サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

ルノー新型「カングー」のディーゼルはありか? ガソリンより24万円高いだけの価値を検証しました

先代とは違い、キリッとしたフロントフェイスになった

待望のディーゼルモデルに7速EDCを追加し魅力的に

およそ14年ぶりに新型となった、日本においてもユーテイリティカーファン、アウトドア派、愛犬家などに人気のルノー カングー。完全新設計、動的・質的価値の圧倒的な向上を目指し、開発されたというルノー渾身の新型だ。今回はディーゼルエンジンモデルに試乗した印象をお届けする。

ブラックバンパー×ダブルバックドア仕様は日本向けのモデルだけ

最新のルノーフェイスを採用しながら、どこから見てもカングーと分かるエクステリアには、乗用車版として本国仕様にないブラックバンパーが“日本仕様”のみに与えられ、また、カングーの大きな特徴ともなっていた観音開きのダブルバックドアも併せて継続採用。乗用車系カングーのブラックバンパー×ダブルバックドア仕様は、ズバリ、ルノー・ジャポンがリクエストした日本向けのモデルだけとなるのである。

エクステリアデザインではクロームパーツを使ったフロントグリル、寝かされたAピラー、先代より薄くなり、ボディ下半身の安定感とダイナミックさをアピールする薄型サイドウインドウ。ショルダーを張り出させた、安定感、堅牢さを表現したリヤエンドなどが新型の特徴となる。

グレードは、ボディ同色のバンパーとアウタードアハンドルで洗練さを演出するINTENS(インテンス)、日本仕様だけのブラックバンパー、ブラックアウタードアハンドルのCREATIF(クレアティフ)が基本。ベースグレードのZENは受注生産となる。

快適性は驚くほど向上している

快適性、質感向上もぬかりはない。快適性に大きくかかわる静粛性の向上としては遮音材の追加と全ウインドウガラスの厚み増し、空調の改善として、2ゾーンオートエアコン、後席エアコン吹き出し口(12V電源、USBポート付き)を完備したほか、フロントシートのフォーム変更などが行われている。

また、横基調のすっきりとしたインパネにはTFT7インチメータークラスター、8インチマルチメディアEAZY LINKと呼ばれるセンター配置のディスプレイを用意。インパネ周りのシボ感、ブラッシュアルミ調パネル採用による質感向上は目覚ましすぎると言っていい。

エアコンのダイヤル式スイッチがその上に整然と並ぶハザード、ドライブモードなどのスイッチエリアはほぼルーテシアと同じだった(ルーテシアのエアコンは1ゾーン)。また、カングー初となる電子パーキングブレーキのスイッチも部品はおそらくルーテシアと同じだ。だが、ルーテシアならその下にあるオートブレーキホールドのスイッチは省かれている(つまりオートブレーキホールド機能はない)。日本の交通環境下ではとても有用なのだが……。今後の追加設定に期待である。

室内の広さ、ラゲッジルームの寸法などの新旧比較については、すでに別稿で紹介済みなのでそちらを参照していただくとして、ここでは新型カングーのディーゼルターボモデルの試乗記をお届けしたい。

重厚な乗り味を体感できる新型カングー

気になるパワーユニットは、ガソリンターボモデルの場合、新搭載のルーテシアなどにも使われる新世代ユニット、1.3L 直4 16バルブ直噴ガソリンターボが搭載されるのだが、1.5Lディーゼルターボユニットは先代日本仕様最後のリミテッドとなったディーゼルターボモデル(6速MTのみの組み合わせ)と基本的に同じ。

だが、トルクアップが施され、スペックは先代の116ps、26.5kgmから116ps、27.5kgmとなっている。組み合わされるトランスミッションは、ガソリンターボモデル同様の新搭載7速EDCのみとなる。タイヤもガソリンターボモデルと同じ205/60R16サイズを履くことになった。

試乗車は鮮やかなオレンジ色、ブラウンテレコッタMを纏った、ボディ同色バンパー&アウタードアハンドルのINTENS。走り出せば、あれれ、トルクアップしたというものの、1.5Lディーゼルターボエンジンのトルクはそれほどでもない。

軽快感あるガソリンターボモデルに対して、穏やかなアクセルレスポンス、加速性能となる。ディーゼルターボの図太いトルクは期待してはいけない……。ガソリンターボモデルと比べ、最高出力で15ps劣り、最大トルクにしても+3.0kgmしか変わらず、90kg重く、先代ディーゼルターボモデル比で130kgも重いこともそう感じさせる一因だろうか。だが、言い方を変えれば、カングーにして重厚な乗り味を体感できるのはこちらのほう、とも言えるのだ。

新型は静粛性の向上も図られている。このディーゼルターボモデルも、エンジンフィールのディーゼル感はそれなりにあるものの、先代ディーゼルモデルに比べればキャビンへの透過音は間違いなく減少し、ずっと静かだ。

フラットな走行感覚は快適そのもの

そしてガソリンターボモデルでも見せつけたカーブなどでのリニアな操縦感覚、高い安定感はこのディーゼルターボモデルも同様だ。乗り心地は路面によってゴツゴツ感じることがあるとはいえ、総じてフランスの実用車、カングーらしいマイルドさがしっかり感とともにあり、フラットな走行感覚は快適そのものと言っていい。

このディーゼルターボモデルのINTENSグレードの価格は419万円(不思議なことにブラックバンパーのCREATIFも同価格)。ガソリンターボモデルのINTENSが395万円だから、パワーユニットの違いで24万円高となる。

WLTCモード燃費はディーゼルターボモデルが17.3km/L、ガソリンターボモデルは15.3km/Lと、約12%の違いとなる。ガソリンターボの鼻先の軽さによる回頭性の良さ、ルーテシアに準じるエンジンの気持ち良さを取るか、長距離走行で生きる経済性を取るかの選択になるが、そのあたりはクルマの使い方、クルマに何を望むかによって決めればいいと思う。

なお、ガソリンターボモデル同様に、新型のディーゼルターボモデルもカングー初となる衝突軽減ブレーキをはじめ、先進運転支援機能としてブラインドスポットモニター、レーンキープ、ACCなどをフル採用。エマージェンシーレーンキープアシストとブラインドスポットインターベンションは、ルノーとして初搭載となる。

* * *

これまで、カングーは欲しいけれど、ディーゼルターボモデルだとMTのみの組み合わせで、自動ブレーキや先進運転支援機能が付いていないがゆえに購入を諦めていた人も、全車2ペダルの7速EDCとの組み合わせになったこともあって、これなら安心、万全ではないだろうか。

モバイルバージョンを終了