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NATSがダットサン「ブルーバード」をホットロッドに! ベースの旧車はなんと教師のクルマでした

エンジン、トランスミッション、サスペンションは分解し修復作業された

毎年話題となるNATSの旧車カスタム

 新時代を切り開くクルマ好きの若者たちが通う千葉県の日本自動車大学校(通称NATS)。そこに通うカスタム科の生徒たちが東京オートサロン2023に向けて作ったクルマが話題だ。

 各班ごとに分かれて手掛ける個性的なマシンの中で、今回紹介するダットサン「ブルーバード(P411型)」は、古いクルマを使ってカスタムをしたいと考えるメンバーたちが集まって作った1台だった。

先生のクルマをカスタムのベースに

 学校から支給される予算は100万円までと決まっている。その範囲内でベース車を探し、カスタムに必要な材料やパーツを揃えなければならない。だが、現在の旧車市場の高騰を考えると、カスタムどころかクルマすら買える状況ではない。また、貴重な旧車を協賛してくれるショップも期待できない。さすがに古いクルマのカスタムは難しいのではという意見も出たそうだ。

 そんな時、学校に放置され、朽ち果てる寸前だった旧車を発見。その持ち主を調べると、なんと先生であることが判明。そこでメンバーたちは「もうコレしかない」と、レストアして蘇らせるので車両を提供してもらいたいと先生に直談判。その熱意に押されて、先生は貴重な411ブルーバードを生徒たちに託したというわけである。ひょっとしたらこの話、その先生にとって渡りに船だったのかもしれない……。

 まず、生徒たちが最初に取り組んだのはボロボロの車両を復元するフルレストア作業だ。シャシーも傷み、下まわりを触るだけでボロボロと剥がれ落ちるほどだったフェンダーをすべて外し、車体をドンガラ状態にしてから使える部品を確認。エンジン、トランスミッション、サスペンションについても詳しくチェックした上で分解し、修復作業を行った。

 そしてようやく、まともに走ることも困難だった411ブルーバードをどうにか修復。ボディこそ傷みが酷かったが、それ以外は何とか使えたのが救いだったそうだ。

カスタムのテーマは「ホットロッド」

 通常であればこれで終了してもおかしくないが、この班は最初にも説明した通り、旧車カスタムカー好きが集まっている。そして、その完成車を披露する場は世界的にも有名な東京オートサロンの会場だ。となればカスタムしないわけにはいかない。ある程度の修復を終えたところで、魅せるクルマとしてカスタムを並行して行うことになった。

 生徒たちが411ブルーバードにふさわしいカスタムとして選んだテーマは、「アメリカンホットロッド」だった。ホットロッドといえばハイドロで飛び跳ねるようなクルマを連想するが、このクルマは最終的に先生が通勤にも使いたいという要望から、実用性を考えてエアサスを採用することに決めた。

 ただ、旧車のサスペンションは構造上、低くするのが困難なので、フロントはショックのマウント位置そのものを変更することで対応。また、リアについてはリーフスプリングのままでは車高を下げることができないので、フロアごと切断し、ホーシングが干渉しないようにフレームそのものに手を加えるCノッチ加工を施す大胆な改造を施している。

 また、アームについては「ジムニーシエラ」の5リンクキットを使って構成。ただ、そのまま5リンクだけだとホーシングのブレが大きくなりすぎるてので、それを抑え込むためにワットリンクも採用している。

 このように、ホットロッドのように極限まで下げる工夫は奥が深い。そして、その答えを見事に導き出し、作ってしまう生徒たちの技術レベルの高さにも驚かされる。

 ルーフやトランクに入れたグラフィックは、シルバーとブルーの濃淡のみで表現。フレークも混ぜて、より輝きを放つように仕上げた。また、ローライダーペイントの3Dパターン+ラップペイント技法が取り入れられている。

 内装についてはボディのグラフィックに合わせてシートカバーを製作。ダッシュボードは傷んだ箇所にパテを入れて修復し、ツルツルにならして綺麗にしてからボディ同色の塗料で仕上げた。

* * *

 411ブルーバードは今から50年以上前のクルマである。ボディデザインを手がけたのは、あの有名デザイナーであるピニンファリーナだ。そんな名車を見事なカスタムカーとして蘇らせた生徒たちのレストア技術とカスタムに賭ける熱量がハンパない1台であった。年々レベルアップしているNATSの生徒たちが来年、どんなカスタムカーを披露してくれるのか今から楽しみである。

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