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1014馬力の40台限定アストンマーティン降臨! 「ヴァルキリーAMR Pro」は「F1とLMPを足して2で割ったマシン」だった

フロントとサイドのウインドウはアクリル樹脂が用いられた

総合スポーツカーブランドへの先鞭をつける限定ハイパーカー

 アストンマーティン・ラゴンダは今、新たなオーナーの元でサウジアラビアを中心とした豊富な資金を得て、大胆に変わろうとしている。美しきグランドツーリングカー専門のブランドから、F1を頂点とする総合スポーツカーブランドに。フェラーリ的ビジネスモデルへの転換だ。

 まずは3億円超の限定ハイパーカーを奇才エイドリアン・ニューウェイとともに作り上げたのだ。その名は「ヴァルキリー」。さらにその高性能版にしてトラック専用マシン「ヴァルキリーAMR Pro」を発表。続いてもう少し安い、と言っても乗り出し1億円オーバーのミドシップスーパーカー「ヴァルハラ」の導入を決定する。そのうえこの先、まだ見ぬミドシップカーが登場する可能性もあるという。

開発者の理想をサーキットで実現

 新時代の幕開けを告げたヴァルキリー。ロードバージョンのデリバリーはまだ始まっていないが、後から発表されたトラック専用マシン「AMR Pro」の納車が先に始まった。公道用のレギュレーション対応がない分、作れば即販売できるのだろう。

 世界限定40台。お値段は推定4〜5億円。2022年7月、18番目の個体がついに日本にも上陸し、富士スピードウェイにてオーナーへとデリバリーされ、その場でシェイクダウン走行が行われた。

 1000psのコスワース製6.5L V12自然吸気エンジンをリアミドに搭載。バットマンカーのようなエクステリアデザインもさらに衝撃的で、ロードカーのヴァルキリーも見るからに空力の化け物だったけれど、AMR Proはさらにえげつない。高次元のサーキット走行を考慮して、全長、ホイールベース、前後トレッドといった主要ディメンションの全てが延長されており、ヴァルキリー比で2倍のダウンフォースを発生させるという。

 開発の起点はヴァルキリーベースのル・マン用ハイパーカー・プロジェクトだった。その後、レースレギュレーションの制約を受けないレーストラック専用マシンとして開発されたため、開発者が理想とした最高の性能をサーキットにおいて実現するマシンとなった。

F1とLMPを足して2で割ったマシン

 快晴のピットレーンに引っ張り出されたヴァルキリーAMR Pro。タイヤを4隅に配したジェット戦闘機のようだ。エンジン始動方法が面白い。いわゆる「押しがけ」なのだが、人が押すわけではない。電動モーターが助走を担う。数mほど電動走行したのちにV12エンジンに火が入り、ドライバーはピットレーン走行のスイッチをオフにして内燃機関をフルに回す、という仕掛け。

 パワースペックはこの日、初走行ということもあって、800psに制限されていた。オーナーの技量に合わせて、800psから900ps、そして1000psへとステップアップ可能だ。

 V12に火が入った瞬間、ピットレーンに地鳴りが起こる。強烈なサウンドをたなびかせてコースイン。遠くで雷鳴のようにサウンドが響く。あっという間にホームストレッチへ。かなり速度は抑えられているが、サウンドは高らかに響き、その音は集まったクルマ好きの表情を全て笑顔に変える力があった。

 どんどんとペースが上がっていく。サーキットに響くサウンドがさらに甲高く聞こえてきた。ストレートへ。速い、速い。サウンドトーンも明らかに違う。

 この日のヴァルキリーAMR Proはオーバー310km/hを記録。なんとも凄まじい速さではないか。

 これまでLMPマシンを含む何台ものレーシングカーを「駆った」経験があり、ル・マン24時間レースへの出場も豊富なプロドライバーの加藤寛規氏いわく、「こんな経験は初めて。ポテンシャルが高すぎるのに、とても運転しやすい」。世界のウルトラリッチなジェントルマンドライバーたちが安心してプロフェッショナルドライバーの世界を楽しめるエンジニアリングとは、なるほどそういうものなのだろう。

 この日、試乗したプロドライバーやオーナーの声を総合すれば、「F1とLMPを足して2で割ったマシン」らしい。事実、バーレーンGPの余興で走ったプロトタイプは、なんとF1マシンの予選タイムから数秒落ちで周回したという。

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