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レクサス「IS」の魅力を再検証! 大幅改良のポイントと価格据え置きの秘密まで解説

ISの走行イメージ

IS350“F SPORT”(ラディアントレッドコントラストレイヤリング)<オプション装着車>のスタイリングイメージ

フルモデルチェンジと言ってもいいほどの改良が施された!

 2020年11月にビッグマイナーチェンジを実施した、レクサスのコンパクトFRスポーツセダン「IS」。まるでフルモデルチェンジのような進化が話題となりました。今回はそんなISの大幅改良のポイントや、進化した部分に注目して解説していきます。

レクサスISの大幅改良ポイントとは?

 見た目から大きく変わったISですが、それ以上に中身のメカニズムが大幅に変わっています。トヨタ自動車は2019年、愛知県豊田市下山地区に過酷なテストコースを新設しました。ISはこの新たなテストコースをはじめ、世界中のあらゆる道で走り込み、走行性能を磨き上げてきました。

 新たな走りに効く部分で大きく変わったのがホイールの取り付け方法です。日本車ではボルトナットが一般的ですが、新型ではハブボルトに変更。これにより締結力が強化されるとともに、走行性能に大きな影響をもたらすバネ下重量の軽量化も実現しました。

 また補強やスポット打点の追加などによりボディ剛性を高め、ステアリングレスポンスと乗り心地を向上。レスポンスという面ではISはステアリングやペダルの初期の応答だけでなく、「戻す」ときのコントロール性向上にもこだわり、コーナリングの進入から立ち上がりまで、一連のドライビング操作がより滑らかで自然な仕上がりとなっています。ISはデザインが大きく変わったことが目新しく感じてしまいますが、走行性能やドライビングの楽しさに関して、非常にこだわった進化をしているのです。

レクサスISの気になるデザインとは?

 大幅改良の前後で大きく異なるISのエクステリアデザインは、知らない人からみればフルモデルチェンジかと思ってしまうほど。新型ISのデザインコンセプトは“Agile(俊敏)&Provocative(挑発的)”です。スポーツカーのようなワイド&ローなシルエットとシャープなキャラクターラインが走るそのエクステリアデザインは、スポーツセダンにふさわしいデザインと言えます。

 また、新型ISはデザインの初期段階から製品企画、生産技術、設計、デザインの各部署が一丸となって開発に取り組んでいます。多くの部署が連携して完成させたデザインだからこそ「量産車としての妥協」が少ないデザインに仕立てられたのです。とくにそれが現れているのがリヤフェンダーとトランク。リヤフェンダーのキャラクターラインはボディパネル製造工程において、内側から突き上げる成形を追加した、突き上げ工法を採用することで実現しました。

 トランクには世界初の工法となる寄絞り工法を採用。この工法は上下方向のプレスの動きに合わせて、金型が横方向からスライドするというもので、高精度でシャープな造形を新たに実現しています。

 そのほかにも、新開発の小型軽量ランプユニットを採用した薄型のヘッドライトは、シャープな印象を与える顔つきを演出。レクサスブランドらしいLをモチーフにし、そこから一文字に続くテールランプなど、灯火類はトレンドを抑えたデザインとなっています。新技術の採用とトレンドを抑えている点がデザインに表れているのが、まるでフルモデルチェンジのようだと感じさせるデザインになっている理由と言えます。

レクサスISが歩んだ進化の歴史とは

 初代ISは1999年に登場しました。しかし、そのころ日本ではレクサスブランドが展開されていなかったため、日本市場ではアルテッツァとして販売されていました。しかし、スポーティ志向が強かったアルテッツァに対して、ISは高級志向が強かったため、初代ISとアルテッツァは全く同じ仕様ではありませんでした。

 日本市場でISが発売されたのは、レクサスブランドが日本で展開された2005年のことでした。この世代は度重なる年次改良で進化を続けていきました。また、派生車種として5.0L V8エンジンを搭載したスポーツモデル「IS F」や、電動メタルトップを装備したコンバーチブルモデル「IS C」などが登場し、ラインアップのバリエーションが豊かな世代でもあります。

 現行型となる3代目(日本市場では2代目)は、2013年に登場。この世代最大のトピックスと言えるのは、IS初のハイブリッドモデルの登場です。これまでのIS同様スポーティセダンとしての魅力をさらに磨き上げるとともに、ハイブリッドモデルを追加し先進的なイメージもプラスした世代となっています。以降、先代同様に年次改良を繰り返し絶えず進化。そして、2020年のビッグマイナーチェンジによって、新世代のライバルにも引けを取らない魅力を持つスポーツセダンへと進化を果たしたのです。

