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本領発揮はサーキット! NISMOのRB26DETT用最新メニュー「R3エンジン」を独占試乗

R3エンジン搭載のZ-tuneプロト走行シーン

珠玉の「NISMO R3エンジン」を公道で初試乗!

 平成元(1989)年の登場から30年以上を過ぎても、第2世代のスカイラインGT-R専用エンジン「RB26DETT」の実力はまだまだ一線級だ。直列6気筒ならではのスムーズなフィールとツインターボによる鋭い吹け上がりは、今もGT-Rファンのハートを鷲掴みにしている。日産ワークス『NISMO』が仕立てた最新メニュー「R3エンジン」はどんな世界を見せてくれるか? どこよりも早く『GT-R Magazine』がR3エンジン搭載車に公道で試乗することができたので、そのファーストインプレッションをお届けしたい。

(初出:GT-R Magazine 163号)

正常進化型「R3」はワークスの技とプライドの結晶

「GT-R Magazine」が試作のテスト段階からその動向を追い掛けてきた『NISMO(ニスモ)』のRB26DETT新メニュー「R3エンジン」。令和3(2021)年12月17日より正式にリリースされ、発売直後から受注も好調とのことだ。

 平成13(2001)年、NISMOの熟練メカニックの手による高精度バランス取りやポート研磨などを施したRB26「R1」が登場。新品エンジンベースのコンプリートのほか、ユーザーのエンジンをリフレッシュした上でR1のメニューを施工することも可能であった。現在市場で主流となっているリフレッシュを兼ねてステップアップするエンジンオーバーホールの先駆けが、NISMO R1だったと言えるかもしれない。

 その内容は、R34純正N1ターボをベースとしたR1ターボや純正N1ブロック/ピストンなどを採用し、サーキット走行までカバーする高性能なエンジンメニューとして人気を博した。平成23(2011)年には、専用カムシャフトやR35純正インジェクターなどを新採用した「R2」へとリニューアルしている。

 そして今回、最新版の「R3」へと進化を果たした形だ。最大のトピックは従来のR1ターボ(R34純正N1ターボ+強化アクチュエータ)に代わり、NISMOオリジナル仕様のR3ターボが採用された点である。ボールベアリング式である点は共通ながら、従来型とはコンプレッサーや羽根の形状が異なっており、R2のピークパワーをキープしたまま低中回転域のトルク向上を実現。インジェクターに加えてエアフロメーターもR35純正とすることで、よりキメ細かいECM(エンジン・コントロール・モジュール)セッティングも施されている。

完成したエンジンはベンチで慣らしを経てから車両に搭載!

 NISMOのエンジンメニューのスペック(最高出力および最大トルク)はS2/R2以降公表されていないが、初代のR1が最高出力=450psを謳っていたことから、進化版のR3の実力も自ずとイメージできるはずだ。ストリートでも安心して長く乗れるハイエンドレベルにあると想像できる。イタズラに数字を追い求めるのではなく、施工後1年間または1万kmの保証が適用される点もメーカーならではと言えるだろう。

 これまでに1000基以上のエンジンを組み上げてきた、実績のある大森ファクトリーの専任メカニックが精密に組み上げるRB26は性能にバラツキがない。誰が組んでも同じ性能が出せるようにメカニックの作業スキルのクオリティがコントロールされていることに加え、組み上がったエンジンはすべて社内のエンジンベンチ室で初期ラッピングと動作および性能確認を実施。性能的な個体差(バラツキ)がなく、初期の慣らし運転の必要がないという点もNISMO製エンジンの強みである。

 R3エンジンの販売価格はベアエンジンベースで548万4630円~(部品代+工賃)。ただし、現在はRB26のベアエンジン入手に2~3年もの期間を要するということで、ほとんどのユーザーは自身の車両のエンジンをベースに分解リフレッシュをした上でR3エンジンメニューを施工するとのこと。ベースエンジンの状態により価格は変動するが、概ねベアエンジンベースでの販売価格に近いということだ。

