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ロータスを復活させた「エリーゼ」のシャシーは68キロ! 軽さこそ正義の「Mk1」はスパルタン過ぎました

車両重量は690kg

ロータスのDNAが継承された1台だった

 かつて栄華を誇っていたイギリスの自動車産業は、今や国内メーカー(ブランド)の多くが海外メーカー/資本の傘下に組み込まれるなど、厳しい時代を迎えています。そんななか、クルマ趣味の王道として根強い人気を保っているのがロータスです。レーシングカーでその歴史が始まり、かつてはF1GPでトップに立ったことのあるロータスらしく、軽量こそ正義を貫くロータスの中でもスパルタンなエリーゼMk1を振り返ります。

バックヤード・ビルダーから始まった歴史

 ロータスは、故コリン・チャップマンがロンドン大学の学生だった当時、アルバイトとして売買していた中古車の1台を自らのレース用に仕立てたことが起源です。当時付き合っていた彼女で、のちにチャップマン夫人となるヘイゼル・ウィリアムズの実家のガレージで、ワンオフに近い状態のレーシングカーを作り続けた“バックヤードビルダー”でした。

 大学を卒業し兵役についたチャップマンは、退役後にブリティッシュ・アルミニウム社へ就職し開発技術者として勤務。勤務を終えると新型マシンの構想を練る日々が続いていました。1952年にはロータス・エンジニアリング社を設立したものの、ブリティッシュ・アルミニウム社での勤務を終えるとロータス・エンジニアリングの仕事に精を出すという日々が続いていました。

 1954年にはヘイゼルと結婚し、ブリティッシュ・アルミニウム社を退職。ロータス・エンジニアリング社に専念することになります。

ロータスの発展を支えたエリート

 話は少し前後しますがロータス・エンジニアリング社を設立した翌1953年に、ロータスとして初の量産モデル、マーク6が登場。さらに1957年のロンドン・ショーにおいてはオープンホイールのスポーツカーである“セブン”とともに、ロータスとしては初となるクローズドボディのGTスポーツ、タイプナンバー14を与えられたエリートが登場しています。

 エリートには、ロータスとしてはもちろん、世界初となるポリエステル積層材を使ったガラス繊維強化プラスチック(FRP)製モノコックを採用。エンジンやフロントサスペンションのマウント部分には鋼板のサブフレームが取り付けられ、またドア・ヒンジやフロントのウインドスクリーン部分には鋼管(角パイプや丸パイプ)で補強が施されていました。

 リヤサスペンションに関してはコイルスプリング/ダンパーユニットの頂部とラジアスロッドの前端は、FRPモノコックに直接取り付けられるという革新的な構成でした。エリートは大ヒット商品となり、ロータスの発展を支えることになったのです。

 その後もエランやヨーロッパ、エラン+2、エスプリなど数々のスポーツカーをリリースしていき、バックヤードビルダーは、いつのまにか自動車メーカーとしても確立することになります。またフォード・コーティナ・ロータスのような大メーカーのクルマ開発をアシストする仕事でも、高い評価を受けるようになっていきました。

 しかし1982年に創業者であるチャップマンが急逝すると、状況が変わってきます。経営難が深刻化し、1986年にはゼネラルモータース(GM)の傘下に入り、グループ内のスポーツカーメーカーとしてスポーツモデルの開発などを担当することになったのです。

 さらにその後、GMの経営状況が悪化しブガッティに売却されるもブガッティ自体が破産、1996年にはマレーシアの国営メーカーであるプロトンに売却されることになりました。そんなローリングストーンとなったロータスをよみがえらせることになったのが、今回の主人公エリーゼでした。

ロータスのDNAとなった「軽量こそ正義」

 エリーゼは1995年のフランクフルトショーでデビューしています。レーシングカーでも長年戦ってきたロータスだけに、スポーツカーの永遠の真理である「軽量こそ正義」が企業DNAとして根付いていたのでしょうか。最大の特徴は軽量化を徹底的に追求したことでした。軽量化の手法としては、まずはシャシーの構成が挙げられます。

 当時スーパーカーではカーボンファイバーで成形したモノコックを採用するケースも出てきていましたが、軽量コンパクトなスポーツカーにおいてはコストも考えておかなくてはなりません。そこでロータスが考え出したのがアルミ合金製のパーツを接着剤で接合して組み立てたバスタブ形状のフレームに、FRP製の外装パネルを組み付けたボディの構成でした。

シャシー単体重量は68kg

 先に紹介したエリートではFRPのバスタブを鋼管で補強したフレームを採用した経験もありましたが、よりハイパワーを生み出すエンジンや進化したタイヤなどを考えるなら、もう少し剛性を挙げておきたいところです。そこでアルミ製のモノコックとなるのですが、通常ならパネルを折り曲げてツインチューブを成形し、リベットを使って接合します。

 しかし近代のロードカーとしてはスペース効率も考えておく必要があります。そこでロータスではアルミの押し出し材で基本骨格を構成し、それらを接着剤で接合する方法をとったのです。結果的にシャシー単体で68kgに収まり、軽量化に大きく寄与しました。

 2001年には対衝突の車両規制に対応するためにモデルチェンジを経てMk2(あるいはシリーズ2)に移行。その際に少し重くなってしまいましたが、エアコンやパワーステアリングなどが省略されていたMk1(あるいはシリーズ1)では車両重量は690kgに抑えられていました。軽量こそ正義。ぜひとも見習いたいものです。

 エリーゼのもうひとつの特徴は、さまざまなバリエーションが存在していたことです。国内に正規に輸入されたモデルとしては、Mk1(あるいはシリーズ1)では当初はスタンダードモデルで、ローバー社から提供されていた1796cc(ボア×ストローク=80.0mmφ×89.3mm)直4ツインカム/最高出力は120psのKシリーズ・ユニットを搭載した111のみでした。

軽量を貫いたMk1こそロータスの真骨頂

 1998年にKシリーズにVVCが組み込まれた最高出力145psユニットが搭載された111Sが追加されています。また派生モデルの340Rや高性能なクーペバーションとしてのエキシージもリリースされています。2001年にはMk2(あるいはシリーズ2)に移行し、さらに2010年にはマイナーチェンジを受けてMk3(あるいはシリーズ3)に移行していますが、そのいずれにもさまざまなバリエーションが登場しています。

 ただし「軽量こそ正義」を貫いていたという点では、最初に登場したMk1(あるいはシリーズ1)の初期ロットのモデル(以後のモデルではスチール製に置き換えられるリヤのハブキャリアやブレーキローターにアルミ製の軽量なパーツが使用されていた)に勝るものはありませんでした。

 ただオーバー5LのV12が搭載されているような“スーパーカー”とは異なりエンジンは直4で、アンダーパワーでも十分なパフォーマンスを示していたのはすべて「軽量こそ正義」を実践していたからでしょう。経営体制が変わろうともロータスのDNAは継承されています。

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