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憧れの「チャレスト」は2500万円! フェラーリ初の量産ハードコア「360チャレンジ・ストラダーレ」とは?

チャレンジ・ストラダーレであることをもっとも認識しやすいのはリヤまわりだ

軽量、高性能を純粋に求めた1台

 スーパースポーツ、あるいはハイパフォーマンスカーの軽量・高性能版、いわゆる「ハードコアバージョン」は、開祖ともいえるポルシェはもちろん、今ではランボルギーニやBMWでも定番のジャンルとなっている。

 このジャンルにフェラーリが初めて送り込んだのが、2003年デビューの「360チャレンジ・ストラダーレ」だ。当時は発表からほどなく完売となってしまったことでも知られる人気モデルとなった。

 誕生から約20年の時を経た今となっても、コレクターズカー市場における人気は変わらないことを示すように、2022年11月5~9日にRMサザビーズ欧州本社が、その本拠地である英国ロンドンにて開催した「LONDON」オークションにて、1台のチャレンジ・ストラダーレが競売のステージに上ることになった。

フェラーリ初の量産ハードコアバージョンとは?

 フェラーリでは「348」時代からの伝統にしたがって、後継の「355」シリーズでも、ワンメイクレース「フェラーリ・チャレンジ」を開催。自社のスポーツイメージを市販モデルについても高めることに努めていた。しかしこの段階では、ポルシェで言えば964系や993系の「911カレラRS」や996以降の「911GT3」に相当するような、レースカー譲りのテクノロジーを投入したハードコアモデルを販売するまでには至っていなかった。

 ところが、1999年にデビューした「360」シリーズでは、「360チャレンジ」やGTレース用の「360GTC」などのレーシングモデルで獲得したノウハウを投入。スパルタンに仕立てたハードコアモデル「360チャレンジ・ストラダーレ」が、2003年からモデル最終バージョンとして登場することになる。

 360チャレンジ・ストラダーレに搭載されたV8エンジンは、「360モデナ」用をベースに圧縮比をアップ、さらに吸排気系システムやピストン形状変更、インテークマニフォールドの研磨、ECUプログラミングの変更などのチューニングで最高出力425psを発揮した。

 その一方で、F1GPの現場からフィードバックした技術によりサスペンションやホイールボルト、ダンパーにはチタン合金。ドアパネルなどにもカーボン素材を採用した。またフロントとリヤのバンパーは、サーキット専用車「360チャレンジ」からヒントを得た「レジン・トランスファー・モールディング」工法で成形するなどのデバイスの積み重ねにより、対360モデナ比で110kgにもおよぶ軽量化も果たしている。

 くわえて、フラッグシップの「エンツォ」から流用したカーボンセラミックディスクブレーキなどのハイスペックなコンポーネンツは、クラス最高といわれたロードホールディングに貢献。さらに、大型のフロントスポイラーや後端をつまみ上げた形状としたリヤのエンジンフード、さらに大型のディフューザーを採用したことでダウンフォースは50%も拡大したこともあわせて、まさに「究極のストラダーレ360」となった。

 当然ながら、走行性能は360モデナから大幅にアップを果たした。0-100km/h加速は4.1秒、最高速はV8ピッコロフェラーリとしては初めて300km/hの大台に到達。そしてピスタ・ディ・フィオラーノでのラップタイムを、3.5秒も短縮することに成功したのだ。

落札価格2500万円は、このモデルとしてはリーズナブル?

 こうしてフェラーリ初の量産ハードコアモデルとなった360チャレンジ・ストラダーレは、インテリアでは360モデナのオプションであるカーボンファイバー製シート(チャレンジ・ストラダーレでは標準装備し、意外と重量のかさむ本革レザー)をアルカンターラに、ドアウインドウをレキサン製に変更することもできた。またオーディオシステムも、軽量化のため非装備とすることも可能になっていたという。

 今回のRMサザビーズ「LONDON」オークションに出品された360チャレンジ・ストラダーレは、マラネッロから1288台がラインオフされたうちの1台。2004年1月8日に初登録されたこの個体は、若干朱色がかった赤「ロッソ・スクーデリア」に、「ネロ(黒)」本革レザー/アルカンターラ混成のインテリアという、360チャレンジ・ストラダーレのイメージカラーが新車時代から維持されている。

 ただし同じくチャレンジ・ストラダーレを象徴していた、イタリア国旗の三色旗をイメージしたオプションのストライプ塗装は、この個体には施されていない。

 今回のオークション出品にあたっては、純正オプションのボディカバーのほか、英国「British Motor Trader」2013年版の適合書類のインボイスと、同じオーナー名でドイツ当局とやり取りした書類などが添付されており、このフェラーリが長らくイギリスおよびイタリアで過ごしてきたことが判るとのことである。

 RMサザビーズ欧州本社の公式ウェブカタログいわく、フェラーリ360モデナとしてはもっとも好ましいバリエーションのひとつであり、その魅力はネロにロッソという長年にわたって好まれる色の組み合わせによってさらに増しているという、このフェラーリ360チャレンジ・ストラダーレには、オークション出品者である現オーナーとの協議の結果、13万~16万ポンドというエスティメート(推定落札価格)が設定された。

 そして11月5日に行われた競売では14万9500ポンド、つまり日本円に換算すれば約2500万円で落札されることになった。

 このプライスは、エスティメートの想定内であったこと、スタンダード版の360モデナF1仕様が通常1000万円前後で流通している事例が多いことを思えば、その2倍以上に相当するがゆえに、出品者にとっても満足すべきものだったのかもしれない。

 しかし、今年前半には邦貨換算で4000~5000万円で取り引きされる事例も散見されたことから、ひところはもっと盛り上がっていたこのモデルのマーケット相場も、少しばかり沈静化したという見方もできるようだ。

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