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【特別インタビュー】高瀬嶺生会長に聞く、「NAPAC」の社会的意義と設立の経緯とは? 「品質基準の認定作業と正しい使用方法の啓蒙活動」

NAPAC会長高瀬嶺生氏に、NAPAC設立の経緯を伺った

「NAPAC」とはどのような団体か

 一般社団法人である日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会、NAPAC(ナパック:Nippon Auto Parts Aftermarket Committee)は、品質基準を設けることで安心・安全なカスタマイズパーツを世界の市場に届けるのと同時に、カスタマイズパーツの振興を図るという目的を持った団体だ。

 ここはスポーツパーツの品質基準を担保するためのASEA(アセア:Autosports & Special Equipment Association)と軽合金製ホイール(アルミホイール)の品質基準を担保するためのJAWA(ジャワ:Japan Light Alloy Wheel Association)、保安基準を遵守しスポーツマフラーの普及に努めるJASMA(ジャスマ:The Japan Automotive Sports Muffler Association)という3つの事業部から成り立っている。各事業部にはカスタマイズパーツを開発・製造する企業が加盟していて、それぞれが安全基準を保ったアイテムを開発することでカスタマーの安全を守り、また行政への働きかけをおこなっている。

「NAPAC」設立の経緯とは

 NAPACが設立されたのは2004年11月のことだった。それまで個別に安全基準を設けて活動していたASEAとJAWAが統合。2017年には一般社団法人としてスタートしている。そこにJASMAが2022年10月に合流することで、カスタマイズパーツの主なカテゴリーを統括する団体となった。

 そこでAMWでは、どのような経緯でこのNAPACが設立されることになったのか、また現在の活動内容などについて、NAPAC会長高瀬嶺生氏にお話をうかがった。

──最初に、NAPACの設立の経緯と、JAWA、ASEA、JASMAそれぞれの活動を教えていただけますか?

「日本におけるアフターパーツ団体を統括しているのがNAPACですが、その柱となっている3つの事業部は、もともとそれぞれの活動をおこなっていました。まず最初に設立されたのはJAWAです。1972年(昭和47年)4月に設立されたJAWAは、軽合金ホイールの粗悪品を排除し、国土交通省が定める『軽合金製ディスクホイールの技術基準』に適合した製品であることを担保するための試験を第三者機関である日本車両検査協会でおこない、さらに試験に合格した製品を自動車用軽合金製ホイール試験協議会(JWTC)が定めているVIA登録をおこなうことで、ホイールの安全性や品質の維持を図っています。

 ASEAは1981年(昭和56年)10月に設立されました。この団体は日本のモータースポーツに参加し、それによって得られたノウハウを元としたモータースポーツパーツやアクセサリーを開発、販売していた企業、また海外のモータースポーツパーツを輸入、販売していた会社が設立したものです。

 設立当時の日本は、公道を走るクルマには自動車メーカーの純正パーツしか装着ができなかった時代でしたが、安全で高品質なパーツをつくり続けていくことで認知度を上げていき、1995年(平成7年)の法改正によってカスタマイズの自由度は大きく広がりました。もちろんそこには、それまで以上に大きな安全に対する責任が伴います。ASEAではモータースポーツへの積極的なサポートをおこない、良質かつ安全なパーツであることを確認するASEA基準の設定、粗悪品の排除にも取り組んでいます。

 最後にJASMAですが、設立は1989年(平成元年)8月のことでした。マフラーというのはエンジンの性能向上を図るときに大きな役割をはたすものですが、その一方で騒音や排気ガス、熱害といった悪影響ももたらしやすいパーツです。その部分から、保安基準を満たす製品の認定作業をおこなうとともに、モータースポーツ用製品の正しい使用方法の啓蒙活動も合わせておこなうことで、健全なクルマ社会の発展に寄与しよう、というのが設立の意義となります」

どんな活動を「NAPAC」は行っているのか

──現在、NAPACでは一般のユーザーに認知してもらうどのような活動をなさっているのでしょうか?

「NAPACでは現在、この3つの事業部がそれぞれ、安全・安心を守ることに関しての活動をおこなっています。その上でNAPACとしては、大阪オートメッセや東京オートサロンなどといったイベントへの参加や、スーパー耐久シリーズへのスポンサード、毎年8月2日の『オートパーツの日』、富士スピードウェイでの『NAPAC走行会』開催などといった活動を通じて、クルマのカスタマイズ文化を積極的にPRしています」

トヨタガズーレーシングGR86/BRZカップの公認パーツ制度について

──GR86/BRZカップにNAPAC指定・認定品を使うことが認めらてれいますが、その効果はどのようなものがあったのでしょうか。

「2022年にはじまったのが、トヨタガズーレーシングGR86/BRZカップの、プロフェッショナルシリーズ、クラブマンシリーズにおける公認パーツ制度です。GR86とBRZのCup Car Basic車両だけが参戦できるワンメイクレースのプロフェッショナルシリーズ、クラブマンシリーズではNAPAC指定・認定品を使ったカスタマイズが認められています。これはNAPAC指定・認定品が公道を走行して問題がない品質をクリアしているのに加えて、サーキット走行におけるクルマの機能を向上させるものであると認められたことからはじまったものとなっています。

 トヨタに認めていただいたということは、NAPACにとっても大きなポイントとなりました。具体的にいうと、このGR86/BRZカップの指定・認定制度が始まってから、NAPAC会員企業が増加しています。つまり、NAPACの会員企業であることが、アフターパーツ業界におけるステータスとなってきているわけです。もちろんNAPACに参加するということは、製造する製品は安全基準をクリアしていなければなりません。そのことは市場に安全・安心なパーツが増える、ということでもあります。

 また、このレースで使うことができる公認パーツは信用できるものである、というイメージが確立されたというのも、大きなポイントです。ここから先はわれわれの努力もさらに必要となりますが、安全・安心なパーツ開発を続けていくことで、よりたくさんの車種に対してNAPAC指定・認定品を使っていれば安全であり、機能的にも優れたものになる、と認識していただけるようにしていかなければなりません。

 そのためには、NAPACに参加している企業がそれぞれに製品の開発を続け、そこで得た安全に関する情報を共有していかなければなりません。とはいっても、各企業は市場においてはライバルですから、難しい部分もあります。しかし自動車業界全体を見たときには、ひとつになって行動すべき場合もあります。NAPACとしては粘り強く話し合いを続けていき、自動車業界全体を見た行動をおこなっていきます」

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 NAPAC会長高瀬嶺生氏のインタビューを通して、愛車に安心してカスタマイズパーツを装着できるのは、NAPACの地道な活動の賜物であることがおわかりいただけたと思う。近日公開のインタビュー後編では、EVを含めたこれからのアフターパーツの開発はどうあるべきなのかなど、さらに踏み込んだお話を伺ったのでお伝えしよう。

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