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バブルの遺産「4代目ミラージュ」が凄すぎた! 1.6リッターV6だけじゃない三菱のやり過ぎ度合いとは

ミラージュアスティの走り

ミラージュアスティZの走り

バブル末期にデビューした4代目ミラージュの振り返る

 三菱初のFF車でありコンパクトカーとして親しまれてきたミラージュ。その4代目モデルが登場したのは1991年のこと。時代はバブル真っ盛りであり、RVブームでパジェロが、ラグジュアリーカー(3ナンバー車)人気でディアマンテがヒットしたこともあり、4代目ミラージュも潤沢な開発費を投入したことで充実した装備を持つモデルであった。

丸みを持たせた柔らかみのあるスタイリングでデビュー

 ボディは3ドアのハッチバック(全長3950mm×全幅1680mm×全高1365mm)と4ドアのセダン(全長4290mm×全幅1680mm×全高1365mm)をラインアップ。先代よりもトレッドをフロント20mm、リヤ30mmワイド化。同時にボディも3ドアが20mm、4ドアは10mm拡幅され、3ドアの全長は先代同様ながらホイールベースがプラス55mmの2440mmとしたことで居住空間を拡大させた。対して4ドアもホイールベースを55mm伸ばした2500mmとなり(全長も55mm延長)、ゆとりの空間を持つようになった。

 先代の直線基調よりも一段と丸みを帯びた柔らかいデザインもあってか街なかに馴染む嫌みのないスタイリングが魅力。それは三菱が言う「シンプル&リッチ」を体現したもので、軽自動車以外での三菱車の入口に相応しい存在感を放った。

 装備も充実しており、トラクションコントロールやABS、後席にも3点式シートベルトを用意したほか、このクラスでは珍しいフルオートエアコンやキーレスエントリー、電動パワーシートや世界初のビルトイン式空気清浄機の設定もあり、現在で言うCセグメントの小型車として充実した内容であった。加えて三菱ならではなのが4WDで、ビスカスカップリング式4WDをラインアップ。これは豪雪地帯のユーザーにコンパクトカーという選択肢を提供することになった。

プレミアムさを追求すべく1.6L V6というチャレンジングなエンジンも搭載

 そんな4代目ミラージュだが注目はエンジンだ。1.3Lから1.6Lまでの各ガソリンエンジンと1.8Lのディーゼルエンジンをラインアップしており、トランスミッションも4速MT、5速MTに加えて3速AT、4速AT、ホールドモード付4速ATが組み合わされるなど、そこまでやるのかという多彩なバリエーションを誇った。

 このなかから注目のエンジンをクローズアップすると、直4が当たり前の同クラスにあって世界最小のV6 DOHCをなんと搭載していたのだ。その名もミラージュ6(姉妹車ランサー6もある)とネーミングされた。当時、マツダの別ブランドであるユーノスから1.8L V6エンジンが市販化されていたが、それよりも小さな排気量を誇る脅威のエンジンであった。

 この1.6L 6A10型V型6気筒DOHCエンジンは、最高出力140ps/7000rpm、最大トルク15.0kg-m/7000rpmを発揮。これは同じ1.6L直列4気筒DOHCの4G92型(MIVECなし)が最高出力145ps/7000rpmだったので数値上は直4が上まわるのだが、V6は滑らかさとバブル期ならではの6気筒というプレミアム性で勝負。そのための「6」(シックス)という名称なのだが、1.6Lで6気筒というと、1気筒あたりは0.266Lしかなく、現在では効率の良い1気筒あたりの排気量は0.5L前後と言われているのだから、機械および熱損失を含めて本来であれば燃費が良くなるわけがない。現在の軽自動車の直列3気筒0.66Lよりも優位な排気量だが、カタログ数値は直4よりも悪く、残念ながら販売的には成功とはならなかった。

人気を博したのは可変バルタイ機構を備えたMIVEC搭載のサイボーグ

 4代目ミラージュとして成功したのは、後に追加された可変バルブタイミング機構のMIVEC(三菱インテリジェント・イノヴェイティヴ・バルブタイミング&リフト・エレトクロニック・コントロール・システム)エンジンだ。

 ミラージュは先に紹介した1.6Lの直列4気筒DOHCをスポーツモデルとして販売していたが、ライバルのシビックもDOHC VTECエンジンを搭載。おそらく1989年に登場したDA6型インテグラにB16A型エンジンが搭載されたことで開発されたのだと思うが、ミラージュにも先代のスポーツモデルに与えられたサイボーグの名称を復活。この4G92型MIVECエンジンは、高出力175ps/7500rpm、最大トルク17.0kg-m/7000rpmを発生させ、B16A型の160ps/15.5kg-mを上まわる高性能ぶりであった。

 ほかにも新開発のサスペンションにはフロントにサブフレームストラット、リヤにマルチリンクを採用。このシャーシ&サスペンションに対して、十分なポテンシャルが発揮できるエンジンが搭載されたことで、ホンダや三菱に続けとばかりに、1990年代は続々と高回転型自然吸気エンジンの時代が到来する。

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 このMIVECエンジンの登場を喜んだのは、おそらくユーザーでも自動車メディアでもなくホンダだったに違いない。ホンダの対抗馬として三菱以外のライバルたちも登場したことによって市場が盛り上がり、VTECはますます開発に磨きがかかり、高性能自然吸気エンジンが一大ムーブメントとなる。その歴史のなかの1ページにいまもなおこの4代目ミラージュが刻まれているのだ。

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