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【特別インタビュー】柳田春人事業部長に聞く、「ASEA」のなりたちと活動とは? 「パーツが安心・安全・信頼できるものであることをユーザーに伝える」

ASEA事業部長の柳田春人氏は、「Zの柳田」としても著名で、現在は1975年に創業したセントラル20(株式会社セントラル)の代表取締役でもある

安心・安全な自動車用パーツ

「NAPAC(Nippon Auto Parts Aftermarket Committee 一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会)」は、安心・安全な自動車用パーツの普及を実現していくことで、カスタマイズパーツの振興を目指している。

 そんなNAPACには、大きくわけて3つの事業部がある。スポーティングパーツの品質基準を定めている「ASEA(AUTOSPORTS & SPECIAL EQUIPMENT ASSOCIATION)」とアルミホイールの安全性と信頼性を確保する「JAWA(JAPAN LIGHT ALLOY WHEEL ASSOCIATION)」、スポーツマフラーの法令遵守や品質基準を担保する「JASMA(The Japan Automotive Sports Muffler Association)」である。

「ASEA」設立の経緯とは

 今回はその中から、ASEAの活動内容や現状、そして将来的な展望について、NAPAC副会長でASEA事業部長の柳田春人氏にお話を伺った。AMW読者諸氏ならば、「Zの柳田」としてご存知のことと思う。現在は1975年に創業したセントラル20(株式会社セントラル)の代表取締役であり、こちらで製作するフェアレディZ用のパーツは、長年のレースで培った経験をもとにつくられたものだ。

「いまとなっては信じられないことかもしれませんが、昔の国産車はドアミラーやサンルーフさえも、保安基準に通らなかったんです。ところが、輸入車に装備されているドアミラーやサンルーフは公道を走れるし、車検も通る。普通に考えて、これはおかしいですよね。そういう時代でしたから、どれだけきちんとしたスポーツパーツをつくっても、純正部品ではないという1点のみで保安基準にパスしない。これをなんとかしたい、と思っていました。

 そこで1980年ごろに、トムスの舘さんやいろいろなパーツ製作をおこなっていたタカマコンペティションプロダクトの高間さん、オートルックの篁(タカムラ)さんらと話をはじめました。そのころ、日産はまだニスモがなくて大森が、トヨタはTRDがレース用パーツの販売をしていて、そうしたパーツには競技用部品であるというステッカーを貼って、公道では使わないように注意をしていたんです。そういうことを、われわれがつくるパーツでもできないか、各ブランドがそれぞれにするのではなく統一したカタチでやれないか、ということですね。そこからASEA設立の動きが始まりました」

 ASEAが設立されたのは、1981年10月のことである。設立の目的は公道で使えるパーツと競技用パーツの区別を団体としておこなうこと。そして、公道で使えるパーツをASEA認証品として認知してもらうこと、であった。

「公道で使えるパーツとして、当時の運輸省、いまの国土交通省に認証してもらうためには、個々のブランドが動いていたのでは手間が掛かりすぎます。それぞれのブランドで対応するとなると、人手も必要ですしね。そういう意味でも、業界団体をつくるというのは、有効な手段であると考えました。ただ、いろいろなブランドがまとまって要望を出すということの裏側には、安全に関する内部基準をはっきり定めておき、みんながそれに従って製品開発を進めていかなければなりません。各ブランドは、市場においてはライバルなわけですから、内部基準をすり合わせていく必要がありました。そこから生まれてきたのが、ASEA基準です」

 そんなASEAの活動が実を結んだのが1995年(平成7年)の規制緩和だった。それまでは車高に変化があったりパーツ交換をした場合などは「構造等変更検査」を受けなければならなかったのが、軽微な変更に関しては手続きが不要となったのだ。

ユーザーの責任はASEAが受け持つ

ここで、この規制緩和について簡単に説明しておきたい。平成7年11月22日から「使用過程における自動車について、軽微な変更となる自動車部品の取り付けについては、構造等変更に係わる諸手続きを簡素化」することが実施されたのだが、この「軽微な変更」とは、次の2点だ。

(1)自動車部品を装着したときに寸法(長さ、幅及び高さ)及び車両重量が一定範囲内である場合。

(2)指定する自動車部品(指定部品)を溶接またはリベット以外の取り付け方法により装着した場合。

(1)(2)のどちらかに該当した場合、構造等変更に係る諸手続きが不要になるのだが、これらの軽微な変更となる自動車部品を装着した状態においても、道路運送車両の保安基準に適合していなければならず、これは「ユーザーの責任において管理」しなければならないとされている。

「それまで規制緩和を求めて活動をしていたASEAでしたが、規制が緩むということは、自己責任という部分が大きくなる、ということでもあります。国土交通省の文章にもあるように、保安基準に適合しているかどうかは、ユーザーの責任において管理しなければなりません。といっても、ユーザーのかたがご自身でそれぞれのパーツが保安基準に適合しているかどうかを調べるというのは、無理があります。その責任は、指定部品を製造しているメーカーにあります。ASEAでは、そのパーツが安心・安全・信頼できるものであるということがユーザーの方にわかるよう『登録制度』と『認定制度』というふたつの基準制度を設けています」

 ASEA登録制度の対象アイテムは、エンジンパーツでいうとマウントやオイルフィルター、オイルフィラーキャップ、プラグコードやプラグなどが含まれており、エアフィルターやマフラーといった吸排気系パーツも含まれている。

 そのほか、インタークーラーやラジエーター、オイルクーラーなどの冷却系パーツや、クラッチ、L.S.D.といった駆動系パーツ、サスペンションキット、ブレーキパーツ、ボディ補強パーツ、メーター類、シートやステアリング、エアロパーツ、ライト類、レーシングスーツなども含まれている。

 さらに、ASEAが定める試験、評価などをクリアした認定制度の対象アイテムは、駆動系がクラッチディスク/クラッチカバー/フライホイール/多板式・シングル式クラッチキット、サスペンション系が車高調整式ショックアブソーバー/STD形状ショックアブソーバー/直巻きスプリング/STD形状スプリング、ブレーキパーツがブレーキパッド・シュー/ブレーキローター(1P/2P)/ブレーキキャリパー、内装パーツがシート(フルバケット/リクライニング)/シートレール/ステアリング/ステアリングボスとなっている。

 それらの詳しい試験内容やASEAの今後については次回お伝えしよう。

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