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広がりつつある「パラモトライダー」の輪。障害をもっていてもオートバイに乗れる体験走行会をレポートします

新たにサポート企業として加わったKTM JAPANからはさっそく1290スーパーデュークが提供された

新たに2名のパラモトライダーが誕生

2023年3月14日(火)、茨城県にある筑波サーキット内オートレース選手養成所で一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)が主催するパラモトライダー体験走行会が開催された。この走行会は、事故や病気などで身体に障がいを抱えて、オートバイを降りなければならなくなった人やオートバイに乗ったことのない人を対象にオートバイに乗ってもらい、その楽しさを認識してもらおうという企画である。

数多くの感動と笑顔を届けてきたパラモトライダー体験走行会

主催するSSPは、伝説のレーサー青木三兄弟の末弟で、WGP GP125クラスで2度のチャンピオンを獲得し、現在はオートレーサーとして活躍している青木治親選手が立ち上げた団体だ。実兄の青木拓磨選手はGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされている。

その拓磨選手を再びバイクに乗せたいと、ハンドシフトユニットをバイクに取り付け、周りが支えることでバイクに乗れるよう企画した「Takuma Ride Again」が無事に2019年に成功。この感動をもっと多くの人に、ということで立ち上げられた。

そのSSPが2020年から、サーキットや自動車教習所など、バイクを練習することができる国内各所で月に一回程度の頻度で開催しているのがこのパラモトライダー体験走行会である。脊椎損傷などによる半身不随の障がい者から始まったこの企画は徐々に広がりを見せ、今回は6名の参加者のうち、半分は視覚障がい者が参加。これまで多くのボランティアスタッフとともに多くのパラモトライダーを輩出し、数多くの感動と笑顔を届けてきた。

安全にしっかり配慮しながら運営している

体験走行会は、事前に身体の様子を確認したうえで、当日もSSP専属の理学療法士である時吉直祐氏が参加者の問診を行って参加の有無を決定する。その後それぞれの障がいについてボランティアスタッフに伝え、これを慎重にサポートをしていくことになる。

車輪が2つしかないバイクは走り出してしまえば問題ないが、低速時に不安定な状態になる。そのため、走り出しと停車時にはボランティアスタッフがバイクに駆け寄り車両を抑えて、パラモトライダーの走行をアシストする。

パラモトライダーのサポートというと聞こえはよいが、実際は極めて原始的なやり方。サイドスタンドでバイクが倒れないように、ボランティアスタッフがバイクを支える。これがSSPの言われでもある。ちなみにSSPではヘルメットやグローブ、ブーツ、革ツナギまですべてを貸し出し、安全にもしっかり配慮している。

「もう二度とバイクに乗れない」と諦めていたような参加者に再び感動を

参加者はまずそれぞれのライディングレベルの確認をしながらステップアップをして行くことになる。事故前は普通に乗れていたバイクも、脊椎損傷を負ってしまったことでまっすぐに走らせられないこともある。まずはアウトリガー付きの小型バイクでまっすぐ走れるかのチェックを行い、そこで練習を重ね、バイクに乗れると判断ができた場合、大型車両で先導付きの走行へ移行していく。

走行会では、広場での直線走行だけでも多くの参加者が涙する。「もう二度とバイクに乗れない」と諦めていたような参加者にとって、自らのアクセルとブレーキ操作で風を切って走ることができるという行為だけで感極まるのである。

視覚障がいを持った2名が参加

また、今回の視覚障がいを持った2名が初めてこれに参加した。ともに後天的な視覚障がいとなる。ヘルメットに組み込まれたインカムを使用し、SSPのスタッフの指示を受けながら走行をするわけだが、まっすぐ走らせることの難しさを本人はもちろん、周囲のボランティアスタッフも実感した。

それでも何度も走行をしているうちに走行も様になっていく。高校卒業から2年ほどバイクに乗っていて事故により失明した山仲さんは「10代の頃のことがよみがえりました」と走行を楽しんだ。

また、3歳で視覚障がいが始まり高校生の頃には完全に失明していた小林さんは、機械いじりが好きで、クラッチなどの機構にも興味を持ちつつバイクを体験したがクラッチよりもブレーキ操作の繊細さに苦慮。

「次回は緊張せずにまっすぐ走ることをクリアしたい」と早くも次の走行の機会を待ち望んでいる様子であった。

SSPのパラモトライダー体験走行会は引き続き、障がい者もバイクを楽しむ機会を設けていく。

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