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キムタクの起用がなくても大ヒットした!? 元オーナーなら確信できるトヨタ「初代RAV4」真の実力とは

初代RAV4のフロントマスク

’90年代にライトクロカンブームを席巻した
初代RAV4の小さな巨人ぶり

 1994年5月、今のSUVブームを作り上げたクルマの1台であるトヨタRAV4が誕生した。現在では5代目モデルがアウトドアブームのなかヒットモデルとなっているが、あらためて初代RAV4がどんなクルマであったのかを振り返りたい。

 初代RAV4のイメージと言えばアラフォー&アラフィフ世代の人なら、キムタクを思い出すだろう。CMキャラクターにキムタクが起用されたことも後押ししたのか、初代RAV4は大ヒット。ホンダCR-Vやスズキ・エスクード(いずれも初代)などと一緒に、ライトクロカンブームを巻き起こした。初代RAV4(3ドア)のボディサイズは全長3695mm×全幅1695mm×全高1655mmの5ナンバーサイズに収まるもので、全高を除けば初代BMWミニとほぼ同サイズであることから、いかにコンパクトであったのか理解できるかと思う。

見てくれだけのファッション四駆じゃない!

 とにかく初代RAV4の登場はエポックメイキングだった。それまでの四駆と言えばランクルやパジェロなどの本格派揃いだったが、それを真っ向から否定するように『新コンパクト4WD』を掲げ、Recreational・Active・Vehicle・4Wheeldriveの頭文字から「RAV4」のネーミングとなった。まさにRVブームの時代の寵児であり、アクティブでキュートなフォルムは、当時のガチ勢からは舐められるも全モデルにフルタイム4WDを採用。その意味では現在のSUVはFFモデルも多いが、RAV4はオンロードはもちろんオフロードでも確かな走りを楽しめるものだった。

 ちなみに販売店の違いによって、車名がRAV4 L(Liberty)がトヨタカローラ店、RAV4 J(Joyful)がトヨタオート店扱いとなっていた。

オンからオフまで使えるモノコックボディ+4輪独立懸架を採用

 もちろん車体はジムニーなどで使われるラダーフレームではなく、カローラ系のモノコックボディを採用。基本コンポーネントを高次元でバランスさせ、サスペンションはフロントマクファーソンストラット式、リヤにはトレーリングアームを使った新開発のダブルウィッシュボーン式4輪独立懸架としていた。さらに16インチの専用マッド&スノータイヤを備え、街乗りなどのオンロードからオフロードまで優れた走行性能を発揮した。

 エンジンはハイメカツインカムを採用した2L直4DOHCの3S-FE型を搭載。最高出力135ps/6000rpm、最大トルク18.5kg-m/4000rpmは凡庸ながら、扱いやすい豊かなトルク特性でオフロードでも逞しい走りををみせた。面白いと思ったのは、令和のいまほどMT車比率は低くはなかったが、スポーティモデルではない限りMT車がニッチな存在になりつつあった’90年代に、見てくれがファッションSUVの初代RAV4に4速ATだけじゃなく5速MTを全グレードに設定していたこと。

 その5速MT車のセンターデフには、トラクションを必要とする際に有効なメカニカルデフロック機構を装備。4速AT車にも優れた走行性能と走破性を実現するために、きめ細かく強力な差動制限を可能にした油圧多板クラッチ式のEC-ハイマチックが用意された。

広くないスペースを最大限に活かすシートアレンジが可能

 見た目の愛らしさと同様に、インテリアには「洒落たセンス」「遊び心」を演出する室内空間を確保。なかでもシートが秀逸で、乗り心地、ホールド性、乗降性などを人間工学に基づいて設計された。シート高を適切に設定したほか、運転席の前後可動範囲を広くとり、さらに高い着座視点を確保したことで小柄な女性から長身の男性まで、ドライバーを選ばない運転しやすいパッケージを実現させていた。

 またフロントとリヤシートはフルリクライニング機構が備わり、RV車に相応しい車中泊も可能であった。もちろん5:5分割可倒式の採用で多彩なシートアレンジができ、後席不要時にはシートを前方にクッションごと畳むことで広々とした荷室を作ることができた。

5ドア仕様やソフトトップモデル、EVもラインアップ!

 当初、3ドアモデルのみだった初代RAV4は、1995年にホイールベースを延長して居住性と使い勝手を向上させた5ドアモデルを追加。さらに1996年にはマイナーチェンジが行われ、同じ2Lでありながらより高回転型の3S-GEエンジン搭載(最高出力180ps/6600rpm、最大トルク20.5kg-m/6000rpm)のタイプGもラインアップ。

 そのほか、ソフトトップ車やEVなども登場するなど、ただのファッションSUVではないトヨタの本気が見て取れたモデルでもあった。ただ、残念だったのは3ドアがまるでチョロQのようなスタイリングが完成されていたがゆえに、後発の5ドアのそれは、ホイールベースの延長やドア枚数が増えたことで切り貼りした感が拭えなかった。

 四半世紀前にタイムスリップしたつもりで初代RAV4を振り返ると、可愛いルックスはもちろんコンパクトな車体やドライバーを笑顔にさせてくれる走りの良さは、いまでも記憶の片隅に残っている。MTを駆使してオモチャのように扱える楽しさは、ライトクロカン(SUV)でありながらスポーツカーを走らせているようで、初代RAV4=キムタクのイメージを拭い去ることはできないが、大ヒットの裏にはオーナーたちを喜ばせる愛らしいスタイリングと、決して高性能ではないけれど楽しい走りを体感させてくれるオモチャ感があったからにほかならない。

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