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913万円の「コンプリートエンジン」も受注絶えず! いまチューニングメーカーで組んだエンジンが引っ張りだこの理由とは

HKSの86/BRZ用コンプリートエンジン「FA20 2.2L STEP 1/2/3」

ちょっと高価でも受注が絶えないほどの人気ぶり

 HKSやNISMOなどから販売されている「コンプリートエンジン」。メーカーでチューニング済みのエンジンは、ユーザーが普通にチューニングするのと何が違うのだろうか。コンプリートエンジンの魅力を解説していこう。

最大のアドバンテージは経験値と熟練の技

 コンプリートエンジンとは、高度なチューニングが施されたうえで完成している状態のエンジンのこと。HKSでは86/BRZ用の2.2L仕様だけでも3ステップあり、253万円/363万円/468万6000円と、かなりお高い。R35 GT-R用だと660万円/825万円/913万円と、これまた高い。NISMOではRB26エンジンはS2エンジンが511万3770円~、R3エンジンは548万4630円~となっている。

 いずれも車両価格を超えるほどの値段だが、その受注は絶えないという。その人気の秘密は、熟練の技にある。

 エンジンパーツは各メーカーからリリースされていて、そのパーツチョイスももちろん重要だが、じつはそれ以上に大切なのが経験値だ。

 エンジンチューンでよく知られているのはポート研磨。燃焼室やそこに通じるポートを手作業で削っていく。その形状をどうしたら効率が良くなるのかはチューナーの経験値による。ただ削ればいいというものではなく、削り過ぎは逆効果にもなる。

 表面処理も重要で、ツルツルの鏡面仕上げが良いとか、鏡面よりもわずかに荒れていた方がいいとか、様々な意見もある。そういった部分はエンジンごとにも異なるので、たくさん組んで結果を見てきたチューナーの方が有利なのだ。

 同じようにクランクメタルのクリアランスなども純正指定値とは異なる値で組むのがチューニングエンジンでは一般的だ。そういったノウハウの積み重ねがパワーやトルク、フィーリングの差になり、どこそこのエンジンは速いという話になるのである。

市井のベテランメカニックが減ったことが背景

 また、近年ではそういったチューニングエンジンの加工をできる内燃機屋も減りつつある。シリンダーのボーリングやヘッドの面研などが内燃機屋の仕事であり、ショップから指定された数値で加工するが、加工のやり方にもノウハウがある。有名ショップはほぼ間違いなく信頼する内燃機屋があり、そこに加工を依頼する。内燃機屋を変えたら、イマイチ数値がビシッとしていないなんて話もあるほど。全国的にも有名ショップが頼る内燃機屋は数軒と言われていて、技術力の高い内燃機屋とのつながりがあるかも仕上がりに関わってくるのである。

 そういったノウハウの凝縮だけに、ベテランスタッフなどが退職していった結果、自社でエンジンを組めるショップが減っている。とくにタイヤショップなどのライト系なチューニング店では、ベテランスタッフがエンジンのノウハウも持っていたけれど、彼らの退職後はエンジン組み直しなどの仕事が受けられないという例が増えている。

 そこでチューニングメーカー側で組んだエンジンを出荷してほしいとの要望が多かったのだそうだ。こうした希望に応える意味もあって、HKSではコンプリートエンジンを展開しているという。

 チューニングメーカーでは数多くの経験値があり、ポート研磨の形状や処理も最適な状態を把握。各部のクリアランスなども最適な値を把握しているので、最高のエンジンが提供できるのである。

 エンジンに関する試行錯誤をして完成させ、実際に回して出力を把握して、再度改善を試みることは膨大な時間とお金が必要になる。であれば、専門メーカーからノウハウたっぷりのエンジンを購入したほうが間違いがない。コンプリートエンジンは高いけれど、それらのプロセスを勘案すれば、むしろ安いチューニングなのだ。

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