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なぜ米国の「ルート66」にクルマ&バイク好きは憧れる? 5往復した編集者が「旧き佳きアメリカ」の魅力を紹介します【ルート66旅_01】

カリフォルニア州アンボイ。映画やMVのロケ地として使われる、ロイズ・モーテル・アンド・カフェ。2019年にはネオンも再点灯

世界中からクルマ&バイク好きが集まるアメリカの母なる道「ルート66」

広大なアメリカを東から西へと結ぶ、2347マイル(3755km)に及ぶ大動脈。クルマやバイクが好きな人なら年齢に関係なく、一度は「ルート66」の名前を耳にしたことがあるだろう。古くは作家ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』やジャズのヒット・ナンバーであるその名も『ルート66』で、近年なら2006年に公開され日本でも大ヒットした映画『カーズ』の舞台として記憶に新しい。アメリカのみならず世界でも高い知名度を誇るルート66とは、はたしてどんな道であり歴史においていかなる役割を担ったのだろうか。

1冊の本と出会い「いつか自分でルート66を走る!」と決意

1974年に生まれた私が初めてルート66の存在を知ったのは高校生のときで、アメリカ雑貨に印刷されたマークだったと記憶している。当時は数字の由来どころか道路を示していることさえ知らず、なんとなくアメリカっぽくてカッコいい、程度の認識だった。

それから映画や音楽に登場するルート66の文字が気に留まるようになり、東京の出版社で勤務していたころ飲み会の前に何となく立ち寄った書店で、大塚浩司氏の『オールドハイウェイ ルート66の旅』(ほおずき書籍/2001年)と出会う。表紙には間違えようのないマークが赤いクラシックカーと並んで描かれ、迷わず手に取り読み耽ったのが、実際にルート66を走るきっかけだった。

そこでアメリカ西部の発展に寄与した道路であることや、インターステート(州間高速道路)が整備され廃線になったこと、しかし各地で復活を求める運動が起き、改めて地図に記されたことなど、ルート66にまつわるさまざまな知識を得ると同時に大きな憧れを抱く。心のなかで「いつか絶対に自分で走る!」と決意したものの、月刊誌の編集部員という生活では時間が取れるはずもない。さらに一度も海外へ行ったことがなく英語が大の苦手だったせいで、いつしか「夢は夢のままで終わるのか」と諦めかけていた。

これまでルート66を端から端まで5往復、地球を1周した計算

転機が訪れたのはフリーランスとして独立し、1年目に取材でロサンゼルスを訪れたときだ。アメリカといえば銃社会で犯罪が多発というイメージしかなかったが、実際は思ったほど怖くないしカタコトの英語でもなんとかなる。初めて泊まった宿もほぼルート66沿いといって差し支えない立地で、帰国するころには「ひとりで旅しても大丈夫だ」と自信をつけていた。

以降は何度か部分的にルート66を走り、初めて全線をイッキに走破したのは忘れもしない2011年。そのときに出会った人々や出来事がきっかけとなり、ルート66をはじめアメリカの旅がライフワークになる。コロナ禍のせいで2019年12月を最後に途絶えてはいるものの、ルート66を端から端まで往復したのは5回に及ぶ。大塚浩司氏の別著『ルート66、66のストーリー』(ほおずき書籍/2008年)に、「5往復すれば地球を1周した計算になる」との一節があり、ひとまずはそれを目標にして走ったというのが正直なところだ。

シカゴからサンタモニカまで8つの州を通る約4000kmの道

話が長くなったがルート66の基本情報を紹介したい。アメリカで最初に作られた国道のひとつとして、ルート66の称号が与えられたのは1926年。東の起点はイリノイ州シカゴで西の起点はカリフォルニア州サンタモニカ。何度かルート変更が実施されるも、物資や人の移動を担うという役割は同じで、インターステートの完成により1985年に地図の上から姿を消してしまう。ところが廃線後すぐに一部の州でルート66を復活させるための運動が起き、その熱気がすべての沿線に波及。「ヒストリック・ルート66」として再び地図へ記載され、インターステートと同化した区間を除きほぼ昔のルートを辿ることができる。

なおルート66が通過する州は東から順に、イリノイ/ミズーリ/カンザス/オクラホマ/テキサス/ニューメキシコ/アリゾナ/カリフォルニアの8つで、冒頭で書いたとおり総延長は2347マイル(3755km)に達する。アメリカでは「マザー・ロード」や「メイン・ストリート・オブ・アメリカ」の名でも愛され、それぞれの州でコンディションを維持するための活動が盛んに行われているばかりか、国内はもとより日本やヨーロッパからルート66を走るためにやって来る観光客も多い。

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いつか自らステアリングを握って全線を走破してみたい人、クルマやバイクに代表されるアメリカのカルチャーが好きな人、旧き佳きアメリカの風景にノスタルジーを刺激される人。少しでも興味を持ってくれた方々により一層ルート66や、アメリカの魅力を文章と写真で伝えられれば幸いだ。

それでは1回目のラストを1946年にボビー・トゥループが作り、ナット・キング・コールら大勢のミュージシャンが歌った、名曲『ルート66』の有名なフレーズで締めよう。Get your kicks on Route 66!

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