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日産「スカイラインGT-R」が海外オークションに出品!「R32」と「R33」の落札価格に注目が集まる

落札価格はいくらになる?

 2022年8月18~20日にアメリカ合衆国カリフォルニア州モントレーで開催されるRMサザビーズの「モントレー・オークション」。多くのクルマ好きが注目するビッグイベントだ。

 アメリカでは、25年ルール(通常は登録できない右ハンドル車も製造から25年を経過すれば輸入、登録が可能となる制度)によって、数多くのR32型日産スカイラインGT-Rが海を渡ってしまった。今回の「モントレー」において3台のGT-Rが出展されるという情報をキャッチした。クルマ好きの間で話題となっている。

【1989年式日産スカイラインGT-R】

 まず注目するのは、1989年式日産スカイラインGT-Rだ。1989年にデビューしたR32型スカイラインGT-Rは、専用に開発された直列6気筒ツインターボエンジン(RB26DETT/当時の自主規制枠いっぱいとなる最高出力280psを発生)をフロントに搭載。洗練された電子制御トルクスプリット4WDシステム「アテーサ E-TS」と電子制御4輪操舵機構「スーパーHICAS」が組み合わされたスペシャルなロードカーである。

 開発の早い段階で、当時国内で人気を集めていた全日本ツーリングカー選手権への参戦が決まり、グループA規定で行われていたこのシリーズを制するための性能がしっかり確保されていた。そのため、1990年に実戦デビューした途端にシリーズを席巻するという圧倒的な強さを見せつけ、あまりにも速かったことが災いし、ライバルと活躍の場を失ってしまうほどであった。

 モントレーに出展されるのは、R32型スカイラインGT-Rの発売初年度モデルで、グレーの布張りインテリアとブラック外装のマッチングがいい一台だ。走行距離は2万9250km未満となる。2018年に日本から輸出されたが、いきなりアメリカに渡ったわけではなく、まずオーナーの香港の住居に納車されたそうだ。

 アフターパーツのエキゾーストシステムとBBSホイールが装着されているが、それ以外はフルノーマルで、非常にキレイな状態が保たれている。交換されたパーツを純正に戻すことは簡単&驚くほど無改造のままなので、希望すれば完全にノーマルの様相に戻すことが可能だ。

 ご存じの方も多いように、GT-Rは日本国外では「ゴジラ」というニックネームで親しまれており、このコンディションのいいゴジラも高値で落札されるだろう。参考までにRMサザビーズのオークションにおける過去の落札価格を確認すると600~1140万円だったが、これは2016~2017年のデータなので、現在であれば2500~3500万円といった感じだろうか。

【1995年式日産スカイラインGT-R】

 続いて紹介するのは、1995年式日産スカイラインGT-Rだ。1995年のデビュー当初こそ失敗作と揶揄されることもあったR33型スカイラインGT-Rだが、ここ最近は正当な評価を獲得。2021年の8月12~14日に実施されたRMサザビーズのモントレー・オークションでは、1995年式のR33型スカイラインGT-Rが23万5200ドルで落札された。これは当時の為替レートで換算するとおよそ2600万円ほどである。

 現在は円安なので、日本円に換算すると高額となるが、ようやく実力に見合ったレビューになってきたということだろう。

 R33型スカイラインGT-Rといえば、プロトタイプモデルがドイツのニュルブルクリンクで7分59秒というラップタイムを出したことで有名だ。先代のR32型スカイラインGT-Rより21秒も速かったため、そのタイム差から「マイナス21秒のロマン」という言葉がキャッチコピーとして使われた。

 スカイラインGT-Rのようなスポーツカーは速さこそが正義なので、ニュルブルクリンクにおけるラップタイムの更新はセールスにおける好材料となった。しかし、一部のクルマ好きはボディサイズが拡大されたことに対して不満を漏らし、それが失敗作と揶揄される要因のひとつとなってしまったわけである。とはいえ、サーキット走行から長距離移動までを楽しめるR33型スカイラインGT-Rの性能は折り紙付きなので、今後も注目されていくだろう。

 モントレーに出品される個体は無改造車で、極めて良好な保存状態を誇っている一台だ。イメージカラーであるミッドナイトパープルの外装色は、非常に魅力的である。走行距離は1590km未満で、このような工場出荷時から何も変更されていない、ファクトリーコンディションの低走行R33型スカイラインGT-Rを今後見つけることは困難だろう。

 この個体も香港のコレクションから最近到着した1台とのことで、新車時から特別な手入れが施されているそうだ。

【1994年式日産スカイラインGT-R ‘JGTCC-GT1’ by ハセミモータースポーツ】

 最後に紹介するのは、1994年式日産スカイライン GT-R ‘JGTCC-GT1’ by ハセミモータースポーツだ。

 R32型スカイラインGT-Rは、全日本ツーリングカー選手権のほか、N1スーパー耐久での連覇(1990、1991、1992年)、オーストラリア・ツーリングカー選手権での連覇(1991、1992年)、1991年スパ24時間レースでのヨーロッパでの勝利など、4シーズンにわたって無敵を誇った。

 モントレーに出品されるのは、1994年の全日本GT選手権のためにハセミモータースポーツがNISMOと共同で製作した1台で、長谷見昌弘氏のドライブで同シーズンのドライバーズチャンピオンシップ2位を獲得したクルマである。ちなみに、ハセミモータースポーツは、1983~2010年までユニシアジェックスなどがスポンサーを務めるレーシングカーで各種レースに参戦した。

 オレンジと白のカラーリングが印象的なR32型スカイラインGT-Rでは、1991年と1992年の全日本ツーリングカー選手権において2年連続でタイトルを獲得している。現車は1994年の第1回十勝24時間レースで優勝し、R32型スカイラインGT-Rとして唯一、国内24時間耐久レースを制している。

 ハセミモータースポーツは、このR32型スカイラインGT-Rを最終戦の後、徹底的に整備し、チーム事務所にて展示。その後、東京に住んでいる現保管者が1996年にこのクルマを長谷見氏から直接譲り受け、以後、長谷見選手が現役時代に駆った重要なレーシングカーを集めたプライベートミュージアム内で保管していた。

 26年間にわたる所有期間中、このクルマはほとんど一般公開されることなく静態保存されてきた。1994年シーズンのレース仕様から一度も変更されていないため、エンジン、ECU、6速シーケンシャルトランスミッション、ブレーキシステム、ボディワーク、足まわりなど、レースで使用された主要部品がそのまま残っている。ボディには、最終戦のステッカーが貼られたままだ。

 この2年間で、フルードフラッシュ、燃料ポンプの交換、消耗品のガスケット、ホース、フィッティングの交換など、最高の状態で走らせることを目指した修復が施されているようだ。このようなレーシングカーを長谷見氏と親しい現保管者から入手できるチャンスは極めて稀である。

 GTレースのトップカテゴリーで活躍した車両は滅多に市場に出てこないため、落札価格の予想がつかないが、1994年当時のレーシングスペックが再現された素晴らしい保存状態なので、最終落札価格には期待が持てそうだ。

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 AMWでは引き続きRMサザビーズのオークション情報を注視したい。それにしても、日本が世界に誇るR32型スカイラインGT-RとR33型スカイラインGT-Rがアメリカでも高い評価を得ていることは嬉しい。一方で、良質車が海を渡ってしまうのは残念だが、今後も世界のカーマニアに日本車の凄さを痛感してもらえればいいな、と思う。

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