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フィアット「デュカト」のご先祖さま「238」と「241」とは? いまキャンパー仕様やキッチンカーとして注目集まる

1970年式フィアット238ハイルーフ・バン

海外の風土や国民性を濃厚に感じられるのが「商用車」

 わが国で趣味のヒストリックカーといえば、とかく往年のスポーツカーや懐かしのセダンなどが脚光を浴びがちだが、もちろん商用車、例えばダイハツ「ミゼット」やマツダ「K360」といった一世を風靡したオート三輪や、初期の「トヨエース」など、かつて我々の生活に欠かせなかった「働くクルマ」を大切に維持しているファンも少なくない。

 ただ、今回ご紹介する欧州生まれの旧いコマーシャルカーとなると、さすがにわが国ではほとんど見かけることもなく、その知名度自体、決して高くない。逆に言えば、だからこそ「趣味物件」としての魅力は大きいとも言える。

1960年代生まれのフィアットのバンとトラックを紹介

 古くから日本でも知られる海外の商用車といえばフォルクスワーゲン「タイプ2」(T1/通称ワーゲンバス)、あるいはシトロエン「Hバン」あたりだろうか。それらが現役だった時代には合理的で実用的な商用車として、そして現在では完全な趣味のヒストリックカーとして、あるいは他とはひと味異なるキッチンカーやキャンパーのベースとしても注目が集まっている。

 そんな昨今の流れの中で「同じヒストリック商用車ならば、さらに人と違ったものを」と考える趣味人に向けて、それらの販売を行なっているのが「晨風」だ。ここでは同社が現地から輸入した、日本ではほとんど見かけることのない1960年代生まれのフィアット製コマーシャルカー2台をご紹介しよう。

かわいい見た目に大容量スペースのフィアット「238」ハイルーフ

 まず最初は赤いボディのバン。1960年代のフィアットは3桁の数字で車名を表すのが基本だが、こちらもその例に漏れず「フィアット238」という名の商用車だ。1967年から1983年までの長期にわたって生産されたことからイタリアでは非常にポピュラーな存在で、わが国で言えばトヨタ「ハイエース」のような存在にあたるだろう。このモデルの最大の特徴は、フィアットの量産車としては初の前輪駆動(FF)であるということ。

 フィアットは自社のモデルに本格的にFFを採用する前に、そのノウハウを蓄積するパイロットモデルとして傘下のアウトビアンキ「プリムラ」でひと足早く前輪駆動車をリリースしているが、このフィアット238はそのプリムラのシャシーをベースにフィアット「124」の1.2Lエンジンを組み合わせて生まれた。

 お隣フランスのシトロエンHバン/トラックと同様、FFならではのボディ後部の設計の自由度を活かし、バンからトラック、特装車までさまざまなバリエーションが存在するが、こちらの取材車は1970年式のハイルーフ・バン。同じハイルーフのバンでもVWタイプ2とは異なり、荷室部分のみがかさ上げされている外観がユニークだ。ちなみに実車の全長、全幅、全高は4600×1835×2270mmと、最新のトヨタ・ハイエースに近いサイズだ。

オバフェンの「500」も余裕で積める「241」トラック

 もう1台の白いフィアット製商用車は「241」と呼ばれる小型トラック。見た目は238とほぼ同じに見えるが、こちらはコンベンショナルなフロントエンジン・リヤドライブ(FR)。縦置きエンジンのカバーが左右の座席の間に大きく張り出すため、3人乗りの238と異なりシートは2座となる。1965年から1974年にかけて生産され、やはり様々なボディ・バリエーションが存在した。

 エンジンは1.5Lのガソリン、もしくは1.9Lディーゼルが用意されたが、ここで紹介する1972年式の個体は1.5Lのガソリン車。コラムシフトの4速というところに時代を感じさせる。イタリア現地ではプライベート・レーシングチームのトランスポーターとして使われていたそうで、現状では車両積載時に使うラダーや車載ウィンチなどの装備もそのまま残っている。まるでコンテナそのものような無愛想で潔い大容量の荷室も好ましい。

 この原稿を書いている時点ですでに238は売約済みで、新たなオーナーはキッチンカーとして改装する予定とのこと。そしてこちらの241も、日本における第2の人生においては同様の使われ方が想定されている。

地元イタリアでは長く愛されてきた身近な存在

 フィアット238や241は、母国イタリアでは数多くのミニカーにもなっていることからも分かる通り、かの地では非常に一般的な存在で、ヒストリックカーとしての認知度も高い。しかし、もちろん日本ではそうではない。それは欧州の人々が初代「トヨエース」に郷愁を感じないのと同じ理屈であろう。

* * *

 この238や241を今「ヒストリックカー」として気候も風土も異なる異国の地・日本で使うということは、そのクルマを通してかの地の国民性や気候・風土を、時代を超えて追体験するということにもなる。古いスポーツカーやセダンに比べてさらに土着性が高い各国のヒストリック・コマーシャル・ビークルをあえて手に入れるということは、そんな崇高な趣味心の発露ともいえよう。

■車両取材協力

晨風
住所:千葉県市原市千種1-8-1
TEL:0436-20-2777
https://shinpu.jpn.com

■ミニカー協力

サンリッチジャパン
https://www.sunrich.jp

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