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バブル期に「六本木カローラ」と呼ばれたBMW! 中身はマジメなE30型3シリーズは大ヒットが約束された名車だった

かつてはE30でナンパする若者が都会の夜にあふれていた

BMWの日本法人は1981年に設立

 BMWジャパンが設立されたのは1981年。このときの取り扱い車種のラインアップは3/5/6/7の全4シリーズ……以上と、現在からは想像もつかないシンプルさだった(反対に現在ほどの車種の多さを、当時いったい誰が想像していただろう? ましてSUVまであるなんて!)。海外の自動車メーカーでは初めての日本法人であり、設立当初の車種は前身だった「バルコム・トレーディング」時代からの車種をそのまま受け継いだ形で、3シリーズについては「E21型」と呼ばれる、02シリーズの後継車種として本国で1975年に登場した、最初の「3シリーズ」が現役だったころ。

 E21型初代3シリーズは、当時の日本のセダンでも多く見られた「2ドアセダン」で、コンパクトでシンプルでクリーン……そんなキャラクターのクルマだった。このころは320i(2L)、318i(1.8L)が輸入されたほかに、それ以外のエンジンを搭載した、いわゆる並行輸入車も見られ、筆者も環八あたりの業者から6気筒の323や320-6の個体を借り出して、試乗&撮影をした経験がある。BMWジャパンの当時の価格表を見ると、318iは5速MTが385万円、3速ATが398万円となっている。

BMWジャパン初のニューモデル「E30型3シリーズ」

 そして1983年になり、3シリーズ初のフルモデルチェンジ版として日本市場に投入されたのが、E30型・2代目3シリーズだった。BMWの伝統とされたフロント=マクファーソンストラット/リヤ=セミトレーリングアームのサスペンション形式を踏襲したFR(後輪駆動)ながら、初代に対してすべてが新設計。スタイリングも初代のイメージを色濃く残しつつより進化、洗練されたものとし、引き締まったボディからはみ出さんばかりにタイヤがセットされた小気味よいフォルムは、ひと目で「BMW3シリーズだ」とわかるものだった。

 このE30型BMW3シリーズは、事実上BMWジャパンの設立後初のニューモデルであり、新聞をはじめ積極的な広告展開が行われたのも、記憶が正しければこのクルマからだったと思う。そんな事情と、直後に好ライバルのメルセデス・ベンツ190Eが現れ、販売も熾烈な戦いとともに活況を呈することとなり、日本市場でのBMW人気を決定づけたモデルでもあった。

「シルキー6」と「鼻先が軽い4気筒」どっちを選ぶか

 そして導入開始後は、ジワジワとバリエーションが拡大された。最初に導入されたのは4気筒の1.8Lエンジン(102ps/14.2kg-m)を搭載する318iからで、5速MTと3速ATが導入された。以降、エンジンバリエーションが拡大されていき、6気筒は2.5L(170ps/22.6kg-m)、2L(129ps/16.7kg-m)の順に設定されていく。6気筒の2.5Lは、3シリーズではこのE30が初設定だった4ドアセダン(と2ドアセダン)の325iに搭載されたものだ。

 BMWの6気筒というと「シルキー6」などと言われ、BMWを象徴するエンジンだったから、3シリーズに搭載されたモデルが正規導入となったことで、当時、注目を集めた。「170ps/22.6kg-m」の数字も見覚えのあるものだ。他方で「鼻先が軽い4気筒派」も多かった。手元にある当時のカタログから車両重量を拾っておくと、セダンの2ドアで318i(右ハンドル)が1090kg、320iが1210kg、325iが1240kgになっている。

ピラーがそのまま残ったような「カブリオレ」もあった

 BMWのロゴエンブレムを写し込んだ赤いエンジンフードのアップを表紙に使ったE30型初期のカタログはE21型時代から受け継いだデザインだった。最初は318iだけだったが、モデルが追加されるに連れ表記も増え、手元にある「赤い表紙」の2冊目では、318i/320i/325i/325iC/325iXと増えている。

 このなかで325iCがカブリオレで、当初はバウアー社製のサイドウインドウとロールバーが残る構造を採用、追ってサイドウインドウ部分に三角窓だけを設けたフルオープンへと進化している。また325iXは非常にレアな4WDモデルで、前:後=37:63のパワー・トルク配分に設定されたセントラルディファレンシャル、セルフロッキングビスカスカップリング方式を採用。FRモデルに対し20mm高い車高、専用デザインのホイールアーチ(全幅はFR社に対して17mm広い1662mm)も特徴だった。

ステーションワゴンの「ツーリング」も登場

 さらにE30型では、初のワゴンモデルの「ツーリング」が登場したのも見逃せない。02時代のファストバックモデルの呼称を受け継いだこのツーリングは、E30型セダンのカッチリとしたボディ、走りはそのままにより多用途性を高めたもので、ラゲッジスペース容量は370~1125L、最大長1545mmのスペースはBMWらしい上質なカーペットが貼られ、車両重量は4ドアセダン+60kgの1320kgとなっていた。

 カタログの諸元表を見較べると、E30型の初期型と最終型で、全長4325mm×全幅1645mm×全高1380mm(ホイールベース2570mmも)の3サイズがまったく変わらなかった点にも、なんともポリシーを感じた。走りよし、スタイルよし、クオリティよし。いささか暴論かもしれないが、今日の日本のセダンの衰退はここから始まったのでは? と思えるのがE30型BMW3シリーズの存在だった。

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