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空冷ポルシェ「911」が1億8000万円!! ワンオーナーだった「ナナサンカレラ」が高額落札された理由とは

2022年5月のオークションに出品された911カレラRS 2.7

空冷911のなかでも特に人気の高い「ナナサンカレラ」とは

 2022年4月に発表されたポルシェ「911クラブスポーツクラシック」のルーツともいえるのが、1973年に登場した「911カレラRS 2.7」である。この通称「ナナサンカレラ」と呼ばれる1台がオークションに登場。驚きのプライスで落札された。

901型はもはや高嶺の花の存在に

 ポルシェ911は、年式を問わず人気が高いモデルである。その人気を保ち続けた大きなポイントは、911がつねにその時代で最高の走りを提供してきた、ということが挙げられるだろう。

 初代911は、1964年から生産を開始し「901型」と呼ばれる。この901型は、求められる機能を実現するため、エンジンや駆動系、サスペンションなど、さまざまな進化をしながら1977年まで、13年にわたってつくり続けられた。2代目となる「930型」も、生産中止となる1989年まで、やはり進化をし続けて、つねに最高峰の存在であり続けた。

 その後1989年には「964型」、そして1993年には「993型」がデビューをし、1997年には伝統の空冷エンジンが水冷エンジンへと変更された「996型」が発表されたが、その人気の高さは変わらず、その後、「997型」、「991型」、そして現行モデルの「992型」が販売されているが、どのモデルもその時々の、最高クラスのスポーツカーである。クルマ好きならだれでも、一度は所有してみたい、と思えるモデルのひとつ、と言っていいだろう。

 そんなポルシェ911の中で、ひときわ人気が高いのが、901型の中でも1973年にのみ生産された「911カレラRS 2.7」、いわゆる「ナナサンカレラ」である。

 この911カレラRS 2.7は、FIAグループ4GTのために開発されたホモロゲーションモデルである。ベースとなっているのは「911S 2.4」というモデルだが、その2.4Lエンジンを元に、シリンダーのメッキを変更するなど大幅に手を入れて、排気量を2.7Lへと拡大。出力を210ps/6850rpm、トルクを26.0kg-m/5600rpmとしている。

 さらに、そのパワーを受け止めるべく太くしたタイヤを収めるため、リヤフェンダーを拡大しているが、ボディの鉄板を薄肉化したり、FRP製バンパーの採用、薄型ガラス採用などで軽量化を実現。ファクトリーオプションとなっていた「M471ライトウェイト/ライトウェイトスポーツ」では960kg、「M472ツーリング」でも1075kgという車重を実現している。

 生産台数は、当初はホモロゲーション要件である500台の予定だったが、発表と同時に注文が殺到し、最終的には1580台が生産されている。

200台のみ生産された希少な「ナナサンカレラ」

 2022年5月にモナコで開催されたRMサザビーズオークションに出品されたナナサンカレラは、1580台のうち200台のみ生産された「M471ライトウェイト」コンバージョンである。このモデルを手放したオーナーはイタリア人だそうだが、当時イタリア国内では手に入れることが難しかったため、ドイツ本国まで足を運んで1973年4月にオーダーをし、現在まで所有していたそうだ。

予想以上の高額落札

 つまりこのナナサンカレラは、ワンオーナー車ということになる。シャシーやエンジン、トランスミッションはマッチングナンバー、交換履歴がなく新車当時のものという状態。さらにスペアタイヤとホイールや工具、オリジナルのディーラーインボイスや販売書類も付属している。

 そんな希少なナナサンカレラのエスティメート(落札見積価格)は80万〜100万ユーロ(邦貨換算約1億1100万円〜約1億3900万円)となっていたのだが、落札価格はそれを上回る128万7500ユーロ(約1億7900万円)という高値となった。

 この年式の911は、エンジンやトランスミッションを載せ換えていても不思議ではないのに、この個体ではすべてがメーカー純正のまま残っている。それに加えて、これまでただひとりのオーナーが愛情を注ぎ込んできた希少なナナサンカレラには、そうそう巡り合えるものではない。これらの要因が重なったこともあって、予想落札価格を大きく上回ったと考えられる。

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