細かなトラブルが発生することを前提として購入し、丁寧に扱いながら、定期的なメンテナンスを実施する必要がある。具体的には、急ハンドル、急ブレーキ、急発進をすることなく、油脂類やゴム類といった消耗品を早めに交換しながら、電気系もつねにチェックしたい。「転ばぬ先の杖」的な整備を実施し、なるべくトラブルを未然に防ぐようにしよう。

 すでに新品パーツを入手できないケースが多々あるので、経験豊富なスペシャルショップから購入し、その後のメンテナンス作業も依頼するのがベストだ。最初期型を除くユーズドカーの流通価格は、200万円程度である。

いま狙い目のドイツ車

 イタフラを紹介したので、ドイツ車もピックアップしておこう。

ポルシェ928

 まずはポルシェ 928だ。もはやポルシェと同義語となっている「911シリーズ」よりも上級のマーケットをターゲットとしていたポルシェ 928は、1977年にデビューしたラグジュアリーなグランドツーリングカー。911よりも快適性が重視されていた。911のように空冷水平対向6気筒エンジンをリヤエンドに積むのではなく、928は新開発された水冷V型8気筒エンジンをフロントに搭載し、FRレイアウトを採用。水冷V型8気筒エンジンの排気量は、初期モデルの4.5リッターから最終的に5.4リッターにまで拡大された。

 928は当時ポルシェ社の社長であったエルンスト・フールマン氏の主導により、同社にとって象徴ともいえる911の代わりになるモデルとして開発されたともいわれている。発売当時よりAT車が用意されるなど、ポルシェのラインアップにおいてはひと際高級なグランドツーリングカーとして位置づけられていた。車両本体価格自体も、911より高額だった。

 次世代を担うグランドツーリングカーとして、1978年モデルから量産が開始された928の開発では、まず、軽量化が重要視された。具体的に説明すると、ドア、フロントフェンダー、ボンネットのマテリアルとして、スチールではなくアルミニウムを採用。ボディに一体化されたプラスチック製バンパーの背面には、アルミニウム素材のパーツが組み込まれ、8km/h以下の速度で衝突した場合には損傷することなく復元できるようになっている。

 928の丸みを帯びたフロントセクションには、丸型の電動ポップアップヘッドライトを装備。フロントと同じように丸みを帯びたハッチバックスタイルのリヤには、大型のウインドウ(リッド)が備わっていた。

 また、928はFRレイアウトであっても前後の重量配分にこだわって設計されており、トランスミッションとデフと一体にしてリヤアクスル側に搭載したトランスアクスル方式(セントラル・チューブでエンジンとトランスミッションをつないでいる)を採用。分かりやすく説明すると、トランスミッションとデフをリヤアクスルの手前にレイアウトし、センタートンネル内のプロペラシャフトを介してエンジンと接続することで、車重の理想的な前後配分を可能にしていた。

 さらに928のリヤアクスルには、全体的に新設計が施された。ヴァイザッハ・アクスルと呼ばれるサスペンションの特徴は、トーインを安定化させる機能だ。このメカニズム(パワーオフと制動時のトー角をイン方向に変化させ、クルマの姿勢を安定させる)はパッシブ・リアホイール・ステアリングとして機能し、優れた安全性を確保するために大きく貢献してくれる。

 モデルごとの特徴も列記しておこう。928/1978-82年モデルのリヤスポイラーの無い丸みを帯びたリヤエンドは、928ならではの特徴だ。またこのモデルは後の派生モデルとは異なり、フロントスポイラー、リヤスポイラーを装備していない。928の4.5リッターエンジンは、240psの最高出力を誇っている。

 928 S/1980-86年モデルは、ブラックのフロント/リヤスポイラー、ボディカラーと同色となるサイドプロテクションストリップ、サイドインジケーターライトを装備している。エンジンの排気量は初期の4.7リッターから5.0リッター(1986年モデル)まで拡大された。最高出力は300psで、1984年モデルでは310psを実現。触媒コンバータが採用された1986年モデルでは288psとなっている。1984年にS2、S3へと発展した。

 928 S4/1987-91年モデルは、エアインテークを備えた丸みのあるフロントエプロンが印象的だ。傾斜したリヤエンドでは、フラッシュサーフェスデザインのワイドなテールライトや、後方に突き出たブラックのリヤスポイラーが印象的である。5.0リッターエンジンを搭載し、最高出力は320psだ。

 928 GT/1989-91年モデルは、928 S4よりもさらにスポーティな仕様で、トランスミッションは5速MTのみが設定された。5.0リッター、V型8気筒エンジンの最高出力は330psまで増大。独創的なデザインのホイールも特徴である。

 928 GTS/1992-95年モデルは、928が進化し、最終発展型として結実したグレードである。928 GTSは、張り出したリヤフェンダー、レッドのリヤライトパネル、ボディカラー同色のリヤスポイラー、カップ・デザインのドアミラー、17インチのカップ・ホイールを標準装備。搭載された5.4リッター、V型8気筒エンジンは、最高出力350psを誇った。

 911シリーズの生産が継続されたことにより、924、944、968、928といったトランスアクスル系のポルシェ製水冷FRスポーツカーはフェードアウトしていった。どのモデルのデザインも洗練されていて旧さを感じさせないので、この機会にボスキャラ的な928に乗ってみるとオモシロイだろう。ユーズドカーは、500万円ほどの軍資金があればゲットすることができる。

メルセデス・ベンツ 560SL(R107型)

 最後に紹介するのは、メルセデス・ベンツ 560SL(R107型)だ。ガルウイングドアで有名な300SL、縦目で人気の2代目SL/W113型、それに続く3代目の2シーターオープンカーとして1971年に登場したのがR107型SLである。ソフトトップおよび着脱式ハードトップを備えていた。

「SL」とは、ドイツ語で軽量スポーツカーを意味する「Sport Leicht(シュポルト・ライヒト)」の頭文字。初代SLこそ、その方程式で造られていたが、2代目SLからサーキットとは決別した雰囲気となり、北米マーケットの富裕層をターゲットとしたR107型SLは、Sport LeichtからSuper Luxuryへと転身した。

 V型8気筒エンジンを搭載していたR107型SL(直6仕様も存在)のボディは先代よりも大きくなり、装備も豪華になった。そして、優雅さとパワフルさも増していた。1971年から1989年までの18年間にわたって生産され、総生産台数が23万7000台にも上るといわれている。1980年にマイナーチェンジ、1986年にビッグマイナーチェンジを行い、このタイミングで導入されたのが560SLだ(最大排気量のトップグレードだが、ドイツ本国ではラインアップされず、日本、アメリカ、オーストラリアのみで販売)。

 エレガントなボディに大排気量かつパワフルなエンジンを搭載していた560SLは、あらゆるシ―ンで質感と走りのよさを実感できる。新車当時は、間違いなく世界最高級の2シーターオープンカーだったが、今日的な視点で見ても全方位的に優れているので、560SLはオーナーに「メルセデス・ベンツが考えるSuper Luxuryの世界とは、どういうものなのか」を教えてくれる。

 定期的にしっかり整備すれば、実用車としていまでも日常の使用に耐えられるので、ノスタルジックな雰囲気を毎日楽しみたい自動車趣味人は、メルセデス・ベンツ 560SL(R107型)をチョイスするといいだろう。こちらもユーズドカーの流通価格が500万円程度だ。今回ピックアップしたいずれのモデルも、メジャーな存在になる前に購入しておいてほしい。

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