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「ダブルクラッチ」はかつてMT乗りにとって必須のテクニック! いまでもクルマを労れる効果アリなワザだった

「シンクロ」に頼らずギヤの回転数を合わせる技

 最新のクルマはシンクロメッシュ(変速機構内において回転速度を同調させ、シフトチェンジを円滑に行えるようにする仕組み)を装備し、シフトダウン時に自動的に回転数を上げてくれるオートブリッピングなる便利な機能を備えているモデルまで存在している。もはや新しいマニュアルトランスミッション車では、運転する際に秘技「ダブルクラッチ」を駆使する必要がなくなった。

変速ショックやミッションへの負担を軽減できる

「キン肉マン」に登場するラーメンマンの必殺技がキャメルクラッチであるため、「ダブルクラッチ」という言葉だけを見るとまるでプロレス技のようだが、そうではない。クルマをドライブする際の運転技術のひとつとして知られる妙技である。シンクロメッシュが普及したことにより、ここ最近は都市伝説として語られるケースすらあるが、かつてノンシンクロのMT車を運転するときにはダブルクラッチが必須だった。

 ダブルクラッチとは、シフトチェンジ時に使う超絶テクニックで、その目的は変速ショックを少なくすること、トランスミッションの負担を軽減することである。ダブルクラッチにより、ギヤとギヤの回転差を同調させ、流れるようにスムースな運転を実現するのだ。

 やり方を記すと、こういうことである。走行中にクラッチを踏んでギヤをニュートラルにし、その状態でクラッチをつなぐ。すぐさまアクセルペダルを踏んで、エンジンの回転数を上げる。もう一度クラッチペダルを踏み、シフトチェンジしたらクラッチをつなぐ、というものだ。

 1回のギヤチェンジに対してクラッチを2回つないでいるということで、すべての操作を素早く実行しないと、せっかく上げたエンジンの回転数が落ちてしまう。ビギナーには難しいテクニックだが、練習して慣れればできるようになるので、機会があったら試してみてほしい。

現代でも非力なMT車やチョイ古車では重宝するテク

 ちなみに、1957年に登場した2代目フィアット500は、ノンシンクロMT車である。そのため、ダブルクラッチが必須であり、街中で愛らしいチンクエチェントを見かけたらオーナーが車内で頑張っている姿をイメージしてみるとオモシロイだろう。

 シンクロメッシュを装備している昨今のクルマでも、非力なMT車の場合は上り坂で失速しないためにダブルクラッチが有効だ。下り坂ではエンジンパワーのあるなしに関係なく、シフトチェンジ時の変速ショックを少しでも軽減するために、ダブルクラッチが役立つといっていい。

 そして、年式の旧い新しいに関係なく、ギヤの入りが悪くなってきたクルマ、シンクロメッシュを構成しているパーツを入手しにくいクルマにもダブルクラッチは有用なので、駆使してみるといいかもしれない。

 クラッチが2系統あり、片方が奇数ギヤ、もう片方が偶数ギヤを担当し、それらを交互につなぎ変えながら変速するDCT(デュアルクラッチトランスミッション/ツインクラッチとも呼ばれ、フォルクスワーゲン系はDSGと表記)と混同しやすいが、ダブルクラッチはペダル操作とシフト操作の手間が増え、なおかつ高い敏捷性が求められる離れ業である。言葉も実際の動作も憶えておいて損はないだろう。

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