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HKSが最強の車高調「HIPERMAX R」をリリース! 大人気「S」との違いをトヨタ86で乗り比べてみた

HKSからサスペンションの新シリーズ「HIPERMAX R」が登場

スポーツ車高調の新時代「走りの本質ここに極まる」

 近年のスポーツカーは、日常域の乗り心地も快適性を犠牲せずに、高いハンドリングを備えているものが増えてきている。そこにはサスペンションの動きをしっかりと支える車体性能の高さや、サスペンション取り付け部などの局部剛性の高さ、さらには緻密な空力性能の取り入れなど、さまざまな進化があってのことだが、それでも、さらに高い運動性能を得たいというニーズは多く存在している。

サーキット志向の「MAX IV SP」が「R」へ進化

 そのような思いに応えるべく、HKSは90年代よりスポーツサスペンションを発売してきたが、装着車両の性能進化とともに求められる性能レベルが高くなるなかで、改良を繰り返してきた。そうしたなかで今回、車高調整が可能なサスペンションキット「HIPERMAX(ハイパーマックス)」シリーズから、昨年発売された「S」に加えて、発売から9年を経た「MAX IV SP」の進化版である「HIPERMAX R」という、Sとの違いもイメージしやすいネーミングで発売された。

 一方で、ユーザーサイドに立てば、RはSよりもハード方向ということは容易に想像できても、自分の使い方や走り方には、どちらを選ぶのがマッチするのか、ということになるのではないだろうか。

HKSの技術を結集した新シリーズ「R」

 今回の試乗会では、それこそ同じ試乗環境、同じ車種でSとRの乗り比べができたのは、大きな収穫であった。ちなみに、試乗車は先代のトヨタ86で、Rにはボルトオンターボが与えられてより走り志向に仕立てられた仕様だった。つまり、純粋に同じエンジン性能車両のものでの比較ではないが、よりパワーを高めた際の対応力なども知れた。

 ちなみに、HKSの内製ダンパーの特徴は、単筒式であること、ストラット式は倒立タイプになること、セッティングは社内で行っていること、日本で生産していることなどが挙げられる。

 そこにRの新たな技術的要素として、新しいオイルを採用して、サーキット走行の繰り返しなどでも熱ダレがしにくくなっているという。

 また、Sで採用したプリロードバルブを進化させたデュアルプリロードバルブを採用している。これは追従特性の向上や初期の減衰力が素早く立ち上がる一方で、入力が高くなった際の過度な減衰力の高まりを抑制することができるという。つまり、入力の低い領域から減衰力の追従性は高いが、通常、その特性ではそのままピストンスピードのハイスピード域や大入力の際、必要以上に減衰力を発生してしまうことが抑えられるので、突き上げ感などを緩和できるという特性だ。

 また30段階の減衰力調整機構を持つが、ソフト方向でのセッティング幅が広げられたことで、乗り心地を重視する際の対応力がより高まっている。バンプラバーの特性もバンプタッチ後の急激な変化をさらに抑制したという。

 こうした技術でHKSが目指したのは、欧州の競合トップブランドのダンパーを凌駕した世界一の走行性能とのことである。

 組み合わされるスプリングも、210k級強度線材を使用しており、バネレートが高くてもストロークのしなやかさを確保できたといったことも掲げられている。

 試乗車の仕様であるが、トヨタ86をベースに組み込まれたHIPERMAX Sのバネレートは、フロントとリヤともに5k、Rはフロント9k、リヤ10kとやおおよそ2倍にもなっている。ダンパーの減衰力調整機構はSもRも前後ともに30段階中の15段、つまり中間値にセットされていた。車高は、Sが純正比でフロント-16mm/リヤ-12mm、Rは同様に-36mm/-35mmと、Sに対しては思い切りローダウン化されていた。タイヤはいずれもヨコハマのアドバン・ネオバで、サイズはS、Rともにフロント225/40R18、リヤ255/35R18であった。

