サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

250万km走行テスト中! ロールス・ロイス「スペクター」は2023年第4四半期にデリバリー開始

メッセージ性の強い擬装が施されたロールス・ロイス「スペクター」

「スペクター」が鋭意走行テスト中

 チャールズ・スチュアート・ロールスによって1902年に創立されたロールス社。そしてフレデリック・ヘンリー・ロイスが1884年に設立したロイス社。この両社がロールス・ロイス社として新たな歴史を刻み始めたのは1904年のこと。そのロールス・ロイスが今、まさに大きな変革期を迎えようとしている。それは同社にとって初となるBEV(バッテリーEV)の誕生である。その第1弾モデルとして、現在250万kmにも及ぶ走行テストプログラムを継続中なのが、「スペクター」と呼ばれるプロトタイプだ。

本当はBEVと相性がいいロールス・ロイス

 ロールス・ロイスといえば、もちろんこれまでは内燃機関を用いた超高級車のハイエンドを定義することで世界中のカスタマーから高い評価を得てきたブランドであることは良く知られているとおりだが、じつは彼らの歴史において電動化は、あながち馴染みがないものではない。

 創始者の一人であるフレデリック・ヘンリー・ロイスは、そもそものキャリアのスタートは電気技師であったし、エンジン開発の哲学には常に、静粛な走行や瞬時に得られるトルク、無段階のギヤ感覚など、電気自動車の特性を意識することを大きな目的としてきた。

 そして、「電気自動車は完全に無騒音でありクリーンな乗り物だ。匂いも振動もない。充電スタンドさえできれば非常に便利な移動の手段になるだろう」と1900年にはすでに予言していいたという。その予言は1世紀以上の時を経て、スペクターとして現実のものに近づきつつある、デザインスタディの「102X」、「103X」というモデルを経て。

 これらのスタディモデルが、ロールス・ロイスの未来を担うBEVに完璧にフィットするという好印象を得たカスタマーからの評価を背景に、ここでロールス・ロイス社のCEO、トルステン・ミュラー・エトヴェシュは明確な約束をカスタマーと結んだ。それは2030年までにロールス・ロイスは完全な電気自動車メーカーになるというもの。そして2021年9月、今回テスト走行の様子が公開されたスペクターの存在が明らかにされたのだ。

 スペクターのテストプログラムは、2022年初め北極圏からわずか55kmという位置にあるスウェーデンのアリエプローグにある特設のテストコースから始まった。テスト・エンジニアにとって、この場での最も重要なプログラムは、極低温という極限状態でもきちんとバッテリーが作動するかどうか等々を確認すること。その後はフランスのリビエラに本拠地を移し、ここではさまざまなシーンで約62万5000kmがテストされる予定だという。

内燃機関との連続性を考慮

 まずスペクターが訪れたのはプロヴァンス地方にある、オートドローム・ドゥ・ミラマだ。1926年にはグランプリも開催されたこのサーキットは、現在最先端のテスト、開発施設に姿を変えており、60km以上のクローズドコースと20のテストトラック環境を持ち、敷地面積はトータルで1198エーカーにも及ぶという。

 そしてその後には、プロヴァンス地方のオンロードを使用した、より日常的な使用環境に近いコンディションでのテストが継続される予定となっている。

 スペクターは、ロールス・ロイス初のBEVであるだけではなく、これまでに前例のないコンピュータパワーと高度なデータ処理技術の適用が行われたモデルだ。

 その新しい処理能力を活用することで、ロールス・ロイスの内燃機関自動車との連続性を確保しつつ、スペクターのディテールや洗練性、快適性は比類なきレベルにまで高まっているのだ。ロールス・ロイスのスペシャリストはそれを、「ロールス・ロイスの高解像度」と表現する。

新たなる魔法の絨毯の乗り心地

 サスペンション技術も、このテストプログラムのなかで一新された。前方の路面を読み取るフラッグベアラーシステムと、前方のカーブを知らせる衛星ナビゲーションシステムからのデータを活用して、新しい一連のハードウェア・コンポーネントとスペクターの持つ高速処理能力を活用した高度な電子ロールスタビライゼーションシステムが実現。

 また直線道路では、アンチロールバーを自動的に切り離す機能も与えられた。これは各ホイールが独立して作動することで、車両の片側のタイヤが路面の起伏にぶつかった時に発生する揺れを防止する役割を担う。

 コーナーが迫っていることが確認されるとコンポーネントは再接続され、コーナリング時には18個のセンサーによる監視のもと、ステアリングやブレーキ、パワーデリバリー、サスペンションを最適な状態へと調整してくれる。

 スペクターには新設計でかつ専用のアルミニウム製スペースフレームが採用されているが、バッテリー自体の高い剛性構造も、このフレーム構造の強化に貢献しているという。ボディ剛性は既存のモデルに対してねじり剛性で30%増。またエアロダイアミクスは、Cd値で0.25という数字が発表されている。

* * *

 スペクターのグローバル・テスト・プログラムはさらに継続され、100万kmの走行テストを行う予定とのこと。ちなみにスペクターのセールスは2023年の第4四半期からと計画されている。

モバイルバージョンを終了