じつは大きく値上がりしていないレクサスISの価格

 新型ISの価格は2.0L 直列4気筒ターボエンジン搭載モデルIS300が481万円から、2.5LハイブリッドモデルIS300hが527万円から、3.5L V6エンジン搭載モデルIS350が651万円となっています。ビッグマイナーチェンジでこれだけ大幅に進化していれば、マイナーチェンジ前に比べて価格も大幅に上がっていそうなイメージを持ちますが、そうではないのが今回のマイナーチェンジのすごいところなのです。

 具体的な金額で言えば、IS300が9万6000円アップ、IS300hが10万6000円アップ、IS350が87万6000円アップとなっています。IS350の値上がり幅が多いのは、今回のマイナーチェンジでIS350はスポーツグレードのF SPORTのみとなったためです。マイナーチェンジ前のF SPORTと比べると値上がり幅は17万2000円となっています。

レクサスISの開発秘話

 ISは今回のマイナーチェンジ時7年が経過しているということもあり、フルモデルチェンジが噂されていましたが、開発チームはISを熟成させることで進化させるという選択をしました。マイナーチェンジながらも大幅な改良が行われたIS。それでいて価格もほぼ据え置きということを考えると、開発に相当な苦労があったものと思われます。

新しいテストコースがISの走りを磨き上げた

 大幅に進化したISの評判は上々ですが、そのなかでも称賛の声が多く聞かれるのが走行性能です。先に述べたようにボディ剛性の向上やホイールの締結方法の変更など、その理由は多くありますが、ISの走りが良くなった理由にはトヨタの新しいテストコースである「Toyota Technical Center Shimoyama」の存在が大きく影響しています。

 2019年に運用が開始されたこのテストコースは、世界一過酷と呼ばれているドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」のオールドコースを長年走りこんできた経験を基に設計されました。高低差75m、全長5.3kmのこのコースはサーキットというより、ワインディングという印象が強く、クルマやドライバーに求めるものが多いです。

 自然の地形に沿ったワインディングのようなコースという点は、まさにニュルブルクリンクにそっくりと言えます。新型ISはこのコースを走りこんで開発された量産車第一号です。過酷な環境を走り込んでテストをすれば、走行性能に優れたクルマを開発しやすくなります。そして、このテストコースを本社近くに所有しているということが最大の利点。テスト走行で発見した疑問点を迅速に修正したり、さまざまなトライをすぐに試したりすることができ、効率的に開発ができるのです。

 本社近くにある難易度が高いワインディング「Toyota Technical Center Shimoyama」の存在が、新型ISの走りの良さを実現したのです。

ドライバーとの対話を重視して開発

 新型ISの開発でもっとも重要視されたテーマは、ドライバーとクルマの対話。そのため、ドライバーに無駄な振動や騒音を与えないための開発が行われました。その結果、ドライビングに必要な情報は残しつつも静粛性や乗り心地を向上させることに成功し、より上質なクルマへと仕上がりました。

 この対話という面は先に述べたアクセルやハンドルを「戻す」ときのコントロール性にも表れています。この対話を重視した結果が、ブレーキングでの荷重コントロールや、FRだからこそできるアクセルコントロールを生かしたコーナリング特性などを実現しました。

 パワーユニットは、マイナーチェンジ前と基本的な変更は行われていませんが、それぞれ細かな見直しや改良が施されています。そのなかでもっとも大きな改良となったのがハイブリットです。これまでのハイブリットは燃費を重視していましたが、新型ではスポーツセダンにふさわしいドライビングの楽しさを追求。力強さやレスポンスを意識した制御になっており、運転が楽しいハイブリットに仕上がっています。

誕生から7年が経過し大幅進化したレクサスISの今後に期待

 7年を迎え、マイナーチェンジという形で大きな進化を果たしたIS。単なる「延命」のマイナーチェンジであれば、ここまでの大幅変更は行われないでしょう。それはISがコンパクトスポーツセダンとして進化する上で、既存のプラットホームを使うのがベストな選択であると開発陣が判断した結果であり、フルモデルチェンジ並みの意気込みで行われた進化と言えます。

 進化したISは決してフルモデルチェンジでなくても、最新モデルに引けを取らない魅力的なスポーツセダンへと生まれ変わったのです。

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