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「ハチロク」「ダルマ」「ケンメリ」あなたは幾つ分かる? ユニークな愛称で親しまれた名車を振り返る

愛称が付くのは人気だった証!

 学生時代に乗っていたホンダZは、正式名称だけでなくグレード名も併せてホンダZ GTと呼ばれることもあれば、型式名でホンダZ360と呼ばれることもありました。さらにリヤのハッチゲートの黒い樹脂フレームから“水中メガネ”の愛称もありました。今回は、愛称で呼ばれていた人気のクルマを思い出してみました。

型式名が有名になり、やがて正式名称に

 正式名称よりも型式名のほうが有名になったクルマとしては、やはりトヨタ カローラ・レビン/スプリンター・トレノの印象が強烈でした。T型エンジンをベースにツインカム・ユニットに仕立て上げた2T-Gエンジンを搭載したホットモデルで、レビンもトレノもTE27と型式名は共通でした。

 それぞれ1度マイナーチェンジを受けて前期/後期の2タイプ、計4モデルが存在していましたが、すべてをひっくるめてTE27、あるいはシンプルに27(ニーナナ)と呼ばれていました。さらに数世代後(世代の数え方は諸説あり)のモデルで、セダンシリーズは前輪駆動にコンバートしましたが、クーペモデルは後輪駆動を貫いてふたたび注目を浴びることになったのがカローラ・レビンとスプリンター・トレノです。

トヨタ・カローラレビン

 こちらのタイプ名も両車共通してAE86で、これもシンプルに86(ハチロク)と呼ばれていました。その後、幾度かのモデルチェンジを経てカローラ・レビンやスプリンター・トレノはカタログモデルから消え去ってしまいましたが、2012年にそのDNAを受け継ぐ後継モデルとして誕生した、後輪駆動の2ドアクーペは正式名称としてトヨタ86を名乗っています。

 先のモデルチェンジでGR86と名前が一部訂正されていますが、後輪駆動でドライビングを楽しむという基本コンセプトは継承し、スポーツ心を持った老若男女に愛され続けています。同じトヨタではスターレットのKP61やEP71も有名ですが、27や86に大差をつけられた感は否定できません。トヨタ以外では日産の3代目ブルーバードの510(ゴーイチマル)や2代目サニーの110(ワンテン)が記憶に残っています。

 正式車名を短縮した名称が、愛称代わりに使われたケースも少なくありません。三菱のランサー・ターボを“ランタボ”、同じくランサー・エボリューションを“ランエボ”と呼ぶのはその好例です。正式名称を短縮したといえばトヨタのカローラ・ワゴン(ワゴンとしては3代目のE100系。カローラとしては7代目。こちらも世代の数え方は諸説あり)を“カロゴン”と省略し、ユースケ・サンタマリアと篠原ともえのスペシャルユニットがCMソングを歌っていました。最初は悪乗り? とも囁かれましたが、大ヒットにつながったようです。

 また兄弟車種をひっくるめてとなると、例えばトヨタのターセル/コルサ/カローラIIならば“タコII”、アルファード/ヴェルファイアなら“アル・ヴェル”といった具合に省略してしまうケースも少なくありませんでした。

 一方日産ではシルビア(5代目のS13型)と、その3ドアハッチバックモデルが別モデルとして独立した180SX(型式はKS13型)という兄弟車種があって、180SXのノーズをシルビアのものにスワップしたモデルをシルエイティ(シルビアのノーズ=前半分と180ワンエイティの後半分を組み合わせた造語)とし、反対にシルビアのノーズを180SXのものにスワップしたものをワンビア(180SXのノーズ=前半分とシルビアの後半分を組み合わせた造語)とする車名も生まれています。特殊といえば特殊ですが、クルマ愛のあるエピソードでしょう。

 また、スズキのマイティボーイを“マー坊”としたのはとても秀逸で、座布団を3枚上げてもいいと個人的には思っています。

シリーズで次々と愛称が誕生

 モデルチェンジで新型が登場するたびに、愛称も新しくなっていきました。その好例のひとつがスカイラインです。プリンス自動車工業が日産自動車に吸収合併されて以降のモデルには、次々と愛称がつけられていきました。まず初代のスカイラインGT-Rが追加ラインアップされた3代目スカイライン(C10系)には“ハコスカ”の愛称がつけられました。