HIPERMAX S:スポーツ性と日常性の高いバランス

 試乗は公道ワインディングが主体なので、限界域は当然として、攻めこむという領域までは知ることはできなかった。だが、サーキットなどで乗ってしまうとなかなか見えにくい低入力域からうねりや段差乗り越えの際のストローク感や減衰性、操舵速度の低い領域での応答性、心地よくワインディング駆け抜ける程度の横G領域での姿勢安定性やトラクション感覚、さらに乗り心地などを、しっかりと比べられることにもなった。

 まずHIPERMAX Sが組み込まれたほうから乗ってみる。見た目からして、適度に車高が落ちており、精悍さと実用性の良いバランスだと感じさせる。走り出すと、ゆっくりとステアリングを切り出すような領域からもしなやかに減衰感が立ち上がって、操舵応答もニュートラル域から自然なつながりでスムースに感じさせる。

 駐車場のようなところでゆっくりと動いていても、足が細かい凹凸に反応して穏やかに減衰力を立ち上げているのがわかるが、少し速度を上げていくと、路面のうねりなどに対する足の動きのスムースさが知れる。乗り心地としてソフトではないが、いわゆる突き上げ感とか、揺すられる動きは抑えられて、いわば適度な締まり感と姿勢のフラットさがよくバランスしているように思えた。

 操舵の初期応答感が高まっただけでなく、そこからの追従感がしっかりとしているのは、リヤの接地性が高まっている証。ロールも押さえ込むようなものではなく、ヨーレートと横Gの高まりに対して、しなやかかつロール速度も自然な感覚で、車両姿勢もわかりやすかった。

 トヨタ86/スバルBRZは、とくにリヤサスのバウンドストロークが短いので、車高を落とした際には、ロール時にバンプタッチによる急激な姿勢変化をもたらしがちだが、少なくとも試乗した走行環境のなかでは、そういったことは経験されず、心地よいコーナリング姿勢に終始した。スポーツ性と日常性の高いバランスを得たなかなか好ましい足だった。

HIPERMAX R:スポーツドライビングに幅を与えてくれる

 このSからRに乗り換えると、まず車高が見た目からして明確に低められているのが知れる。それでも、この日、非舗装の駐車場に入ってのUターンなどにおいても、フロントスポイラーやフロア周りや地面と接触するようなことは一度もなかったので、普段の実用性はギリギリ確保されているようだ。

 動き出した瞬間から、Sに対しての足の硬さはすぐに知れる。スプリングレートが約2倍だと知れば、逆に、それにしては揺さぶられたり跳ねる感じも少ないと思ったが、そこは210k級強度線材のスプリングを採用した効果なのかもしれない。

 車高が低められ足は硬められているので、当然としてステアリングの応答感は高まっている。足が硬いなりに動いていることがわかるのは、操舵しはじめから繋がり感を持って車両が向きを変えていくこと、途中で応答感に変化が生じるようなことがないこと、切り返しの際のセンター付近での操力の抜け感を感じさせないこと、さらに路面との接地感がしっかり伝わってくることなどからで、路面やコーナー変化がさまざまなワインディングへの対応力が高さそうだと思えたのだった。

 試乗車はターボによるパワーアップがなされていたので、とくにトラクション性能が重要になるが、伸び側のストロークも確保されているようで、コーナリング中のアクセルワークやとくにコーナーからの脱出領域での蹴り出しの確かさは、ドライビングに幅を与えてくれるし、なによりパワーをしっかりと伝えてくれる頼もしさをもたらすものだった。

 Rはサーキット領域までを考慮したセットなので、本来ならもう少し高い速度域、高い旋回G領域までを知る機会を得たいところではあったが、それこそ高G領域で効果を発揮しそうなバンプラバーの特性制御や、さらに熱ダレの抑制などからしても、期待は持てるだろうと思えるものだった。

 さらに、この種のサスペンションとして画期的なのは、2年または4万kmの保証がついてくるということ。しかもサーキット走行を対象外としない、というのは相当な自信がないとできないもの。性能と耐久信頼性をともに持たせたHKSのHIPERMAXシリーズは、車高調には馴染みの薄かった私にとっても、強い興味を抱かせる走りを備えていた。

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