新型R3ターボの採用で今までにない乗り味を実現

 今回、リリースされたばかりのNISMO R3エンジンを搭載するR34型スカイラインGT-Rのデモカーに試乗する機会を得た。このエンジンに標準採用されているNISMOのR3ターボとフューエルキットはGT-R Magazine所有のスタッフカー(R34 V-spec II Nur)にも装着しており、純正N1ターボに対して低中速域でのアドバンテージがあることはすでに体感済みであった。

 大森ファクトリーで試乗車のR3エンジンに火を入れると、アイドリングからして普通のRB26ではないことがすぐにわかる。セル一発で始動した直後から「ドオゥドッドッドッ」というハイカム特有の勇ましい鼓動を感じる。走り出す前からすでに気分は盛り上がっていた。

 駐車場から一般道へ出ると、低回転域からアクセルのツキがリニアで、周囲の流れに合わせてゆっくり流すのも容易だ。R3よりも小型のR34標準車用タービンを採用するS2エンジンに比べれば低速トルクは細い。とはいえ、もどかしさを感じるレベルではなく、普通に街中を走るぶんにはまったく不満はない。下道では実力の片鱗を覗き見することすら無理と感じ、高速道路に乗り入れた。勾配のきついジャンクションでもトルク不足を感じることなく、4速ギヤでも余力を持って本線に合流することができる。3500rpmくらいまでは至って優しいフィーリングだ。

高回転域の伸びと硬派なサウンドに気分もアガる!

 ちょっと前が空いたところでシフトダウン。少し強めにアクセルを踏み込むと、3500rpmを超えたところからググッとトルクが湧き出し、4500rpm以上では周囲の景色が後方に吹っ飛んでいくかのような凄まじい加速を見せる。公道でその実力をフルに引き出すのはもはや無理である。ノーマルのRB26(280ps)ならばまだしも、R3エンジンの本領を発揮するにはクローズドのサーキットに出向くしかなさそうだ。

 ちなみに、今回の試乗車はNISMO R34GT-R Z-tuneプロトで、アンダーコートや遮音材が省かれていることもあり、車内に侵入してくる音は普通のR34に比べるとかなり盛大であった。エンジンのメカノイズも耳に届くし、アクセルオン/オフでの吸気音とターボからの吹き返し音も威勢良く聞こえてくる。それが中高回転域が気持ち良いR3エンジンの特性に絶妙にマッチ。これはゆったりとドライブするためのエンジンではなく、GT-RをGT-Rらしく走らせるための強力な武器になると感じた。

R3エンジンのパワーは体感的に450ps以上!?

 マフラーはR3エンジンに推奨となる新型のエキゾーストシステムNE‒1チタンが装着されており、従来のチタン製よりも明らかに抜けがよく、中速からトップエンドまで一気に突き抜けるR3エンジンの特性を上手く後押ししているようだ。音量よりも排圧の低さを優先したとのことだが、そのサウンドは試乗車がZ-tuneプロトであることを差し引いても従来品と比較して硬派なイメージだ。たまにはレッドゾーンまでキッチリと回すという方なら、新タイプのNE‒1チタンのほうがその気になれるだろう。

 R3ターボの特性から、R3エンジンも下からトルクがフラットに出てくると想定していたが、低速域よりもむしろ中高回転域でのパンチのほうがインパクトがあった。ちなみに、マルチファンクションディスプレイでブースト圧を確認してみたが、オーバーシュート時のピーク値で約1.4kg/cm2、安定圧は約1.2kg/cm2だった。その辺から察するに、初代R1の450psに対して最高出力は間違いなく向上していると思う。

 なお、今回は試乗できなかったが、R3とは別に2.8Lに排気量アップする「R4エンジン」も同時にリリースされている。こちらは全域でR3以上のパフォーマンスを発揮するというので、今度はぜひサーキットでその刺激を堪能したい。

(この記事は2022年2月1日発売のGT-R Magazine 163号に掲載した記事を元に再編集しています)

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