 文字通り箱型のスカイラインでしたから、これは納得できました。また語呂も良く“ハコスカ”だけでなく“ハコスカGT-R”もポピュラーに使われています。この“ハコスカ”がモデルチェンジを受けて登場した4代目スカイライン(C110系)は、コマーシャルにケンとメリーというカップルが登場したことで日産としても「ケンとメリーのスカイライン」をキャッチコピーに使用していましたが、一般的には“ケンメリ”と省略されることが多かったです。

日産スカイライン2000GT-R

 また“ケンメリ”をもじって4ドアシリーズを“ヨンメリ”と呼ぶのも一般的でした。以後のモデルではキャッチコピーの一部を愛称代わりに使用するケースも見られましたが、6代目(R30系)の後期モデルで、とくにグリルレスとなったRS系グレードを“鉄仮面”と名付けたセンスは流石。ベスト・ニックネームとして表彰したいくらいです。

 一方、ホンダも旗艦モデルのシビックには2代目以降、メーカー主導(?)で愛称がつけられています。2代目が“スーパー”、3代目が“ワンダー”、4代目(EF型)が“グランド”、5代目(EG型)が“スポーツ”、6代目(EK型)が“ミラクル”、7代目(EU型)が“スマート”と名付けられていましたが、8代目以降は仕向け地別にモデルライフが異なるようになったこともあって、メーカー自らが愛称をつけることもなくなってきました。

 もっともファンの間では“スポーツ”は、とか“ミラクル”が、ではなく多くの場合“EG”とか“EK”と型式で呼ばれることがほとんどでした。

スタイリングの特徴から名付けられた愛称

 さて、最後になりましたが、そのクルマのスタイリングの特徴から名付けられた愛称というのも少なくありません。そんな愛称のトップ5を紹介していきましょう。ただしトップ5とはいっても個人的に勝手に選んだ負い目もあるので5台、同率として発表年代順に紹介することにします。

バリカンコロナ

 まずは“バリカン”。これは1964年の9月に登場したトヨペット・コロナ(3代目となるT40/50系)の愛称で、横桟の並んだフロントグリルのイメージから命名されたようです。トヨタ自身はフロントバンパー上部を頂点として、リヤへ一直線に流れるサイドビューをアローラインと称して自信満々だったのに、“バリカン”という愛称。それでも愛称が与えられるのは人気がある証拠、ですよね。

トヨタ・コロナ

ダルマセリカ

 続いては“ダルマ”。これは1970年の12月に登場したトヨタ・セリカ(初代のA20/30系)の愛称。真正面から見たフロントのデザインで、左右が上に跳ね上がったメッキ製のバンパーがダルマのひげ面に見える、というのが理由のようです。これも腕を奮ったデザイナーにしてみれば、ダルマのひげ面かよ! となったかもしれないです。

トヨタ・セリカ

クジラクラウン

 3台目もトヨタ。“クジラ”の愛称が与えられたのは1971年の2月に登場したトヨタ・クラウン(4代目のS6/7系)。丸みを帯びたスタイルからクジラがイメージされるとの理由で命名されたようです。営業的には失敗作とされていますが“クジラ”の愛称とともに、今もなお根強い人気を誇る1台です。まさに愛称があるのは人気モデルの証拠、ということでしょうか。

トヨタ・クラウン

サメブル

 続いては“サメ”。これは日産が1971年に登場させたダットサン・ブルーバードU(4代目の610系)のラインアップへ、1973年8月に追加投入したブルーバードU 2000GTの愛称です。2000GTシリーズは6気筒エンジンを搭載するためにフロントノーズ部分を延長(ホイールベースで150mm、オーバーハングで55mm)していましたが、伸ばしたオーバーハング部分の冗長さをカバーするためにウインカーの後方にスリット風のプレスラインを入れています。それがサメのエラに似ていることから命名されたようです。“鮫ブル”とも呼ばれていました。

日産ブルーバード

ハマグリ

 最後の1台が“ハマグリ”です。これは1975年の日産シルビアの愛称です。うねりの強いデザインからこう名付けられたと伝えられています。このようにスタイリングからイメージして愛称をつけるのが一般的ですが、いずれにしても愛称で呼ぶのはそのクルマを愛しているから。愛称を授かったクルマは、本当に幸せ者、ということでしょう。

日産シルビア

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