サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

ターボエンジンはブースト圧を上げればいいってもんじゃない! どうして「ブーストダウン」した方が速くなる?

もちろんブーストアップが基本の第一歩

速さを突きつめた領域では「常識」が逆転する!?

 ターボ車のパワーを出すにはハイブーストと決まっている! たくさんガソリンと空気をエンジンにぶち込めばそれだけパワーは出る! ……そんな風に、ハイブーストこそ速さの象徴であるのは、じつはストリートだけの話。サーキットではブースト圧を下げることも全然普通にある。奥深きターボセッティングの世界とは?

ブースト圧が高いほうが当然パワーは出る

 ターボ車のパワーは基本的にブースト圧が高いほうが出る。より高い圧力でエンジンにガソリンと空気を押し込むので、それだけたくさん燃やすことができ、パワーが出る。

 そこでチューニングの最初のフェイズとしてブーストアップが推奨される。これはタービンは純正のまま、ブースト圧を上げること。それに合わせて燃料の量や点火時期なども調整するが、10~20%ほどのパワーアップが可能だ。コスト的にもエンジンコンピュータ(ECU)の書き換えだけでできることが多く、10~15万円ほどで大幅にパワーアップできる。

 次にもっとパワーを出すなら、タービン自体を大きなものに変えるチューンがある。より風量の大きなタービンにすることで、エンジンにたくさんの空気を押し込み、出力をアップさせる。このときもブースト圧は高めるのが一般的で、ブーストアップよりも大きなリターンが見込める。

 純正タービンにしろ、アフター品のタービンにしろ、エンジンパワーだけで言えば、基本的にブースト圧が高いほうが出せる。ある一定のラインを超えると異常燃焼が起きたりするので限界はあるが、純正ブースト圧に比べて20%くらいまでは高めるのが普通だ。

ブーストダウンしたほうが速く走れることがある

 しかし、じつはブースト圧を下げることもある。そして、それはエンジン保護が目的ではなく、速く走るためにブーストダウンをすることがあるのだ。その理由がタイヤのグリップとの関係にある。

 ありがちなのが、リヤ駆動車でサーキットの1本目「まずは様子見だから、ローブーストモードで走ろう」と走行。走行2本目で「よし、本気だ、ハイブーストにして一気にタイムアップ!」と思ったら、なんとタイムが下がったという話だ。

 気合いを入れてハイブーストにしたら、リヤがスライドしてドリフト状態になり、前に進まずタイムダウンしたという例は大変多いのだ。

 ハイブーストだと鋭くパワーが出た瞬間にリヤタイヤがブレイクしてしまうので、しっかりと向きが変わってから──つまり、ほぼストレートに入ってからアクセルオンすることになる。

 ならば、むしろブーストダウンして、早めからアクセルをじんわり開けて行ったほうが良い。低めのブースト圧にして、コーナー立ち上がり途中からアクセルを踏んだほうが、ピークパワーは劣っても早くから加速が始まるので結果的にストレートでも速くなってしまうのだ。

踏めないパワーは無駄!

 踏みこめない程のパワーは遅くなるだけでなく、タイヤも減りやすい。駆動系にも負担が掛かる。エンジン本体にも決して良くない。と、このような理由から、レースでは最高ブースト圧よりも下げて走るのは珍しくない。むしろ、安定したラップタイムを刻みやすく、トータルでは速くなってしまうことさえある。

 レース界で有名なセッティングエンジニアも「踏めないパワーは無駄」と、限界までセッティングを確認したあとは、ドライバーがどれだけ踏めているかを確認しながら、ブースト圧をバンバン落としていくという。速く走るためのブーストダウンもアリなのだ。

モバイルバージョンを終了