サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

お洒落キャンピングカーとして「ベッドフォードCA」に注目! なぜいま英国のクラシック商用車が新鮮なのか?

1958年式ベッドフォードCAのドアモービル製キャンパー

1958年式ベッドフォードCAのドアモービル製キャンパー

アソモビ2022会場で発見! 不思議なカタチのイギリス車

 2022年8月6日・7日に幕張メッセで開催されたソト遊びとモビリティの祭典「アソモビ2022 in Makuhari」。アウトドアや多彩なアクティビティをフィーチャーしたクルマが勢ぞろいした会場で発見した、気になるクルマたちを深掘り。今回は、キュートなフェイスが魅力のイギリス製商用車、「ベッドフォードCA」の魅力を探ってみた。

姿を変えずに17年で37万台生産された小型商用車「ベッドフォードCA」

 アソモビ2022の会場を回っていて気になったのが、2台並んで展示されていたブサカワいいフロントマスクのビンテージカー。聞けばイギリスの商用車で「ベッドフォード(Bedford)CA」なるクルマだという。よく見ると1台はホイールベースが長く、もう1台はキャンピングカーのようだ。いずれにせよ日本では名前を聞いてもピンとこないこのクルマの素性だが、まずはブランドである「ベッドフォード」について。同社はイギリスの自動車メーカーで、のちにGMの子会社となるイギリスのボクスホール傘下で商用車を製造する会社だった。

 そんなベッドフォード社で1952年から1969年まで、大きく姿を変えることなく生産され続けてきたロングセラーの配送用バンが、このベッドフォードCAというわけだ。CAは近距離配送を目的としており、ドアを開けたまま走行できるようにスライド式のドアとなっているのも大きな特徴だ。また用途によって90インチ(2286mm)のロングと102インチ(2591mm)のショート、2種類のホイールベースが用意された。

 ボンネット状に飛び出したフロントセクションを持つが、構造上はセミキャブオーバーレイアウトとなっており、フロントにボンネットは見当たらない。代わりに室内にはアメリカのフルサイズバンのようにエンジンにアクセスするカバーが備わり、ここを開けると1508ccの直列4気筒エンジンが見える仕組みだ。ちなみにこの時代は3速MTが組み合わされるが、後に1.6Lエンジンや4速MTも登場する。

英国の老舗コーチビルダー「ドアモービル」社によるキャンパー

 さて会場に並ぶ2台を改めて見ていこう。まずは右側のライトブルーとオフホワイトの車両。こちらは1958年式ベッドフォードCAのショートホイールベース車両をベースにドアモービル(Dormobile)社が架装したキャンピングカー仕様となっている。

 シートは倒すことでフルフラットになる仕組みだ。ちなみに後部にコンロやシンクが備わるが、現在レストア中とのことで全ての装備が備わっていない状態とのこと。ルーフはアコーディオン状にポップアップし、立ったまま調理などの作業ができるようになっている。

兵員輸送車の過去を持つロングホイールベース版

 続けてグレーの車両を見ていこう。こちらは1963年式のロングボールベース車両。通常はリヤが観音開きとなるのだが、この車両は中央のみが開くシングルドアとなっているのが珍しいそう。新車当時は軍で兵員輸送などに使用されていたそうで、セカンドシートの後ろには横向きのベンチシートが備わる。特筆すべきはロングホイールベースとなるとスライドドアも長くなるため、開口部が広くなるという点だ。ちなみにかなり大きく見えるが、ロングホイールベース車両でも全長は約4.2mと、現代の乗用車よりもはるかにコンパクトだ。

* * *

 1950年代から1960年代の欧州の「働くクルマ」というと、ドイツではフォルクスワーゲン・タイプ2(通称ワーゲンバス)が世界的なベストセラーになっていたし、フランスではシトロエンH(アッシュ)バンやルノー・エスタフェットが活躍していた。

 それらライバルと比べて、洗練されていたとは言いがたいイギリス代表のベッドフォードCAであるが、今となっては一周して、濃厚なノスタルジーを感じさせて魅力的だ。そして、あまりに不遇な評価に甘んじてきたがゆえに、ライバルたちよりも遥かにレアな存在となってしまった「ありふれたクルマ」の好例でもある。人とかぶらないクラシックカーを望む趣味人なら、一考の価値あり、である。

モバイルバージョンを終了